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Film『喜望峰の風に乗せて』

1/3(木) 16:01配信

中央公論

文・渡辺祥子 映画評論家

 欲望、野心……男の夢。そこから生まれた大きな犠牲にただため息がこぼれる実話がモデル。天才物理学者ホーキング博士と妻の愛を人間味豊かに描く『博士と彼女のセオリー』のジェームズ・マーシュが監督した。
 一九六八年の英国。電気技師でベンチャー企業家のドナルド・クローハースト(コリン・ファース)は、ヨットの単独無寄港世界一周レース「ゴールデン・グローブ・レース」に挑戦した。事業が不調のドナルドには五〇〇〇ポンド(現在の価値で四〇〇〇万円ほど)の賞金が魅力だ。他の出場者はベテランばかりだが、ドナルドはアマチュア。それでもスポンサーも見つかり、地元の新聞『デイリー・エクスプレス』の記者ホールワース(デヴィッド・シューリス)が広報を買って出る。妻クレア(レイチェル・ワイズ)と三人の子供たちもパパを信じていた。
 準備不足の不安を抱えながらも、ドナルドは十月三十一日に三胴船(主船体の両脇に副船体を持つ)で出発する。海は考えていたよりずっと手ごわかった。容赦のない浸水との闘いの厳しさに周囲を見渡す余裕はない。不安が心を蝕んだ。
 大西洋を南下しながらトラブルの連続にレースを断念するときがくる。しかし、虚偽の位置情報を送信した結果、皮肉にもヨットの進む速さから世界記録が出たらしいと誤解される。知らせを受けた妻や子供たちは大喜びだが、ドナルドは自らの嘘に追いつめられて夢は悪夢に変わった。
「これは真価を認めてほしいと願った男の物語。彼は懸命に努力し、無謀だが勇敢なことをしようとした」と監督は語っている。

監督:ジェームズ・マーシュ 
2019年1月11日(金)よりTOHOシネマズシャンテほかにて全国ロードショー

最終更新:1/3(木) 16:01
中央公論

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