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三井生命から「三井」剥奪!? 「三井商号商標保全会」って

11/20(火) 16:58配信

デイリー新潮

 東京・日本橋は、三越や三井本館など、三井グループのビルがたち並ぶ街である。ところが、とある三井系の「組織」は、電話帳にも載っていなければ看板も出ていない。三井グループの広報を担当する「三井広報委員会」に教えてもらった電話番号にかけてみると、ようやく担当者が出た。

「我々のことは一般には公表していません。ですからスタッフが何人いるとか、どこのビルの何階にあるとも教えられません。会社組織ではないし、社団法人や財団法人でもありません」

 その名前は「三井商号商標保全会」(以下、保全会)という。三井生命に対して「三井」の社名を外すようにプレッシャーをかけたと言われる組織だ。

 三井生命が、社名変更を検討していると報じられたのは11月8日のこと。名前からも分かるように、同社は三井財閥がルーツで三井グループの社長・会長で構成される「二木会」(現在25社)のメンバーでもあった。が、異変が起きたのは3年前のこと。

 経済部の記者が解説する。

「三井生命は生保業界では中クラスの規模で資金力も十分ではありませんでした。それが低金利で収益が悪化し、リーマンショックが追い打ちをかけたことで経営難に陥っていたのです。そこで、三井住友銀行が支援に入り、住友生命などから人員が送り込まれたのですが、結局、三井生命が選んだ“嫁ぎ先”は、最大手の日本生命だったのです」

 2015年12月、日本生命は三井生命株92.16%を取得し同社を買収。翌年、三井生命は「二木会」も退会するのだが、それと前後して、「保全会」から求められていたのが社名と商標の返上だったという。

三井不動産の中に

 それにしても、戦前の財閥が突然よみがえってきたような話である。

「保全会のルーツをたどると、戦後の財閥解体にまで遡るのです」

 とは、財閥研究者で『三井グループの研究』(洋泉社)の著者・菊地浩之氏だ。

「財閥解体の際、GHQは政令で『三井』の商号使用を禁止します。これに対して江戸英雄氏(三井不動産元会長)ら幹部は、『月曜会』という集まりを作って、吉田茂首相などに政令解除を働きかけた。商号の使用料をグループ会社から徴収し、困窮する三井家の生活費にあてる目的もありました」

 政令が解除されると、三井グループの再結集を目指す江戸氏は「二木会」を結成。その下に商号・商標を管理する「保全会」が作られる。1956年9月のことだ。

「江戸氏が“三井”の復活に尽力したという経緯から、保全会の事務局は三井不動産の中に置かれ、現在まで引き継がれています。もっとも、いつも活動しているわけではなく、実態は三井グループ企業の総務などを担当する幹部の集まりと見て良いでしょう」(同)

 だが、ひとたび二木会以外の会社が、「三井」を名乗ったり商標を使ったりすると、保全会は猛然と阻止に動く。実際、3年前に三井グループとは無関係の「三井建物」という会社が商標登録しようとした際には特許庁の審判に持ち込んで撤回させたこともあった(請求人は三井不動産)。グループの一員でなくなった三井生命もまた、三井を名乗ることはまかりならぬというわけなのだ。

 そこで、保全会に聞くと、

「たしかに三井生命さんとは、何度かお話はしましたが、社名変更をお決めになるのは、先方の会社です」(担当者)

 一方、三井生命は、

「三井グループ内の話し合いであり、当社からの回答は控えさせていただきます」(調査広報グループ)

 新社名は年内にも決められるという。

「週刊新潮」2018年11月29日号 掲載

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最終更新:11/20(火) 16:58
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