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新興チャイナタウンと高齢化ニッポンの共生

1/9(水) 12:00配信

日経ビジネスオンライン

 私は上海、北京、太原、香港といった中国語圏の町で27年間を過ごした。53年の人生のちょうど半分である。そんな私は日本でたまに、「日本で中華を食べるならどこがおすすめですか」という質問を受けることがある。私にそう尋ねる人たちが期待しているのは、「そんなに長く中国や香港にいたのだから、さぞや本場の味を出す店を知っているだろう」ということなのだろうと思う。

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 だから私が、「横浜中華街で600~800円台の日替わりランチを出すような店ならどこでもまず安心じゃないですか」、と答えると、みな一様に物足りなさそうな顔をする。恐らくみな、日本在住の中国人相手に発展し新たなチャイナタウンとして台頭してきた池袋や埼玉県の西川口にある店の名前が出てくるのを期待していたのだろうから、横浜中華街というなんのひねりもない答えにさぞや落胆するのだろうと申し訳なくは思う。

 ただこうした彼らの落胆の裏には、池袋や西川口の「ディープチャイナ」ぶりを伝えるために、「観光地化されてレベルを下げた横浜中華街に比べ、日本に住む中国人を相手にした西川口は云々」と横浜中華街を必要以上に貶める書き方をする記事がこの数年目につくようになってきたことがあり、それが横浜中華街の低評価につながっていると私は思っている。

 確かに近年、横浜中華街は、修学旅行の中学生、高校生から家族連れ、お年寄りまでいつ訪れても目抜き通りの歩行者天国を人が埋め尽くしていて、横浜の観光地としては欠かせない場所の筆頭格になった。こうした中、横浜中華街の少なくない店がこの10年ほどで、定額食べ放題のビュッフェスタイルを導入したことにより、どこも同じで面白くないという評価が出るのは致し方のない面はある。

 ただ、それは横浜中華街のごくごく一部の面だけを見ての評価である。そうした記事を鵜呑みにして横浜中華街を選択肢から外してしまうのは、あまりにももったいないと言わざるを得ない。

 その日の午前中に上海から羽田空港に着き、直接中華街にやって来てそのまま働き始めたのか? と思いたくなるような雰囲気をまとった店員が店の裏口でタバコをくわえて休憩している。きっと、重くてかさばるのに中国からわざわざ運んできたんだろうなというような、日本では見たことのない、しかし上海や北京など中国ではおなじみの中国製の三輪車や子供用の自転車が停まっている。メーンストリートから1本路地を入るだけで、中国の町と同じ空気の漂う空間がそこかしこに広がっている。十分にディープチャイナではないか。そして何より、横浜の中華街は、中国料理を出す店だけで200店以上がしのぎを削るという激戦区だということを忘れてはならない。本場の味を追求するにせよ、観光客相手と割り切るにせよ、振り切れていなければ競争に勝ち残ることができないのだから。

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