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極右政治家・ボルソナロ氏の大統領就任で起こる「ブラジルの危機」

11/19(月) 7:03配信

FRIDAY

「(反対勢力の)労働党の支持者は殺そう」
「先住民は金がかかりすぎる。彼らに与える土地は1平方mもない」
「犯罪者への拷問に賛成だ。むしろ3万人くらいは殺しておかないといけない」
「産休中の女性は年の半分しか働かない」
「自分の息子が同性愛者だったら、息子には死んでもらうしかない」

 こうした人種差別、女性蔑視、同性愛嫌悪の発言を繰り返し、「南米のトランプ」と呼ばれる極右思想のジャイル・ボルソナロ氏(63)がブラジル大統領に当選した。

 軍隊出身のボルソナロ氏は、国内の犯罪組織やギャングを、国力を総動員して一掃すると明言し、対立候補に10ポイント差をつける高い支持を受けた。背景には、年間約6万4000人、一日あたり175人が殺害されるというブラジルの治安の悪さがある。

「中南米は麻薬カルテルが裏社会を牛耳っており、ブラジルも犯罪組織がはびこっています。常に組織同士の抗争があり、貧困街はもちろん、街中でも殺人事件が連日起きている。そんな麻薬カルテルを、軍の力を使って抑え込もうとするのでしょうが、ギャングの組織力はあなどれません。彼らがテロ組織と化し、街中でテロ行為を行う危険性がある。犯罪を減らすつもりが逆に内戦状態に陥る可能性があります」(国際政治学者の六辻彰二氏)

 あまりにも犯罪が横行する異常事態に、ボルソナロ大統領は、死刑制度を復活させ、警官には現場で射殺することを許可し、犯罪者を国から一人残らず消し去ると豪語している。極端とも言える強硬政策に、麻薬カルテルは黙っていないだろう。大規模な内戦が起きる危険性は十分考えられる。

 さらに国際ジャーナリストの山田敏弘氏は、ボルソナロ大統領が軍人出身ということもあり、強権的な独裁体制を敷いていく可能性を危惧する。

「ボルソナロ氏は軍人時代から、給与の低さを理由に兵舎を爆破するなど信じられないような過激な行動をする人物でした。軍には11年勤め、大尉で退役するまでの間に、軍内ではカリスマ的な存在となって一目置かれていた。今回の内閣でも20人近い元軍人を登用します。軍事政権時代は良かった、などの発言をしていることから、軍事力で国を支配していこうとしているのは明らかです」

 ボルソナロ氏は、選挙活動中の9月、遊説中に何者かによって腹部を刃物で刺され命を落としかけた。今後、仕返しとばかりに犯罪の取り締まりを強化すると見られており、混乱が起きるのは必至だ。

 そしてボルソナロ氏が推し進める自国中心主義の政策は、国内だけでなく、周辺にも悪影響を与えようとしている。

 近年ハイパーインフレに見舞われ、経済危機に陥った隣国ベネズエラから、6万人以上がブラジルへと逃亡。難民が国境に大挙して押し寄せているが、ボルソナロ氏は武力行使も辞さない構えだ。

「前大統領のテメル氏も国境付近で事件が起きるので、やむを得ず軍を派遣し制圧していた。新大統領はより多くの兵隊を動員するはず。このままではベネズエラとの国境付近で大規模な衝突が起きる可能性があります」(前出・山田氏)

 次第に国境紛争に発展し、戦争にもつながりかねない。アメリカのトランプ、フィリピンのドゥテルテ、そしてボルソナロ――。極右が次々と台頭し、再び戦争の世紀となってしまうのか。その流れにはブレーキをかけなければならない。

 PHOTO:アフロ

最終更新:11/19(月) 7:03
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