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乳腺外科医の「わいせつ事件」で求刑、医療現場悩ます麻酔の幻覚

1/9(水) 6:00配信

ダイヤモンド・オンライン

 2016年、手術の執刀をした患者から、その直後の出来事によって準強制わいせつ罪で訴えられた乳腺外科医がいる。一昨年、逮捕され、105日間の勾留後起訴され、昨年、裁判が13回にわたって開かれた。1月8日、検察側は3年と求刑した。手術直後にいったいどんなことが起こり、どうして医師が起訴されるに至ったか。この事件を解説する。(医療ジャーナリスト 福原麻希)

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● 4人部屋満床、廊下側ベッドで 「事件は起こった」とされる

 「どうしよう、先生におっぱいをなめられ吸われた」

 A子さん(30代)が母親と上司に「医師からいたずらされた」と訴えたのは、2016年5月、東京都内の病院で手術を受けた直後の病室だった。病室は4人部屋で満床、A子さんは入り口に近いベッドにいた(見取り図参照)。

 病院の報告書や裁判の証言によると、A子さんは手術を執刀した男性外科医(当時40歳)から「乳房をもまれたり、しゃぶられたりした」と主張し、母親や看護師にその出来事を号泣しながら訴えたという。

 この日、A子さんは右乳房の乳腺にできた6センチのしこり(乳腺線維腺腫)を摘出する手術を受けた。A子さんは、09年から診察で何度もしこりが見つかり、12年に一度、手術で切除してもらった。今回は2回目の手術で、前回と同じ病院で同じ医師2人(被告人医師とその上司の医師)が執刀した。1泊2日の予定だった。

 A子さんは術後の傷痕が目立たなくなるよう外科医(被告人)に「乳輪に沿って切除してほしい」と依頼した。そこで、外科医はできる限り小さな切開範囲で手術することにした。この医師は乳腺外科専門医で、これまで約500例の手術を担当したことがある。A子さんのことは、11年から5年間にわたって診ていた。

 2人の医師は手術直前も、術後に右乳房の形ができるだけ崩れないよう、慎重に議論を重ねた。乳腺エコーで確認しながら、さらに切開範囲を小さくするように修正して手術に臨んだ。手術は術前準備を含めて約1時間で無事に終わり、A子さんは病室へ運ばれた。裁判では、この病室に戻ってきた14時55分から15時12分の17分間に“事件”が起きたとされている。A子さんが上司にLINEでメッセージを送り、その男性による通報で病院に警察が急行した。

 このとき、A子さんは全身に汗をかいていたので、看護師が「体をタオルで拭いてもいいですか」と聞いたが、「つばは拭かないで。警察に採取してもらうまで乳房は拭かないで」と言ったという。その後、女性警察官がガーゼで乳房を拭き取った。

 起訴事由の趣旨は「病院の病室内において、手術後で体が自由にならない状態にあり、ベッドに横たわる女性患者に対して、診察の一環と誤診させ、着衣をめくって左乳房(*1)を露出させた上で、その左乳首をなめるなどのわいせつ行為をした」とされる。

 一方、被告人の男性外科医はその内容を、一貫して否認している。

 *1 手術を受けた乳房とは反対側

● 犯罪の有力な証拠は指紋と、 精液・血液のDNA型判定

 この裁判の争点は「事件性の有無」、つまり、事件があったかどうかで、(1)被害者の証言の信用性、および、(2)被害者の乳房から採取されたとする付着物のDNA型鑑定、および、アミラーゼ鑑定の信用性が争われている。法廷では捜査関係者10人、専門家として医療関係者が検察側で3人、弁護側で5人の合計18人が証言した。

 事件当日、A子さんの乳首を含む乳房からガーゼで拭き取られた付着物は鑑定の結果、アミラーゼ活性検出試験で陽性反応が認められた。アミラーゼとは唾液腺や膵臓(すいぞう)から分泌される消化酵素で尿、涙・汗・血液・精液にも含まれている。DNA型判定の結果は「被告人の型と一致した」と分かった。

 さらに、A子さんの皮膚、および粘膜表面から採取された付着物であるため、通常は必ずA子さんと男性外科医の2人分のDNA型が検出される。だが、今回は男性外科医1人分のDNA型しか認められなかった。

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