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「誰も僕を引き留めなかった(笑)」大江千里の47歳“NY挑戦”〈週刊朝日〉

2018/12/30(日) 17:00配信

AERA dot.

 目的の場所まで遠い。日本だったら、当たり前のようにタクシーに乗っていた距離だ。でも今は、駅まで歩いて、地下鉄に乗る。車内で好きなジャズを聴いていると、足は自然とリズムを刻む。どこにいてもジャズは学べることに胸を躍らせながら目的の駅で降りる。プラットホームで若者たちの喧嘩が始まって、それを見ながら頭の中に新しい曲のイメージが広がっていく。そんな毎日。

 大江千里さんがジャズを学ぶためにニューヨークに渡ったのは47歳のときだ。母親や愛犬の死に立て続けに直面して、「人生は一度きり。やり残したことはないだろうか」と自問した。「ジャズをやりたい」──そう強く思った。

「スポーツ選手ならとっくに引退する年で、新しいことを始めようとした割には、周囲の誰も僕を引き留めなかった(笑)。日本を出るときは、『1年ぐらいで大役に抜擢されちゃったりして』なんて、すぐ成功するつもりでいたんだけど、そんな甘い考えは吹っ飛びました。学校を4年半かかって卒業して、生活の拠点もニューヨークに移した。ジャズを極めようと腹を括ったんです。男子、成熟するのに時間を要す(笑)。それは、そのままファーストアルバムのタイトル(『Boys Mature Slow』)にもなっています」

 ニューヨークだからといって、ゴロゴロとチャンスが転がっているわけではない。大江さんは、自分でライヴハウスに売り込みの電話をかけ、アルバムができれば、ラジオ局を訪れ、CDを置いていく。

「アメリカという国では、I.D.がすごく大事なんです。誰かのフォロワーになるより、他にいない存在になることが、自分を認めてもらう一番の近道。ポップスをやってからジャズに転向した人なんて、世界中探してもほとんどいない。だったら、自分のポップスの曲をジャズに“翻訳”したら、僕のオリジナリティーにつながるんじゃないかと思って」

 デビュー35周年の節目にリリースされた「Boys&Girls」では、「Rain」「格好悪いふられ方」といったJ-POP時代の代表的な曲を、ピアノでセルフカバーした。

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最終更新:2018/12/30(日) 17:00
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