ここから本文です

原因は中国の「癇癪外交」?APEC首脳宣言は合意に至らず

12/7(金) 12:13配信

Wedge

 11月17日-18日、パプア・ニューギニアのポートモレスビーで、第26回APEC 首脳会議が開催された。APEC首脳宣言は、合意に至らずに発出されなかったが、代わりに「議長声明」が発表された。それを読むと、どうして合意できなかったか推測できる。以下、その部分を紹介する。

 「議長声明」の冒頭は、次のように始まる。

 「1. 議長声明は,ポートモレスビーで開催された APEC 首脳会議における議論の中で示された,すべての APEC エコノミーの太宗の(prevailing)見解に関する議長の判断を反映したものである。9,16及び17の段落については,少数のエコノミーが,別の,あるいは追加的な見解を有していたが,ほとんどのエコノミーが,以下のテキストに合意した。」

 すなわち、「9,16及び17の段落」で書かれた内容について、合意がなされなかったということである。では、それらの段落には、何が書かれているのか。

 まず、9段落を見てみよう。その内容は、次の通りである。

 「9. ボゴール目標を達成するためには、我々が取組を急ぐことが必須である。我々は、エコノミーに対し、2020 年の期限までに、各々の個別行動計画の下で最大限の進展を図るよう求める。さらに我々は、エコノミーが、地域における貿易を、自由、公正かつ開かれた形で、また、無差別で相互に有利になるような貿易・投資の各種枠組を支える形で推進するよう求める。」

 APEC首脳会議の現地取材をしたワシントン・ポスト紙のロウギン記者は、11月20日付の同紙で、共同宣言には、中国が唯一反対した、と述べている。どうやら、「公正かつ開かれた形で」という文言が気に入らなかったらしい。

 続いて、16と17番目の段落である。

 「16. 我々は、自由で開かれた市場の達成に向けた取組の重要性及び人々に繁栄をもたらす上での国際的な貿易・投資の重要性を認識する。我々は,持続可能で、グローバルな経済成長の達成及び我々エコノミーでの雇用の創出における貿易自由化及び円滑化の重要性を改めて認識する。我々は、この目標に向けて、多角的貿易体制がこれまでに行ってきた貢献を認識する。我々は、加盟メンバー間で合意したルールに基づき、漸進的な貿易自由化に向けた、透明性があり無差別な枠組みを提供する、良く機能する世界貿易 機関(WTO)のあり方を支持する。

 「17. 我々は,WTOの機能の改善及びそれがすべての加盟国に裨益するために、WTOの交渉、履行監視及び紛争解決の各機能を改善すべく協働することにコミットする。我々は、WTOがその取組を進めるべくAPECエコノミーがWTOへの参画を拡充するよう奨励する。」

 WTOの改革に関しては、トランプ政権も推進していて、日米欧で連携してWTOの改善をしようと、首脳会談等で合意している。WTOがきちんと機能していないから「不公平な」貿易が起きる、というのがトランプ大統領の考え方である。

 安倍総理は、APEC首脳会議前、11月16日に豪州に立ち寄り、モリソン首相と会談しているが、その時に発出された共同プレス声明にも、WTOの改善が盛り込まれた。ということは、これらの段落に反対しているのも、中国ということだろうか。

 パプア・ニューギニアは、APEC首脳会議が始まる前、中国の習近平総書記を国賓として厚遇した。しかし、オニール首相は、APEC首脳会議では、あくまで議長としての中立を守り、中国の圧力に屈せずに、多国間会議を取り持った。自由で開かれたアジア太平洋の一員として、小国ながら踏ん張った。中国は、相当、いらいらしていたようで、それをロウギンは、「癇癪外交」と名付けた。

参考:外務省「APEC2018」平成30年11月18日、Josh Rogin ‘Inside China’s ‘tantrum diplomacy’ at APEC’ Washington Post, November 20, 2018

岡崎研究所

最終更新:12/7(金) 12:13
Wedge

記事提供社からのご案内(外部サイト)

月刊Wedge

株式会社ウェッジ

2018年12月号
11月20日発売

定価500円(税込)

■特集 留学生争奪戦――「金の卵」に群がる産業界と大学
■INF条約破棄 日本は非核三原則に向き合う時
■EU分裂で形勢逆転を狙う英国
■再エネコスト低減の〝幻想〟に終止符を

あなたにおすすめの記事

Yahoo!ニュースからのお知らせ