ここから本文です

日本代表、イタリア名将の腹心が徹底分析。森保ジャパンはどう攻撃し、どこに弱点があるのか?【敏腕分析官の眼】

1/8(火) 10:32配信

フットボールチャンネル

 日本代表は昨年のロシアワールドカップを終えて以降、森保一監督の下で新たなチーム作りを進めてきた。そして迎える初めての公式戦はアジアカップ。大陸王座奪還に向けてサムライブルーの強みと弱みはどこにあるのだろうか。イタリアの名将ロベルト・ドナドーニ氏の下で映像分析のスペシャリストとして働くアルベルト・ナビウッツィ氏が昨年9月以降の複数の試合を詳細に分析し、日本代表を丸裸にする。(分析・文:アルベルト・ナビウッツィ【YouCoach/イタリア】)

【動画】日本、未来の布陣はこれだ! 4年後の日本代表イレブンを予想

●新たなチームを作り上げた森保監督

 森保一監督率いる日本代表は、アジアカップの優勝候補に挙げられている。

 2018年のロシアワールドカップで貴重な経験を得た日本代表に森保監督が就任し、チームの改革を行ってアジアカップに向けた準備をしている。

 新生日本代表は若返りを図り、森保監督は日本代表に新しいアイデンティーと規律を与え、若いタレント性に溢れる選手と経験のあるベテランをうまく融合させることによってチームのバランスを整えた。

 森保ジャパンは各選手が質の高いテクニックを発揮できる明確な役割を持ったフォーメーション[4-2-3-1]を採用している。

 センターバックの2人には背丈があってフィジカルコンタクトや空中戦でも負けない選手を採用し、サイドバックは高い位置をとって攻撃に幅を持たせる役割を担っている。セントラルMFの2人はディフェンスラインを助けられる位置を保ちながらゲームを作る役割を担い、残り4人の選手は新生日本代表に新しいアクセントを生み出していると言える。

 前線の4人は足もとの技術に秀でており、細かいドリブルや素早いショートパスの交換でコミュニケーションを図り、相手ディフェンスの読みを絞らせないプレーが特徴的である。サイドの2人の選手はよく中央に絞り、それに対して1トップは下がりながらセカンドトップへのスペースを空ける。

●日本の武器となる華麗な攻撃

 オフェンスフェーズでの日本代表はセンターバックの2人がペナルティエリアの縁まで広がり、遠藤航と柴崎岳が代わるがわるボールを受けに下りて攻撃を組み立てに入る(図1・図2)。

 もし相手チームが最終ラインを下げ、日本にゲームを組み立てるスペースを与えた場合の理想は、相手の中盤の背後にいるオフェンス4人のうち1人になるべく素早く縦にボールを預けることである。

 この場合は南野拓実が縦パスを受けに顔を出している(図3)。

 両ウィングの堂安律と中島翔哉は南野と同様、ボールをもらいに顔を出す。だが彼らが南野と違うのは、堂安の場合は先にボールを受けたいポジション(中央)に入ってパスをもらうのに対して、中島はサイドに開き、足もとにボールを受けてから中に切り込む傾向がある。

 日本のチャンス、または相手にとって危険なプレーは中島の足から始まっている。足もとのテクニックに優れ、中に切り込むことを得意とし、南野や堂安の横切る動き、大迫の下りてきながら自分に相手ディフェンスのマークを引きつける動きを利用してシュートまで持っていくことが中島の特徴である(図4)。

 オフェンス4人のシンクロは森保ジャパンの最大の強さと言えるだろう。大迫と南野のポジションチェンジが予想できない攻撃の組み立てを演出している。南野は一瞬のタイミングとスピードに乗った中央左からゴールへ向かうカットインを好む傾向がある。

 また、堂安、南野、中島がボールを受けるタイミングとスペースが見つけられない場合、日本はゴールを背にして相手のプレッシャーを受けながらもボールを受けられる大迫の技術を利用し、そこにボールを当てて、他の選手が前に出ていく起点としている(図5)。大迫はフィジカルとテクニック、戦術理解を兼ね備え、味方選手へスペースを与えられる重要な選手だ。

 日本はカウンター攻撃を行う場合も大迫のスキルを活用している。ブレーメン所属のこのストライカーは、味方選手が敵陣深くまでアグレッシブに、そしてスピーディーに有効なカウンターを仕掛けられるようポストプレーを行うことができる(図6・図7)。

●守備陣が抱える決定的な問題点

 一方、主な日本代表の問題点は、持続的に柔軟性を持ってディフェンスラインを動かす能力に欠けているところだ。

 ディフェンスラインを、持続的に柔軟性を持って動かすというのは、チームをコンパクトに保つということを意味する。日本代表のディフェンスラインは戦術理解に長けていることはわかるものの、躍動感と勇気という面で不足を感じる(図8)。

 長期的に見ると、強豪国と対戦した際にチーム全体をコンパクトに保てているか、保てていないかで違う状況を生む可能性が出てくる。どのシチュエーションが一番危ないということはないが、強豪国はスペースを見つけてすぐに危険なシチュエーションを生み出すことができる。

 チーム全体をコンパクトに保つということは重要だが、もしコンパクトさを失った場合にどのようなシチュエーションが起こり得るのか。

・ボールポゼッションを行なっている時、ディフェンスはポゼッションにあまり参加しない。
・相手陣内でボールを失った時にディフェンスは先にラインを下げ、相手にスペースを与えてしまう。
・相手がボールポゼッションを行なっている時、ディフェンスラインは予測して距離を縮めない。

 では現状の日本のディフェンスフェーズはどのように成り立っているのだろうか。まず言えるのは、しっかりとオーガナイズされているということだ。[4-4-2]のフォーメーションに配置されたフィールドプレーヤー全員が守備に参加し、とても良く統制が取れている。南野が大迫と同じ高さまで上がってポジションをとり、最初の守備ラインを形成する。

●日本代表の強みと弱み

 森保監督はボールの位置を基準に、統制のとれた横一列の守備ラインをフィールドに3本並べることで守る「ゾーンディフェンス」を採用した(図9)。

 日本代表の守備でよく行われるのは、前もってボールが入りそうな相手選手を予測して距離を詰める守備ではなく、各々が自分の持ち場で待っている状態から、ボールが入った直後にその相手選手(図9の中で赤く囲った選手)へのプレスを開始する形だ。

 このボール重視で行う守備形成の方法では、相手選手をマークして守備形成に重きをおく場合よりも、統制のとれた守備組織を形成することが可能になる。だがその一方で、相手チームが3本の守備ラインの間にいる選手へパスを通すことに成功した際にはピンチになりかねない。

 この日本代表のディフェンスラインを分析した結果、統率の取れたディフェンスラインを形成するための戦術理解や、選手同士の意思疎通が十分に行き渡っていると感じる。しかし、その一方で相手チームのパスの受け手にプレスをかけにいくことより、デイフェンスラインを後ろに下げることを好んでいるため、守備面でのアグレッシブさはあまり感じられない。

 今の日本代表は各々の高い集中力、規律を持ってプレーすることによりストロングポイントを最大限に発揮し、コレクティブな組織でウィークポイントを消していることが見受けられる。

【日本代表のストロングポイント】
・秩序、集中力、規律、同じ戦術イメージをすべての選手が共有している。
・予想しにくいプレーとスピードと技術の高さによって生み出される、スピーディーかつ豊富な攻撃のバリエーション。
・若手とベテランがうまく共生している。

【日本代表のウィークポイント】
・全体的に身体が小さいため、特にセットプレー時に不利になってしまう可能性がある。
・守備面でのアグレッシブさに欠けていることが、特に試合終盤などで相手チームにプレーするスペースを与えてしまい、チームに敗北をもたらしかねない。
・ゴールリーダーの不在。ペナルティエリア内のチャンスをシュートで終わらせられるストライカーがいない。

(分析・文:アルベルト・ナビウッツィ【YouCoach/イタリア】)

▽著者プロフィール
アルベルト・ナビウッツィ
1979年10月20日生まれ、イタリア国籍。UEFA公認B級指導者ライセンス所持(2005~)。かつてフィオレンティーナなどを率い、高度なサッカー戦術のエキスパートとして名高いセルジオ・ブーソ氏の下で修行を積む。アマチュアからプロクラブまで様々なカテゴリーの育成年代の選手たちを指導した経験も持つ。ジョバンニ・ストロッパ氏(現クロトーネ監督)などの下でも働き、現在はロベルト・ドナドーニ氏のスタッフとして試合分析官として活動中。 指導者サポートサービス「YouCoach」の創設者の1人。

フットボールチャンネル

記事提供社からのご案内(外部サイト)

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事