ここから本文です

注目される免疫による「ガン治療」。その可能性と課題

2018/12/28(金) 8:31配信

HARBOR BUSINESS Online

◆がん治療に新たな可能性。免疫治療法はどう進化するか

 本庶佑・京都大学特別教授が、「がん免疫チェックポイント阻害療法」の一つを発見した功績でノーベル医学生理学賞を受賞した。がん免疫療法は手術、放射線治療、抗がん剤に次ぐ第4の治療法と呼ばれている。国立がん研究センターの中面哲也医師によると、そのルーツは100年以上前にまで遡る。

⇒【画像】ノーベル賞を共同受賞した本庶佑氏とジェームズ・アリソン氏

「以前から感染症にかかった人のがんが小さくなったり、消えたりすることが知られていました」

 そこで’70年代に細菌を使って免疫を強める丸山ワクチンなどが作られたが、効果が限定的で作用機序が不明だった。だが、’91年に再度注目を浴びる。

◆効けばがん細胞を全滅させるまで追い込む、免疫治療薬

「免疫細胞の一種であるキラーT細胞というリンパ球が、がん細胞の表面にあるがん細胞を示すアミノ酸の集まり=ペプチドを見分けて、がん細胞を殺すことが初めてわかったんです」

 がん細胞を倒した後、キラーT細胞の働きにブレーキをかけないと正常な細胞まで傷つけ、このとき倒し損ねたがん細胞が残っていると、すぐに増殖してしまう。がん免疫チェックポイント阻害薬は、このブレーキ(PD-1やCTLA-4などが知られている)を効かなくする。その結果、キラーT細胞はがん細胞の最後の1個まで全力で倒し続けるのだ。手術では見えない転移は取りきれないし、がんと戦っている周りのリンパ節まで取るために免疫力は落ちる。抗がん剤や放射線治療でもがん細胞をすべて殺すことは難しかった。ところが、免疫チェックポイント阻害薬を使うと悪性黒色腫(皮膚がんの一種)をはじめとするがんの患者の10~30%に効果があり、効果があった患者は長期間生存することがわかった。完治する患者も出てきたのである。

◆キラーT細胞をいかに増やし体内に投与するかが課題

 だが、いくつか問題も残されている。一定の割合で効くが、平均すると2割前後。薬価も非常に高く、投与前に効果をはかる方法はなく、効いている人にはいつまで投薬すればいいかわからない。

 残りの8割の患者に対しては、「いかにたくさんのキラーT細胞をがんの中に向かわせるかが必要。まだまだペプチドワクチンも使い道があると思いますし、がんと戦えるキラーT細胞を体の外で大量に作ってそれを患者に投与する治療法も有効だと考えます」という。

 がん細胞の表面のタンパク質に結合する抗体の部分とキラーT細胞を活性化する分子とを繋いだキメラ抗原受容体(CAR)と呼ばれる分子を患者のT細胞に遺伝子導入した「CAR━T細胞療法」も開発され、白血病などの血液のがんに対して劇的な効果を示している。今後は固形がんと言われる血液のがん以外の様々ながんへの有効性も期待されている。まだまだ発展途上ではあるが、世界的評価を得たことで研究が進み、多くの患者が救われる可能性が開いたと言えるだろう。

【中面哲也氏】

医学博士。熊本大学医学部卒業。国立がん研究センター・先端医療開発センター 免疫療法開発分野分野長。日本がん免疫学会理事、日本免疫治療学会副理事長

― SPA! BUSINESS JOURNAL ―

ハーバー・ビジネス・オンライン

最終更新:2018/12/28(金) 8:31
HARBOR BUSINESS Online

あなたにおすすめの記事