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「死ねというのか?」ある証券マンが取引先社長から浴びせられた罵声

1/12(土) 11:00配信

現代ビジネス

 企業の資金調達を支援し、事業の成長を支えることは、証券会社の重要な任務である。しかし時には、たとえ相手先のトップから懇願されようとも、その企業に残された体力を冷静に分析し、非情にも見える決断を下さねばならない時がある。

 大手証券会社に勤める「ぼく」は、資金繰りが悪化したあるノンバンクから連絡を受けるのだが……。

 証券マンたちの息詰まる「ディール」の最前線を描く実録小説「東京マネー戦記」。

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〈これまでのエピソード〉第1回:「リーマンショックの裏で、危険な綱渡りに挑んだ証券ディーラーの運命」
第2回:「優秀な女性社員の『深夜残業と離婚』は、ぼくの責任なのかもしれない」
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 (監修/町田哲也)

「見学に来ないか」というメール

 ぼくが資金繰りに苦しむ企業の死に直面したのは、2007年のことだった。

 ITバブル以来のピークをつけた株価は、下落に転じはじめていた。景気後退に追い打ちをかけたのが、米国の住宅価格下落とサブプライム問題だ。かつてない世界的な信用収縮と連鎖的な金融不安の足音に、投資家は逃げる準備を進めていた。

 リスクを取る投資家がいなくなることは、業績の悪化した企業にとって死活問題だった。資金調達が滞れば、経営が傾くのは時間の問題だ。ディーラーにできるのは、荒れたマーケットと関わりを持たないことくらいだった。

 Cというノンバンクは、そんなマーケットの波を大きく受けた会社だった。創業20年程度で東証に上場するまでになったが、新たな資金調達がむずかしくなっていた。ノンバンクは、資金がなければ貸し付けができない。業績への直接的な影響は無視できなかった。

 「マーケットに関する意見交換もかねて、一度御社の皆さんで、弊社のコールセンターを見学にいらっしゃいませんか?」

 C社の広報部からメールが来たのは、10月のある日のことだった。ぼくが参加してみようと思ったのは、C社の事業拡大に向けての取り組みを直接見ないと、会社の信用力を判断できないと思ったからだ。

 ノンバンクはインターネット経由の新規顧客が増加しているが、依然として電話や無人カウンターでの申し込みも多い。融資を希望する顧客の手続きをスムーズに進めていくために、コールセンターを自社で保有する会社は少なくなかった。

 11月とは思えない温かい日が続いていた。東京駅から京葉線で1時間ほど行った駅で降りると、C社のスタッフが迎えに来ていた。訊くと、ほかのメンバーはすでに現地に向かっているという。ぼくは案内されるままに、スタッフが運転する車に乗せてもらうことにした。

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最終更新:1/12(土) 11:00
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