ここから本文です

自主性の尊重と組織改革で箱根駅伝V。東海大の黄金時代が幕を開けた

1/4(金) 12:30配信

webスポルティーバ

 復路で両角監督が重視していたのが7区、そして9区だ。

 6区の中島怜利(れいり/3年)は下りのスペシャリストで、昨年は区間2位。ある程度の走りは想定できるので、そこで一気に勢いをつけるためにも7区の走りが非常に重要だった。

 その7区だが、青学大が昨年の箱根で区間賞を獲得した林奎介(4年)を置いてきたこともあり、スピードランナーの阪口が抜擢された。そしてこの狙いもピタリとハマった。

 阪口は区間2位の走りで東洋大との差を4秒に詰め、8区の小松陽平(3年)につないだ。そして小松が区間新記録の力走で一気に首位に立つと、9区の湊谷春紀(4年)、10区の郡司も危なげない走りでトップを守りきり、ついに悲願の総合優勝を果たした。

 両角監督の狙いが面白いように当たり、選手たちものびのびと走ったことが最大の要因だが、この優勝は「このままではずっと勝てない」という危機感から生まれた選手たちの自発的な走りへの取り組みが大きい。

 全日本大学駅伝後、「どうしたら箱根で勝てるのか」ということを選手間で話し合った。両角監督からはレース参加(関東学連記録会や八王子ロングディスタンスなど)を取りやめ、選手たちは合宿で“箱根仕様”の体をつくることになった。そのなかで、コンディションの調整は選手個々に委ねられた。


 責任を選手に持たせることで「走れない」という言い訳は通用しなくなった。初めて自分自身に向き合った選手たちは意識が変わり、各自でジョグの距離を伸ばしたり、独自の練習法に取り組んだ。

 選手と監督、コーチの間に以前のような話し合いがしにくい雰囲気はなくなり、風通しのいい組織が完成した。チームとして大きな目標を成し得る時は「一体感が必要」と言われるが、東海大は自主性の尊重と組織改革によって「みんなでやろう」という空気が醸成されていったのである。

「うまく行きすぎた感はありますが、優勝するというのはこういうものなのかなと思います。どこもミスがなく、区間順位も2ケタはなかった。特別な走りをした選手はいませんでしたが、全員が自分の走りをして勝ち取った優勝だと思います」

 大手町では17キロ痩せた両角監督の体が、5度宙に舞った。

「この瞬間を待っていました!」

 館澤が涙で顔をクシャクシャにしながら笑みを見せた。

 今回、箱根を走った10人中8人が3年生以下。このほかにも關颯人(せき・はやと)、松尾淳之介(ともに3年)という実力者もいる。青学大の1強時代に終止符を打ち、東海大の新しい時代がスタートした。

佐藤俊●文 text by Sato Shun

2/2ページ

記事提供社からのご案内(外部サイト)

Sportiva

集英社

スポルティーバ
10月31日(水)発売

定価 本体1,593円+税

フィギュア特集『羽生結弦 新世界を拓く』
■羽生結弦インタビュー
■トロント公開練習フォトギャラリー
■アイスショープレイバック

あなたにおすすめの記事