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インドネシア、独立目指す武装集団が労働者19人殺害 国軍と銃撃戦も

12/6(木) 19:20配信

ニューズウィーク日本版

大統領選を控えて、政治の動きが目立つインドネシア。パプア州では独立派によるテロが続いている

インドネシア最東端、ニューギニア島の西半分を占めるインドネシア領パプア州の山間部で12月2日、橋梁の建設工事にたずさわっていた労働者が正体不明の武装集団に襲撃され、労働者19人が殺害される事件が起きた。

[動画]武装集団によるテロ現場

事態を重視したジョコ・ウィドド大統領は国軍・警察に治安回復を指示するとともに国軍部隊を現地に急派、ハディ国軍司令官も12月5日に現地に到着するなど治安回復と武装集団の捜査を本格化している。

事件を起こした武装集団についてインドネシアの報道機関はパプア州の独立を求める武装組織「自由パプア(OPM)」の犯行であるとの見方を強めていたが、12月6日に「西パプア解放軍」を名乗るグループが犯行声明を出した。OPMとこのグループの関係は現時点では明らかになっていない。

政府は襲撃事件を受けて犯行は「武装犯罪組織」によって行われ、使用された武器は国軍から盗まれたものとして「独立運動」や「独立運動組織」などという言葉を意識的に避けており、あくまで犯罪として対処する姿勢を強調していた。

12月2日、パプア州ンドゥガ県イギ郡にあるイギ川、アウラク川で行われていたパプア縦断道路の橋梁工事現場に突然武装集団が現れ、そこで働く労働者を差別発砲し、スラウェシ島マカッサル出身の労働者など19人が殺害された。負傷者や死んだふりをして難を逃れた生存者も数人いるという。

さらに12月3日午前には襲撃があった橋梁工事現場から約10キロ離れた国軍の警備所付近でやはり正体不明の武装集団による発砲があり、銃撃戦となった。この襲撃で兵士1人が死亡、1人が負傷したという。

武装集団はその後山間部などに逃走しており、国軍と警察は部隊を現地に急派して、行方を捜索するとともに付近の警戒を強化しているが、これまでのところ武装集団の発見、確保には至っていない。

■治安当局と政府の立場の違いは......

パプア州と西パプア州を含むパプア地方は旧オランダ植民地で1963年12月に独立を宣言するものの、インドネシア軍が侵攻。1969年に住民投票の結果でインドネシア併合が決まった。パプア独立の象徴である「モーニングスター旗」は掲揚はおろか所持することも許されていない。

しかしこの住民投票が軍の脅迫下で行われたもので住民の真意を反映していないなどとして、インドネシアからの分離独立を求める運動が現在も続いている。

スハルト長期独裁政権が崩壊する1998年までパプア地方は最西端のアチェ州と並んで独立運動が激しく、国軍が両州を「軍事作戦地域(DOM)」に指定していた。DOMでは国軍や警察が超法規的措置による治安維持を実施。住民や活動家の殺害など数々の人権侵害事件が起きたが、当時は海外のマスコミは両州の自由な取材は厳しく制限されていた。

自由パプア(OPM)はいくつかのグループの集合組織と見られ、広大な山間部のパプア地方の各地で多数の傘下組織が独立武装闘争を続けているといわれる。武装は小銃などの小火器が中心だが、槍や弓矢などの伝統的武器を使用するケースも多い。今回の犯行グループもこうした複数あるOPM参加の組織の可能性もあるとみて、当局は捜査を行っている。

治安当局は襲撃事件の背後にOPMがいるとの見方を強める一方で、政府や軍・警察さらに報道機関は極力「OPM」という言葉を使わず「武装した犯罪集団」と呼んでいた。

これに対し犯行声明を出した「西パプア解放軍」は「我々は犯罪集団ではなく、パプア独立を目指す自由戦士である」とし、さらに殺害した橋梁労働者については「彼らは民間の労働者ではなく、軍の工兵である」と主張しているという。

治安当局もこうした犯行声明を受けて襲撃がエディアヌス・コゴヤという人物が率いた約40人のグループであるとの見方を強めて、身柄確保に全力を尽くしている。

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