ここから本文です

絶滅危惧のキツネザル、観光島へ移住させて密猟から保護、マダガスカル

1/9(水) 7:13配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

エコツーリズムと動物保護の両立へ実験的プロジェクト

 アフリカ大陸の南東沖にある島国、マダガスカルのキツネザルが減り続けている。

 最大の脅威は生息環境の破壊と劣化、そして密猟だ。重さ30グラムほどのピグミーネズミキツネザルから重さ9キロのインドリまで、この国にすむキツネザルのほとんど、100種以上が絶滅の危機にさらされている。

ギャラリー:動物の目 多様性に驚き、写真20点

「マダガスカルにおける生息環境の劣化はひどいものです」と語るのは、生態保全の専門家ラッセル・ミッターマイヤー氏。自然保護団体グローバル・ワイルドライフ・コンサベーションの保全責任者で、哺乳類の専門家が集まるプライメイト・スペシャリスト・グループの会長でもある。

「世界で最も保全状況が悪い場所の1つであり、私が目にした最も深刻な土壌浸食が起こっている場所でもあります。手つかずの生態系はわずか10%に過ぎず、今も破壊が進んでいます」

 すべてのキツネザルが生息環境劣化の影響を受けている一方で、カンムリキツネザルなどは特に密猟の影響を強く受けている。2016年7月だけで、保護区であるボバンコラの森で、62匹のカンムリキツネザルが密猟の犠牲となった。「主に食用目的で狙われています」とミッターマイヤー氏は言う。「ただ、多くの場合、密猟者自身の食料として必要なわけではなく、地元のレストラン市場で売られるのです」

 この問題に立ち向かおうと、マダガスカル北東海岸沖の小さな島ノージー・アンコにある観光施設「タイム・アンド・タイド・ミアヴァナ」が、ミッターマイヤー氏および地元のコミュニティと協力して、カンムリキツネザルの移住プロジェクトを立ち上げた。北東マダガスカルでは初となる今回のプロジェクトでは、おとな4匹と赤ちゃん1匹が、本島のベカラオカの森からノージー・アンコに移された。

「飼育環境でうまく暮らせるキツネザルの種は少ないので、保全は野生下で行わないといけません」とミッターマイヤー氏はプロジェクトについて話す。「タイム・アンド・タイド・ミアヴァナで行われているエコツーリズムは、マダガスカルの経済および生物多様性の未来を示しています。地元のコミュニティにとっては特に大切なことです。実行可能な保全策の中で、きちんと運営されているエコツーリズムほど有用なものはありません」

 2016年の大量密猟を受け、タイム・アンド・タイド財団のマダガスカル・プログラム責任者、ニ・サンダ・ラナイヴォーソン氏は、タイム・アンド・タイド・ミアヴァナや数々の地元組織と協力して、マダガスカルの環境省に一つの提案書を出した。この提案によって、コミュニティに根差したエコツーリズムと、カンムリキツネザルの保全プロジェクトを運営する資金が確保された。

 プロジェクト関係者たちは、今回の取り組みが密猟の阻止につながればと考えている。「私たちはベカラオカの森に隣接する地元の人たちに、プロジェクトについて話しました」とラナイヴォーソン氏は言う。「彼らは一緒にやりたいと言ってくれました。彼らの支持もあって、カンムリキツネザルのサンプル採取や運搬および再捕獲と、ノージー・アンコへの移住を含む研究プロジェクトの資金を確保できたのです」

 ノージー・アンコに到着し、マダガスカル本島での密猟の脅威から解放されたカンムリキツネザルたちは、地元の人々からなるチームによって毎日モニタリングされている。ここの生態系はカンムリキツネザルの食性に合っていたようで、移住してからすでに、サルたちの体重は増えている。

 プロジェクトを間近で見るには、タイム・アンド・タイド・ミアヴァナに宿泊し、ガイドのサイモン・アンドリアニアイナ氏と森の中をトレッキングすることになる。「私たちが提供するキツネザルツアーは、マダガスカル随一のものです」とアンドリアニアイナ氏は語る。「筋金入りのナチュラリストしか行きたがらないような、人里離れた場所へお連れします。なので、10時間かかるところを30分で行けるよう、ヘリコプターに乗って行きます。途中、マダガスカルの美しい田園風景を眺めることもできます」

 旅行者はまずマダガスカル本島を訪れて、アンバー・マウンテンをトレッキングしながらサンフォードキツネザルを見たり、ローキー・マナンバト保護区で珍しいシファカやキツネザルを探したりもできる。最後に、ノージー・アンコの海岸沿いの森の中のトレイルに戻り、移住したカンムリキツネザルを見つけるのだ。

 ノージー・アンコのカンムリキツネザルにたやすく出会えるのは、アンパリヒラノという地元のコミュニティとの協力関係のおかげだ。タイム・アンド・タイド財団は、キツネザルをモニタリングし、密猟など違法行為を報告するレンジャーを育成、採用している。

 モニタリングチームは発信器付きの首輪を使って、ノージー・アンコのカンムリキツネザルたちの位置や行動を記録している。キツネザルは一年中観察することができるが、季節によって行動が異なる。これらの情報は、彼らの食事場所や休息場所、また森の中で縄張りを形成するのにどのぐらい時間がかかったかを解明するのに役立つ。

 レンジャーたちは、生息地減少を食い止めるための森林再生も率いている。ローキー・マナンバト地域で焼畑農業から森を保護するための、苗床プロジェクトも実施している。これは地元の女性15人からなるプロジェクトだ。

「長期的な目標は、ノージー・アンコのカンムリキツネザルの子孫をベカラオカの森に戻すことです。が、密猟が減り、地元の人々によるエコツーリズムや保全活動がしっかりと根付くことが先決です」とラナイヴォーソン氏は話す。

文=Michaela Trimble/訳=桜木敬子

記事提供社からのご案内(外部サイト)

あなたにおすすめの記事