ここから本文です

ファーウェイ事件で幕を開けた米中5G覇権争い

2018/12/20(木) 16:18配信

ニューズウィーク日本版

<中国ハイテク企業の幹部拘束という衝撃的な事件が開戦を告げた、新時代の米中パワーゲーム>

カナダ司法省が12月1日、中国通信機器大手、華為技術(ファーウェイ・テクノロジーズ)副会長兼CFO(最高財務責任者)の孟晩舟(モン・ワンチョウ)容疑者を逮捕した。

ファーウェイ事件で、米中ビジネス幹部の出張キャンセル急増「次は自分かも」

逮捕容疑は詐欺行為。金融機関に虚偽の説明をしながら、アメリカが経済制裁を科すイランに製品を違法に輸出していた。孟は11日に保釈されたが、今後は身柄がアメリカに引き渡されるかどうかが注目される。

安全保障やサイバー政策の専門家らは、この逮捕容疑を額面どおりに受け止めてはいない。なぜなら、イラン制裁うんぬんよりも以前から米国と同盟国は、ファーウェイと激しいせめぎ合いを繰り広げていたからだ。

背景には、インターネットなどサイバー空間の主導権を中国企業または、その背後にいる中国政府に握らせまいとするアメリカ側の思惑がある。孟の逮捕は、中国の動きを阻止しようとする戦略の一環だと言える。

アメリカは何を恐れているのか。全てはこれまで中国政府がサイバー空間で行ってきた対米工作に起因する。中国はアメリカに対して何十年も激しいサイバー攻撃を行ってきた。世界がデジタル化され、ネットワークでつながるようになった2000年頃から始まった攻撃の標的は、政府や軍の機密情報だけでなく企業の知的財産にまで及ぶ。

アメリカも中国へのサイバー工作や、ハッキング容疑者の起訴などで対抗してきた。それでも、今では20万人とも言われるサイバー軍団を持つ中国が、これまでハッキングなどで盗み出した情報は、誰も正確に把握できないほど天文学的な量になる。

中国は、インフラなどの破壊を引き起こすような危険な攻撃は実施していない。だが、情報を盗むためにハッキングを成功させ、敵のネットワークに侵入・支配できれば、それはすなわち破壊や妨害行為も引き起こせることを意味する。情報を盗むために電力会社にハッキングで侵入できれば、内部をコントロールすることも、大規模な停電を起こすことも可能になる。

こうした危険性があるからこそ、サイバー空間は誰かが支配するようなことがあってはならない。それが今、中国によって牛耳られてしまう可能性が出てきており、アメリカは強く懸念しているのである。

その鍵となるのが、次世代の通信規格である5G(第5世代移動通信システム)の存在だ。私たちがこれまで利用してきた携帯電話などの通信機器は、1Gのアナログ携帯電話から、現在のようにスマートフォンがストレスなく使えるような4Gの通信規格に進化してきた。そして5Gの時代が間もなく始まる。

5Gは4Gの100倍とも言われるほど超高速の通信を可能にし、生活のほとんどがIoT(モノのインターネット)などを介してネットワークで接続される。インフラ、医療、産業、サービス、教育といった分野から、政府や軍、軍事産業などもつながっていく。個人の健康状態から家計、朝ご飯のメニューまで、全てがネットワークを介して記録されていくだろう。

5Gのインパクトは計り知れない。特に安全保障面で、世界各国が対応についての協議を急いでいる。筆者が最近入手した米政府の内部文書は、「5Gは、単純に現在の4Gより速い速度の通信、ということではない。この次世代の通信技術は、アメリカを世界中の競合から一歩抜け出すことを可能にし、米国民に安全で信頼できるインフラを提供することになる」と指摘。その上でこう警鐘を鳴らしている。「5Gはチャンスなのだ。このチャンスを手にしなければ、中国が政治や経済、そして軍事でも勝利することになる」

1/2ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ニューズウィーク日本版

CCCメディアハウス

2019-3・26号
3/19発売

460円(税込)

【特集】ニューロフィードバック革命 脳を変える
電気刺激を加えて鬱やADHDを治療し運動・学習能力を高める「脳の訓練法」がある

あなたにおすすめの記事