ここから本文です

ドイツで極右・反極右抗争に巻き込まれたコカ・コーラの神対応とは?

12/7(金) 18:51配信

ニューズウィーク日本版

──「すべてのFake(フェイク)が falsch(間違い)である必要は無い」

12月に入り、一気にクリスマス色の深まった今月4日、ベルリンの中心地にとある看板が現れた。「1年を振り返るこの時期:AfDに対してNein(No)と言おう!」というスローガンの書かれた真っ赤なボードには、コカ・コーラのロゴとサンタクロース。

日本がタイ版新幹線から手を引き始めた理由

極右政党のAfDはすぐさまこれに反発し、ツイッターなどでコカ・コーラを非難、商品のボイコットを呼びかけた。しかし、同社はこの件に無関係であることが判明。看板の仕掛け人である、とあるキャンペーンの存在が明るみに出るが、同時にコカ・コーラ社のスマートな対応が賞賛を集めている。

■ 「すべてのFake(フェイク)が falsch(間違い)である必要は無い」

反イスラム、反移民、反EUなどを唱える政党AfD「ドイツのための選択肢」は昨年9月の連邦議会選で国政議会に初議席を獲得、以来第一野党となっている。ベルリンの党本拠地近くに登場した看板について、Afdザクセンの副長マキシミリアン・クラーは「これはドイツ最大野党であり、政治的にもドナルド・トランプと近しいAfDに対する政治声明だ。政治声明はコカ・コーラ社の新しいポリシーなのか?」とツイート。無関係のトランプを引き合いに出すあたりが米企業に対する脅迫めいて聞こえる。

一方、独コカ・コーラ社は公式に関与を否定。つまり、この看板はFake「フェイク」というわけだ。しかしながら、同社のコミュニケーション・ディレクターを務めるパトリック・クランマーが個人アカウントで「すべてのFake(フェイク)が falsch(間違い)である必要は無い」とツイートすると、独コカ・コーラ社も公式アカウントでこれをリツイート。

社名を勝手に騙られ、本来なら法的行為をとってもおかしくないところなのに、このように簡潔で、韻も踏む見事なツイートで立場を表明したクランマーと、それを支持した同社に対し、賞賛の声が集まっている。また、看板を本当にコカ・コーラのものだと思ってしまった市民からの、応援のツイートも多い。

これに対し6日には、ペプシを利用したAfD支持の看板が登場。AfDベルリンがクランマーの名言をそのまま借用して看板の写真をツイートした。ペプシはこれを不快に思い、同党に対して法的措置も検討しているという。

■ 看板の仕掛け人は?

では、一体誰が看板を立てたのだろうか?

ツァイト・オンラインなど各機関が報じたところによると、実際の仕掛け人はModusというアクティビストの集団のようだ。ウェブサイトとハッシュタグ#AfDentskalenderで反AfDキャンペーンを展開している。

ウェブサイトではAfDentskalender「アーエフデンツカレンダー」なるものを掲載。これは、ドイツでこの時期の子供たちの楽しみであるAdventskalender「アドベンツカレンダー」をもじったものだ。12 月1日から24日までのあいだ、毎日1つずつ扉を開けると、中に入っているプレゼントをもらえる。たいていはチョコレートだが、他の菓子類や、おもちゃ、あるいは大人向けに香水や商品券などのカレンダーもある。

AfDentskalender「アーエフデンツカレンダー」は、1日に1つ、極右思想と極右勢力を阻止するためのちょっとしたアイディアを提供するオンライン上のカレンダーだ。なにも過激な思想が書かれているわけではない。たとえば、2日には「郵便受けなどに、AfDへの立場を明確に表したシールを貼ったり、職場でそのようなTシャツを着たりしてみよう」、6日には「難民やホームレス収容所はどこにでもある。服や生活必需品など、その人たちが必要としているものを調べ、友人同士で寄付を集めたり、自分自身で何かを届けたりしよう」などと書かれている。看板のアイディアは4日のものだった。

ヨーロッパでは各地で極右が勢いを増している。ドイツも例外ではないが、歴史教育の徹底しているドイツでは、極右の台頭を嘆き、これを阻止しようとする勢力もまた強い。また、12月のヨーロッパは助け合いのスピリットに溢れている。今後、カレンダーにどのようなメッセージが現れるか興味深いところだ。

モーゲンスタン陽子

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ニューズウィーク日本版

CCCメディアハウス

2018-12・18号
12/11発売

460円(税込)

【特集】間違いだらけのAI論
AI信奉者が陥る「ソロー・パラドックスの罠」 過大評価と盲信で見失う人工知能の未来とチャンス

あなたにおすすめの記事