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税理士が見た相続の修羅場② ~子供への結婚祝いの悲劇…

1/6(日) 16:00配信

幻冬舎ゴールドオンライン

家族が集まる年末年始に改めて考えたい相続の問題。ここでは、事例をもとに、相続税対策で生前贈与を行う際の注意点を見ていきます。※本記事は牛田雅志会計事務所の牛田雅志税理士の書き下ろしによるものです。

相続税の対策でポピュラーな「生前贈与」

年間一人あたり110万円までは贈与税が課税されず贈与税の申告も不要なので、子供や孫たちへ気軽に贈与される方を多く見かけます。

確かに、子供達の銀行口座へ110万円を入金あるいは振り込むだけで贈与手続きが完了するので、誰もが取り組める簡単な相続対策として知られています。

ただその一方、簡単であるがゆえ、脇が甘くなり、結果としてその贈与がまったくムダになることがあります。

そこで、実際にあった調査のお話を通して、なぜ正しく行ったはずの生前贈与がムダになってしまうのかを紐解いてみましょう。

「生前贈与」が無効になり追加課税の対象になった事例

以下のようなご家族がいらっしゃいました。

夫(会社経営者)、妻(専業主婦)、長女、そして次女の4人家族です。

妻は、夫の相続対策として110万円の生前贈与を二人の子供が生まれたときから行っていました。子供達の銀行口座を開設し、毎年夫の口座から銀行振込で110万円を振込んでいました。お二人の子供が結婚し独立するまで生前贈与は続けられました。

夫は若くして大病を患われたあとお亡くなりになり、相続税申告書を提出した翌年、相続税の調査を受けることになりました。

夫の財産のうち銀行預金から毎年110万円ずつ子供達へ振込があることを発見した調査官は妻に以下のような質問をしました。

「奥様、ご主人の通帳から毎年子供達へ振込があるようですが、これは何のお金ですか?」

「それは、子供達のために贈与したお金です」

妻は堂々と返答します。

「ああ贈与なのですね。ところで、今この子供達の通帳は誰が持っていますか?」

「もちろん、子供達が持ってますよ。結婚するときに渡しましたから」とキッパリ返答されます。

「ちょっと昔のことで恐縮なのですが、その通帳は誰が開設して、子供達に渡すまで誰が保管していたのですか?」

「それは、私が口座を開設し、通帳は私がずっと持っていましたよ」

「では、細かいことを聞きますが、銀行口座の開設印鑑は誰の印鑑を使用していましたか?」

「それは定かではありませんが、私の印鑑ですべて開設したと思います」

妻は少し不安顔です。

「ああ、そうなのですね。これも確認だけなのですが贈与契約書など贈与の事実がわかるメモ書きのようなものは残されていますか?」

「そんなものあるわけないでしょ。家族なのだから。逆にあったほうが不自然ですよね?」

妻はちょっとキレ気味になってきました。調査官はここが潮時と感じたのでしょう。最後の質問として妻に問いかけました。

「子供達に通帳を渡したのは結婚をされたときと伺いましたが、子供達はご主人から贈与されたことを子供のときから知っていましたか?」

実は、この子供達の通帳は子供達が結婚するときにサプライズでプレゼントするために密かに妻が保管していたもので、子供達にとっては結婚時にはじめて知った預金通帳でした。

奥様は正直に返答されました。

「この預金は、将来娘が嫁ぐときにプレゼントしようと思って長年贈与してきたものです。サプライズなので結婚まで子供達は知りませんよ。何か問題でもありますか?」

調査官は妻の返答を聞いてこういいました。

「奥様、実は贈与というのは、贈与した方と贈与された方が合意して成立するものなのです。今回の場合、子供達は過去に贈与されたことを認識されていないので贈与は成立していないことになります。なので、過去に行った贈与手続きはすべて無効になります」

「はぁ!?」

妻は絶句です。

「また、百歩譲ってもし贈与の合意があるとすれば子供達に通帳を渡した結婚のときです。そうなると、その贈与金額は毎年行った非課税の110万円ではなく、そのときの通帳残高の○千万円となり、その残高に対して贈与税が発生します」

それを聞いた妻は絶叫します。

「子供の口座を開設し、ちゃんと銀行振込で処理したわよ。子供に通帳なんか渡したら使っちゃうから私が持ってたのよ。友人や知人も皆同じようにやってるって聞いたわよ。そんなの絶対オカシイわよぉぉぉ」

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