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それでも「改憲」したいですか?(中)(石田純一)

11/21(水) 6:15配信

デイリー新潮

石田純一の「これだけ言わせて!」 第12回

 安倍晋三総理の悲願である憲法改正。しかし、はたして、いまの政治家たちにこの憲法を改正させていいものだろうか。彼らにその能力があるのだろうか。前回、そんな疑問を投げかけた。

 憲法改正というと、日本国憲法の第9条をどうするか、ということにばかり焦点が当たりがちである。しかし、自民党の改憲案をひもとくと、人類が長い時間をかけ、数々の犠牲のうえにようやく獲得した自由や平等を制限し、人権よりも国や社会、公益や秩序を上位に位置づけようという姿勢が強く感じられる。あまりに後退してしまって、立憲主義の近代国家とは、もはや価値観を共有していない――。そんなことを前回、第13条の改憲案をもとに書いた。

 少しおさらいをしよう、日本国憲法第13条では、〈自由及び幸福追求に対する国民の権利〉は〈公共の福祉に反しない限り〉尊重される、とされるのに対し、自民党案では〈公益及び公の秩序に反しない限り〉尊重される、と改められている。つまり、相手にケガを負わせるような“人権の衝突”でもないかぎり尊重されたものが、時の権力が「秩序を乱しているぞ」と判断すれば、いつでも制限できるように変えようというのだ。

 続いて、第21条を例に挙げたい。現行の憲法では、

〈集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する〉

 と書かれている。自民党の改憲案も、この文言は同じなのだが、第2項として次の文が加えられているのだ。

〈前項の規定にかかわらず、 公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、 並びにそれを目的として結社をすることは、認められない〉

 これは、大日本帝国憲法第29条の、
〈日本臣民ハ法律ノ範圍内ニ於テ言論著作印行集會及結社ノ自由ヲ有ス〉

 という条文とそっくりではないか。もうおわかりだと思う、政府が「公益を損なう」と断じたら最後、国民の声を上げる権利も、自由に意見を交わす権利も、新聞や雑誌、テレビなどによる時の政府の批判も、みな制限されてしまうということだ。まさに戦前か、距離的にあまり遠くないどこぞの国のようになってしまうということだ。

 だが、それ以上に衝撃的で、あまりに驚愕すべきは、第97条の、

〈この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて、これらの権利は、過去幾多の試錬に堪へ、現在及び将来の国民に対し、侵すことのできない永久の権利として信託されたものである〉

 という条文が、まるごと削られてしまっていることである。ここに書かれた権利は、アメリカ独立戦争やフランス革命などを含め、人類が長い年月をかけて自由獲得のために努力してきた成果が結実したものだ。まさに人類の壮大な絵巻の一面を、いとも簡単に捨て去ってしまうとは、怒りも悲しみも通り越えて、声も出ない。(次回に続く)

石田純一(いしだ・じゅんいち)
1954年生まれ。東京都出身。ドラマ・バラエティを中心に幅広く活動中。妻でプロゴルファーの東尾理子さんとの間には、12年に誕生した理汰郎くんと2人の女児がいる。元プロ野球選手の東尾修さんは義父にあたる。

2018年11月21日 掲載

新潮社

最終更新:11/21(水) 6:15
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