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M・ナイト・シャマラン、転落からの復活「自分はただ、そこに絵があると信じさえすればいい」

1/3(木) 11:45配信

Rolling Stone Japan

苦難が続く中、彼が導き出した結論とは?

彼のキャリアは2006年の『レディ・イン・ザ・ウォーター』から転落の一途をたどる。水の妖精が運命の導きで集合住宅を訪れるという、なんとも奇妙な、専門用語が飛び交うおとぎ話の要素に満ちたファンタジーだ。かつてシャマランを「次世代スピルバーグ」ともてはやした批評家たちの一部は、世界を変えることを運命づけられた作家役に監督自身が出演したことに奢りの匂いを感じ取り、映画に出てくる狼もどきのスクラントの群れのごとく彼をとことん攻撃した。だがこれも、2008年の次回作『ハプニング』のキャスティングと比べればかわいいものだ。この作品は、マーク・ウォールバーグ演じる科学教師が掲げる論説(以下ネタバレあり)――人間に占拠された樹木が結託して有毒ガスを発散し、人間に自殺させる――という、映画の本筋以上に非現実的だった。それなりにヒットはしたものの、またもや批評家から酷評され、のちにウォールバーグ本人も「最悪の映画」と口にした。

平静を失ったシャマラン監督は、その後『エアベンダー』(ニコロデオンのアニメ番組が原作)と『アフター・アース』(ウィル・スミスの頭に浮かんだ奇妙なアイデアを基にした)という、2本の子ども向け長編ハリウッド映画を制作したが、いずれも悲惨な結果だった。「あのときの気分は、自分らしさを失い始めたんじゃないかという感じだった」と本人も言う。「僕は、大きな組織の中で仕事をするのには向いてないんだよ」。最終的に彼が出した結論は、自分がもっとも自分らしくいられれば、商業的にも成功し、理解してもらえるということ。だが、気づいたときにはすでに相当痛い目に遭っていた。

シャマラン監督は2018年、この危機的時期の暗い胸の内を、ドレクセル大学の卒業スピーチで詳細に語った。彼はまず、キャリアの輝かしいバージョン、あらゆる栄誉と称賛、成功を紹介した。そして今度はその裏側、2013年ごろに精神的にどん底を迎えた時期へ話題を移した。「気が付けば、私は自分自身を、頭に浮かんだあらゆる考えに疑問を持つようになりました」と監督。「この業界では、私は役立たずの烙印を押されています。教訓話のひとつなのです。一時は運が向いていたが、結局は食わせ者だった、と……私はもう自分を信じないことにしました」

FOX TVの『ツインピークス』的カルト人気番組『ウェイワード・パインズ 出口のない街』でそれなりの成功を収め、自信を取り戻すと、屋敷を担保に500万ドルの融資を得て、自主制作で小規模な映画を制作した。それが、発見された映像から作ったというスタイルのホラー映画『ヴィジット』だ。彼はLAへ向かい、ラフカットをハリウッドの全スタジオに見せて回ったが、どこも興味を示さなかった。失意の彼は、何百ドルもの損失とキャリアの終焉に怯えた。

25年間連れ添った妻バーヴナ・シャマラン博士と、3人の娘が待つ自宅へ戻った彼は、すぐさま娘の1人とジグソーパズルを組み立てた。それが人生を変える、宇宙の真理ともいうべき瞬間だった。「なぜ我々は次のピースを探し続けたのでしょう?」と、スピーチの中で彼は言った。「なぜなら、そこに1枚の絵があると知っていたからです……そのとき、突然すべてが……強烈なほど単純で、正しいことのように思えました。自分の人生がどんな絵かを知る必要はないんだと。自分はただ、そこに絵があると信じさえすればいいのだと」。彼は自分の力が及ぶことにのみ集中し、再び『ヴィジット』の撮影に取り組んだ。撮り直したカットをユニバーサルのもとへ持ってゆくと、ホラーの達人ジェイソン・ブラム氏がプロデューサーとして起用された。映画は最終的に9800万ドルの興行収入をあげた。

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最終更新:1/3(木) 11:45
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