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【奈良クラブ特集#5】アイディアと工夫で、僕らは強くなる。異色のCDが目指す新しいクラブ作り【幅允孝(奈良クラブ クリエイティブディレクター)インタビュー】

12/7(金) 12:46配信

footballista

新生・奈良クラブが目指す「サッカー」と「学び」の融合 Chapter 5】

サッカー(現場)とマネジメント(経営)を縦軸、そしてITとデザイン/クリエイティブを横軸に据えた奈良クラブの新体制において、その一翼を担うクリエイティブディレクター(CD)に就任したのがBACH代表の幅允孝だ。本と人の出会いをプロデュースするブックディレクターとして国内外で活躍中の氏が、なぜ奈良クラブに辿り着いたのか。サッカー×クリエイティブの領域でどのような設計・発信をしていくのか。「N」ロゴの制作に始まる、まさに現在進行中の構想を聞いた。


インタビュー・文 赤荻 悠(footballista編集部)

■はじまりは、公式ブックディレクター?

―― 公共図書館や企業、病院のライブラリー制作を中心に様々な分野で活躍中の幅さんが、新たに参戦したのはサッカー界。サッカー本大賞の選考委員や、footballistaで“アーセナル担当”を務めていただいているとはいえ、今回の就任は驚きでした。奈良クラブとは2017年8月から、まず「公式ブックディレクター」という聞きなれない役職で関わられていたのですよね。

「公式ブックディレクター就任は、3年ほど前に知り合った矢部次郎さん(奈良クラブ副社長)にお声がけいただきまして。矢部さんはすごく本もお読みになる方。そもそも僕は、愛知の出身でグランパスからベンゲル監督の繋がりでアーセナルのことがどうにも好きになってしまったアーセナル・アディクトな人間で……というのは今回割愛しますが(笑)、矢部さんは現役時代、名古屋でベンゲル監督の下プレーしていたわけじゃないですか。実際にコーチングを受けた方と会話できるなんて珍しいので、東京都内で食事をしたり奈良クラブの試合を観戦した際にはあれやこれや話して。その縁で昨年、新しくできたクラブオフィス内に選手のためのライブラリーを作る依頼をいただきました」


―― では、中川政七社長とも矢部さんとの繋がりから?

「それはまた別軸です。中川さんとは、本×工芸という形でちょくちょくお仕事をご一緒していました。中川政七商店のメディアサイト『さんち~工芸と探訪~』でも、中川さんと男2人旅で、日本各地を周って工芸品や本や食べ物を紹介する旅日記みたいな連載をやらせてもらったり。でも仲良くなったのは、それこそサッカーがきっかけだったんです。本業は別ですが、中川さんが元ゴールキーパーで小学生の時に奈良代表としてよみうりランドまで行った! みたいな話から(笑)、いつもサッカー談義で異様に盛り上がるわけで。

 ただ、今回のお話は急だったんです。経営者である中川さんが中川政七商店の(社長を退いて)会長になる(2018年2月)と聞いた時、『次は何やるのかな』と思っていたら、電話がかかってきて『奈良クラブの社長になります』って。『いいですね!』とただ聞いていたんですけど、突然『クリエイティブディレクターやりませんか?』と誘われまして、最初はびっくりでしたよね」


―― クリエイティブディレクターとしての仕事については、のちほど詳しくお聞きしようと思います。公式ブックディレクターとしてどんな活動をされていたか、もう少し教えてもらえますか。

「他のライブラリー制作も同様なのですが、実際に本を使う人、つまり選手たちにインタビューをしながら作っていきました。自分の好きな本だけを並べてもお節介にしかならないですから。奈良クラブの場合は、選手たちに何十冊も本を見せながら話を聞くことから始まりました。人気があったのは一人暮らしの選手も多い中でアスリート用の料理レシピ本や、体をどう作るかというコンディショニング本だったり、意外にサッカーよりも異分野の成功譚が読まれたり、同世代選手のサクセスストーリーはちょっと嫉妬もあるのか、敬遠されてましたね。ちなみに、一番ウケが良かったのはセカンドキャリアに関する本だったりして……」


―― セカンドキャリアですか……少し寂しい気もしますが、それが現実なのですね。

「中には『3分以上は文字を読めません』という選手もいるわけで、なかなか浸透させるのは難しいなというのが実感でした。しかも、本のあるクラブハウスと練習場には距離があり、矢部さんとも、もう少し機能させるようにしたいですねと話していたところだったんです」


―― ライブラリー作りを通じて、サッカークラブに携わるということに、やりがいだったり湧き上がる思いはあったのですか?

「僕はこれまで人が図書館や書店に来ないから、人がいる場所に本を持っていく仕事をしてきました。それは、届かないものを届ける、コミュニケーションの仕事ともいえます。公共図書館や企業図書館の仕事はご想像がつくと思うんですけど、最近では病院や特別養護老人ホーム、学校や児童保育施設……病院でも視覚障がい者用の病院があれば、心療内科で認知症患者のためにライブラリーを作ったり。知らない人と出会い、本なんか必要ないみたいな場所での思いもよらない仕事も増えていて、実はそっちの方がやりがいを感じているんです。歳とともに増すMっ気でしょうか(笑)。

 奈良クラブに関わり始めた時も、これは相当アウェイ感があるぞ(笑)というのが率直な感想でしたよね。ただ、読書というのは共有を前提にしたSNSと違う、書き手と読み手が1 on 1で向き合う精神の受け渡しだから、今回奈良クラブでやろうとしている『学びの型』作りには役立てる部分もあると思っているんです」

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最終更新:12/7(金) 12:46
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