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NHK「みいつけた!」のサボさん役 俳優・佐藤貴史の知られざる素顔

2018/12/12(水) 20:00配信

CREA WEB

 NHK-Eテレの子供番組「みいつけた!」のサボさんとして活躍中の俳優・佐藤貴史さん。ドラマや映画でも活躍されていますが、小劇場を中心に活動する劇団「サモ・アリナンズ」の一員であったり、芸能界切ってのボードゲーマーだったりと、様々な顔を持つ彼の人となりに迫りました。

――俳優になる前は芸人をされていたとか。

 高校生の頃、ダウンタウンが大好きだったんです。ある日テレビで大喜利を見ていたら、松っちゃんと答えが一致したことがあって、それで「俺は松本人志と同じセンスを持っている!」と勘違いしてしまい、芸人になろう!  って思いました(笑)。

――芸人時代のことを教えてください。

 22歳から24歳まで、「あいあい傘」というコンビを組んでホリプロに所属していました。

 最初は面白いって言われてたんですけど、だんだんライブにも出られなくなって行き詰まっていた頃に、大喜利でお題のカンニングをしたんです。で、それを相方に「素人以下だな」って責められ、大喧嘩して解散しました。

 その後は喪失感がすごくて何もやる気にならず、1年くらいパチンコばっかりしていましたね。

――俳優になろうと思ったのは? 

 芸人時代に相方から「役者やったら」と言われたのがきっかけです。

 コンビ解散後、バイトやパチンコをしながらも一応は「役者になるために、劇団に入ろう」とか考えていて、でも当時は「劇団四季」とか「無名塾」とかすごく有名な劇団しか知らなかったし、「無名塾」なんて東大入るより難しいって言われていたくらいだし、とても悩んでいました。

――劇団「サモ・アリナンズ」との出会いを教えてください。

 やっぱりお笑いをやりたかったから、当時好きだった「ワハハ本舗」に入ろうと思いついたんですが、30万円くらいかかるワークショップを受けろって言われて。そんな大金ないから! パチンコばっかりしてたのに(笑)。

 そんなときにバイト先の友達が“小劇場”って言葉を知っていて、有名な劇団以外にも劇団はたくさんあって、小さな劇場で舞台を上演していることを知ったんです。

 で、「この劇団が面白そうだから観に行ってみない?」って誘ってくれて。それで観に行ったのが「サモ・アリナンズ(以下、サモ・アリ)」の舞台です。

――すごい! 運命ですね。

 そうなんですよ。下北沢の駅前劇場に初めて行きました。それが、もう、めちゃめちゃ面白かったんです! 

 知らないおじさんたちの面白さに衝撃を受けて、観ている間はずっと腹抱えて笑ってましたね。芸人時代は先輩を見ても何とも思わなかったのに(笑)。

 観終わった後すぐ、「ここで役者をやりたい!」って思いました。お金もそんなに払わずにワークショップに参加できて(笑)、晴れて「村人B」で役者デビューを果たしたんです! 

――すごくいい話ですね! 

 でしょう! 小劇場の存在を教えてくれたバイト先の友達にはひたすら感謝、感謝です。でも実は、この後の25歳から30歳手前までは、ただただ地獄の日々でした。

――その地獄の日々について、聞かせてください。

 当時のサモ・アリは、演出家の倉森勝利さん、座長の小松和重さん、さらに先輩役者の平田敦子さんなんかがいて。役者としての基本や芝居が上手な人の中でも更に面白い人たちを集めて作った劇団なので、何をやっても面白い。その輪の中に、芸人崩れの僕は入れなかったんです。

 台本は面白いのに、自分の芝居に乗せると面白くない。稽古では誰も笑ってないし、「つまらない」ってひたすらダメ出し。そんな時期がめちゃめちゃ続いていて、稽古中は朝起きたら手足が震える、街を歩いていてもすべてグレーに見える、みたいな状態でした。

――それは……ちょっと……言葉がありません。

 演出の倉森さんは僕を育てようとしてくれていました。だから、プライベートにまで口を出してきて「こういうバイトをしろ」とか「脚本も書け」とか。でも僕はそれが嫌で嫌で、ついには「劇団を辞めます」って倉森さんと座長の小松さんに電話をしたんです。倉森さんは留守電でしたが、小松さんとは電話が繋がって、直接会って話をしました。

 「何がつらいの?」って聞かれて、「実は……」ってそれまで4年以上ひとりで溜め込んでいたことを思いっきり話したら、小松さんは「見せるつもりなかったけど、これを見せるね」って倉森さんからのメールを僕に見せてくれたんです。

 『俺は佐藤がようやく育ってきてサモ・アリにとって必要な役者になったと思うから、今辞めてもらっては困る。でも小松くんが佐藤を必要としないんだったら辞めさせても構わない。今日は俺が行ったら佐藤はちゃんと話せないだろうから、小松くんが話を聞いてあげてね』って。

――大丈夫ですか? 

 すみません、この話をすると目頭が熱くなっちゃうんです。

 倉森さんのメールを見せてくれた後、小松さんが「俺はお前を止める」って言ってくれて。この一言があったから、サモ・アリで役者を続けることに決めました。

 それからは急にみんなが優しくなって、もう褒める、褒める(笑)。もともと僕は一人っ子で、親に溺愛されて育っていますから、褒められて伸びるタイプなんですよ! 

――まさに人生を変える一言でしたね。

 本当に人生であの一言が一番嬉しかった。僕は必要とされていたんだと思って、そこから一気に芝居が楽しくなりましたね。そうしたら客演の仕事もだんだん増えてきて、そこから「みいつけた!」の仕事にも繋がりました。

――佐藤さんといえば「みいつけた!」のサボさんですが、サボさん役はどういう経緯で決まったんですか? 

 オーディションでした。イケテツ(池田鉄洋)さんの「表現・さわやか」の舞台に出ていたとき、NHKの方が観てくれていたみたいで、オーディションに呼んでいただいたんです。サボさん役に決まったときは、本当に嬉しかった! ここが僕のターニングポイントです! 

――どういう役作りをされているんですか? 

 基本は、佐藤貴史のまんまでやっています。サボさんのいい加減だけど憎めないキャラクターが、僕自身のちょっと適当でいい加減な部分と重なって、見事にハマりました! 

 こうやったらもっと面白いだろうなっていうアドリブを差し込んで、絶対に台本以上のものを視聴者の皆さんにお届けできるように毎回心がけています。

 大人も子供も含めたすべての視聴者が見て面白い!  と思ってもらえるのが理想ですけど、まぁよくスベってますよ(笑)。そこを含めて、サボさんというキャラクターを愛してくれたら嬉しいです! 

――気に入っている後輩を教えてください。

 それはもう愛下哲平ですよ。事務所の後輩なんですけどね。こいつは人をダメにする後輩です。こいつがいたら何にもしなくていい。

 お店の予約はしてくれるし、褒めてくれるし、誕生日もお祝いしてくれるし。こいつの腹黒さなんかも知っているんですけど、でも可愛い。

 ただ、こいつは誰にでもいい顔するんですよ。だって彼は“世界の後輩”ですからね。本当は僕だけの後輩でいて欲しいのに……(笑)。

――可愛がられている先輩は? 

 荒川良々先輩です。荒川さんは男気の塊でね。「佐藤、焼肉行こう」って誘われて行っても、自分は食べずに酒ばっかり飲んで、肉を焼いて配っているだけ。それでいて会計はしてくれて……素敵な先輩ですよ。

 1歳しか違わないんですけどね、スケールが違う。荒川先輩には絶対に足を向けて寝られないです。

――仲の良いタレントさんや役者さんは誰ですか? 

 いっぱいいるからなぁ……自分で言うのもなんですけど、めちゃくちゃ顔が広いと思います。

 番組を一緒にやっているサバンナの高橋茂雄はプライベートでも仲良いですね、ボードゲーム仲間でもあるし。他にはオフロスキー役の小林顕作さんかな。あと、拙者ムニエルの加藤啓も仲良いです。

 「みいつけた!」の立ち上げから一緒に仕事をしている作家のふじきみつ彦は、同い年で一人っ子で甘えん坊で親友ですね! 

――では、佐藤さんの愛するボードゲームについてお聞かせください。

 もうとにかく人に広めていますよ、ボードゲーム役者として。まさにインフルエンサーです(笑)。(サバンナの高橋)茂雄に教えたのも僕ですからね。そこから芸人にも広まっているみたいです。

「ボードゲーム」っていうと、人生ゲームくらいしか思い浮かばない人が多くて、プレステとかのテレビゲームに比べると、どうしてもまだ認知度が低いんです。ボードゲームの種類の多さや、頭を使う楽しさを、どうかもっとみんなに知ってほしいと思っています。 

――そんなにもハマるボードゲームの魅力とは? 

 いやもうひたすら楽しい! 役者だったら、マチソワ間(昼公演と夜公演の間の時間)は常にボードゲームですよ。脳の活性化にもなるし、人と直接対話しながらの駆け引きも他のゲームでは味わえない臨場感がありますね。

 サモ・アリのメンバーもみんなボードゲームが好きなんですよ。演劇人は結構みんな好きですね。楽しいし、熱くなれる! ボードゲームは人生を教えてくれます! 

――ハマったきっかけになったゲームは? 

 「スコットランドヤード」というゲームです。これが非常に面白い! ロンドンの街がボードになっていて、神出鬼没な犯人が街のどこに現れるかを予測しながら、警察が包囲して捕まえるというゲームです。

 あとは「テレストレーション」という絵の伝言ゲームや「モダンアート」という絵画をオークションするゲームもすごく好き。王道のゲームばかり挙げてますけど、本当にみんな面白いんですよ。

――一番好きなボードゲームは? 

 ダントツで「カタンの開拓者たち」です! 全世界で2兆5億個売れています(←嘘です)。戦略もあるし、運もあるし、全ての要素がどうしてこんなに面白いんだろう!  と何度やっても毎回思います。もう、週5でやりたいです。気の合う仲間たちと時間を忘れて没頭できるなんて、こんな楽しいことはない! 

――では、先ほど一緒に撮影をされていた愛犬のお話を聞かせてください。どうして犬を飼い始めたんですか? 

 いつも通っている整体院の1階がペットショップだったので、フラッと覗いてみたら「何これ?」って。今までペットショップでそこまで心が揺れることはなかったんですけど、そのときは「こんな子が家にいたら楽しいだろうな」って思ってしまって、その翌週にはブリーダーのところに行っていました(笑)。

 僕は撮影で家を空けることも多いし、犬を飼うのは無理なんじゃないかって相談したら、ブリーダーが「大丈夫です」って言ってくれたんで、飼うことに決めました。これも運命ですね。もう本当に息子みたいな感じです。愛情を100パーセントで表現してくれるなんて、人間じゃできない!  

――初めて犬を飼われたそうですね。実際に一緒に暮らしてみていかがですか? 

 最初はとにかく初めてのことだらけで、ノイローゼ気味でしたよ。トイレのしつけができるまでは頻尿で5分に1回くらいあっちこっちにしちゃうし、ゴホゴホ咳するし。今は治ったから良いんですけど、腎臓とか結構色々な病気を持っていたんで本当に大変でした。

 でも、「犬の十戒」っていう犬を飼うための十カ条を読んだら涙が止まらなくなっちゃって、もう何が起ころうと一生付き合うことに決めました。そして、やっと父になれました(笑)。

 大きな声で笑っていたかと思えば、急に感極まったり、ゲームで勝てば子供みたいに自慢げだったり、「僕サイコパスですよ」と言ったその口で愛犬への惜しみない愛を語ったり……佐藤貴史さんは、とってもとらえどころがない。

 でもそれが、醸し出す雰囲気がぜんぜん子供向けじゃないサボさんの魅力にもつながっているのでしょう。カメレオンのように変幻自在な彼の今後の活躍が楽しみです! 

佐藤貴史(さとう たかし)

1974年12月17日生まれ・栃木県出身・A型。'00年、劇団「サモ・アリナンズ」に参加。以降、メンバーとして全公演に関わる。その他、数多くの舞台や映像作品に出演。NHK-Eテレ「みいつけた!」「みいつけた! さん」サボさん役レギュラー出演、AbemaTV「おしえてアベマくん」藤田社長役レギュラー出演、広島テレビ「おしゃべり唐あげ あげ太くん」山田役レギュラー出演。教師役で出演した、私立恵比寿中学主演ドラマ『君は放課後、宙を飛ぶ』のDVD・ブルーレイが絶賛発売中。2019年夏公開予定の映画『ダンスウィズミー』(矢口史靖監督)に出演。

【取材協力】JELLY JELLY CAFE 渋谷店所在地 東京都渋谷区宇田川町10-2 新東京ビル202電話番号 03-6809-0574(営業時間内のみ受付)営業時間 13:00~23:00定休日 不定休https://jellyjellycafe.com/

濱野奈美子

最終更新:2018/12/12(水) 20:00
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