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「何十年とミシャ監督がいるわけじゃない」。札幌・野々村社長が語る次世代へのクラブ運営【インタビュー】

2018/12/5(水) 10:10配信

フットボールチャンネル

 ミハイロ・ペドロヴィッチ監督を招聘して4位でシーズンを終えた北海道コンサドーレ札幌。11/6 発売の『フットボール批評issue22』では世界基準や欧州基準で物事を考える視野に注目し、現状の流れを踏まえ、札幌・野々村芳和社長に10年後のJリーグと札幌をテーマに話を聞いた。一部を抜粋して公開する。(取材・文:植田路生)

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●魅力的なリーグになるために目指すべき次のフェーズとは?

── Jリーグの次のフェーズとしては、ピッチ内だけじゃなくピッチ外のスタッフですね。

「そう。クラブ経営者含めて能力のあるマネジメント系人材をどう活かしていくかというフェーズに日本はまだない。ヨーロッパだとやり手のディレクターが億単位の金でクラブを移る。日本でもGMのような責任ある役職には数千万レベルでの高額年俸を提示できるようにならないと。そこはかなり重要」

── 今よりもピッチ内外のレベルを高めていかないと、才能ある選手の海外移籍はやむを得ないということでしょうか?

「Jリーグがヨーロッパと並ぶレベルになることを目指すにしても、その移行期間はやむを得ない。レベルの高いところに選手が移るのは当たり前だから。当面目指すべきは、例えば20歳でヨーロッパの5大リーグではないリーグに出て行くような選手を、22歳ぐらいまでJリーグに留める。選手としても伸びるし、収入もいいと思わせる。Jリーグは次の段階としてそのレベルにしっかりならないといけない。

 最終的にヨーロッパに追いつくには20年、30年かかるかもしれない。でも、それを5年、10年でやる人が出てきてもいいと思う。個人的にはそれぐらいのつもりでやらないとダメかなと。これは、クラブやリーグ全体の売上など経済的な話。魅力的なリーグだから放映権が多方面に高く売れて、各クラブにそれが還元されて、クオリティの高い選手が来る、という循環」

●「モウリーニョ的にやれば勝てる。それもありだけど…」

── ピッチ内ではどうでしょう? レベルは上がっているとは思いますが、課題があるとすれば。

「もっと魅力を高めていってほしいとは思う。国内で勝つことを考えたら、それなりに戦力があるチームが、モウリーニョ的にやれば勝てる。戦力がなくても、モウリーニョっぽくやっていけばなんとか残留できる可能性もある。それはそれで、サッカーの世界だからありなんだけど……。もっと楽しませてやろう。これしか戦力ないけど、俺たちはこういう風に、攻撃的にクリエイティブにやるんだ、というチームが少ないと思う」

── お金のない地方クラブが守りを固めて勝ち点を死守するのは悪いことではないと思いますが。

「もちろん。それは1つの正義だし、絶対に否定しない。ただ、サッカーが日本人だけ、国内だけのスポーツならいいよ。現実問題そうじゃない。ワールドカップを含めて世界と戦わないといけない。国際大会で、あんなにでかくて速い奴らにどう対抗するか。組織と守備力だけで戦って、なんとかなると思わない。

 だから、そこそこお金のあるクラブが、もうちょっとそういうトライをした方がいいと思う。川崎フロンターレと名古屋グランパスはチャレンジしていると思うけれど、守りを固める下位チームのサッカーをお金のあるクラブがもっと攻撃的なサッカーで撃破するようにならないと」

── 目の前の戦いだけに固執していてはレベルアップは難しいと?

「難しい問題。落ちないようにする、リーグ優勝して15億円を獲りにいく。国内での競争やビジネスを考えたときに、これは無視できない。ただ、発想の転換がないと早い段階ではヨーロッパに追いつけない。10年後にヨーロッパの選手と同じフィジカルに日本人がなる?」

── 難しいですね。

「だったら違うトライをしない限り追いつかないわけで。例えば、パスして走って、みたいな、ヨーロッパのチームができないようなスピーディーなサッカーが日本人にはできるかもしれない。そういうトライを多くのクラブがするとか」

●クラブのDNAや哲学の重要性

── それは指導者含めて環境面でかなり変わらないといけないですね。

「その通り。Jリーグでよく見られるのは、センターバックの能力のなさを中盤やフォワードの守備力によって補うサッカー。コンサドーレが対戦した中でも、前の人の力を借りなくて自分の能力だけで守り切れるようなセンターバックは少ないし、そういう選手が出てくるような環境には今ない。1人の選手の能力が上がる環境は、現状のままだとかなり難しい」

── そういう環境整備という面でもミシャ監督の招聘は効果があると思います。

「ミシャ監督で今よりずっと順位が下でもまったく問題ないと思っている。ああいうサッカーをトライした方がいいと思っていた」

── クラブとしてのDNAや哲学は残りますね。

「それは至上命令。残していかなきゃいけない。ああいうサッカーを続けていけるような発想の指導者を、どんどん育てていくようにしないと成長していけない」

── 次世代へ向かって車輪を回転させていかないといけないですよね。

「そうそう。何十年とミシャ監督がいるわけじゃない。サイクルをどんどん回していい循環を生み出していく。そうやってスピードアップしないとヨーロッパには追いつけない」

▽野々村芳和(ののむら・よしかづ)

1972年生まれ。株式会社コンサドーレ(北海道コンサドーレ札幌の運営会社)代表取締役社長。慶應義塾大学卒業後の1995年にジェフユナイテッド市原でプロデビュー、2000年にコンサドーレ札幌へ移籍。TV番組「Jリーグラボ」などでの歯に衣着せぬ発言はサッカーファンの間でも話題。

(取材・文:植田路生)

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