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東京V、J1昇格を集大成にできるか。ロティーナが仕込んだ下剋上のための戦略【J1参入POプレビュー】

12/7(金) 12:16配信

フットボールチャンネル

 J1参入プレーオフ決定戦が8日、ヤマハスタジアムで行われる。東京ヴェルディはJ2の6位から上位クラブ2つを破って、11年ぶりJ1昇格にあと一歩のところまで来た。ミゲル・アンヘル・ロティーナ監督が仕込んだ変幻自在のサッカーは、ジュビロ磐田をも上回るか。(取材・文:舩木渉)

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●2つの劇的な勝利がもたらす勢い

 東京ヴェルディには、間違いなく今季最高の勢いがある。

 J1参入プレーオフには最も下の立場であるJ2の6位枠で挑み、大宮アルディージャ、横浜FCといずれも自分たちより上位の相手を打ち倒してきた。しかも、2試合とも劇的な形で。

 先月25日に行われたJ1参入プレーオフ1回戦の大宮戦では、約30分を残して内田達也が退場処分を受けた後、フリーキックから奪った虎の子の1点を死守して勝利。そして今月2日の2回戦、横浜FCは後半アディショナルタイムの90+6分にコーナーキックから、GK上福元直人が放ったヘディングシュートのこぼれ球にドウグラス・ヴィエイラが詰めて、これが決勝点となった。

 あまりに衝撃的な展開で望みをつないだヴェルディ。上福元が「全員の思いが乗ったゴール」だといえば、最後に押し込んだドウグラス・ヴィエイラも「チーム全員の思いと気持ちが伝わったゴール」と応じる。

 最後の最後まで諦めない。11年ぶりのJ1昇格、そしてミゲル・アンヘル・ロティーナ監督や、その右腕のイバン・パランコらとともに積み上げてきた2年間の集大成を最高の形で表現するために、ヴェルディは一致団結している。

 これまでのJ1参入プレーオフの2試合でも見られた通り、ヴェルディはロースコアの展開を苦にしない。レギュラーシーズンでの56得点はJ2全体で8番目、6位以上のクラブでは5番目と際立った数字ではない。一方、41失点はJ2を制した松本山雅FCに次ぐ2番目の少なさだ。

 ロティーナ監督とパランココーチが2年間かけて作り上げたのは、堅守をベースに効果的にゴールを奪って勝つチームだった。3-4-2-1をベースにして、各ポジションの選手に明確な役割が定められ、彼らは自らのミッションを確実に遂行する。そうすることでチーム全体の歯車が噛み合っていく。

●上位のアドバンテージ、実は不利?

 8日に行われるジュビロ磐田とのJ1参入プレーオフ決勝では、大宮戦で退場処分を受けた内田が復帰予定。さらに横浜FC戦が負傷明けで途中出場だった、エースのドウグラス・ヴィエイラも「今はいい状態で、100%のコンディションでいる」と完全復活した姿を見せてくれるはず。役者は揃った。

 J1で16位とはいえ、ヴェルディより“上位”の磐田にはアドバンテージが与えられている。J1参入プレーオフ決勝をホームで戦え、引き分けでも”勝利”と扱われて残留できるのである。ただ、この2つの条件がマイナスに働いた例もある。それがヴェルディが大宮を破った、先月25日の試合だ。

 2試合連続で決定的なプレースキックを放っているヴェルディの柱、佐藤優平は大宮戦後に「アドバンテージ的にはああいう入り方になってしまうのかなと。自分たちももし逆の立場だったら、ああいう試合展開になっていたかなと思います」と話していた。

 彼の言う「ああいう入り方」とは、やや受け身で守りに重心を置いてしまうことを指す。大宮は守り切れば勝ち上がりが決められる状況で、自陣にブロックを敷いて相手の攻撃を待ち構えつつカウンターを狙う戦法だった。

 しかし、ヴェルディは1点以上奪わなければ勝ち上がれないため、当然ながら前がかりになって攻めてくる。その勢いを適切に処理できなければ、失点を喫して今度は上位チームが「1点」を求めて焦ることになる。「非常苦しいアドバンテージ」と佐藤は表現していた。

 今度は磐田が、底力を試される。ヴェルディは堅守といえど、ボールポゼッションを非常に得意としているチーム。4-2-3-1で構えたものの、人と人の間のスペースにどんどんパスを入れてくる相手に押されて全体がゴール前に押し込まれてしまったJ1最終節の川崎フロンターレ戦と同様の展開になってしまえば、それすなわちヴェルディのペースとなる。

●打倒ジュビロでJ1へ

 川崎F戦では両翼に配された中村俊輔や山田大記まで最終ラインに吸収されるほど、守備に追われた。中央の大久保嘉人はフラストレーションを募らせ、最前線の川又堅碁は孤立する。そのような展開になればヴェルディにとって理想的な時間の使い方となる。

 ロティーナ監督が仕込んだ「堅守」は自陣に引いてゴール前を固めて耐えるようなものではなく、一定以上のポゼッションを確立した時に実現するもの。8日の試合では、どちらのチームがより長い時間ボールを持ってゲームを進めるかも注目すべき点だ。

 もし用意したゲームプランが崩れたらどうするのか。そういう時もヴェルディは試合の中で様々にシステムを変えられる柔軟性を、これまでの戦いの中で示してきた。大宮戦は3-4-2-1でスタートし、1人退場したことで5-3-1へ。その後、一度4バックへの変更を試みながら先制ゴールを奪ったによって急きょ5-3-1に戻した。

 横浜FC戦でもスタートは3-4-2-1だったが、後半の早い時間帯で3-5-2へシフトし、最後は林陵平を右サイドに回して4-4-2でゴールを目指した。相手の狙いどころを外して翻弄しようとする試合中のシステム変更は、磐田相手にも効果を発揮する場面があるはずだ。

 中村や大久保、川又をはじめとした日本代表クラスの強力な攻撃陣を揃えた磐田に対しても、決してチャンスがないわけではない。ロティーナ監督も「意欲にあふれている」と下克上に並々ならぬ意気込みを語っていた。勢いに乗るヴェルディの最高の下剋上は、これまでに取り組んできたことのすべてを発揮できれば実現に大きく近づくだろう。

(取材・文:舩木渉)

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