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なぜ幕末最大の謎「江戸無血開城」は教科書でサラッと終わるのか

1/12(土) 15:00配信

現代ビジネス

勝海舟と西郷隆盛ふたりの「密室劇」

 ―『天地明察』(渋川春海)、『光圀伝』(水戸光圀)、『はなとゆめ』(清少納言)と偉人たちの新たな素顔を描き出し、歴史小説ファンを唸らせてきた冲方さん。

 今回、3作目になる歴史長編『麒麟児』のテーマに選んだのは、慶応4(1868)年の「江戸無血開城」です。勝海舟、西郷隆盛というスター二人を中心にすえ、スリリングに描き出します。

 僕は開城が決まった日である3月14日を、「無血開城記念日」にしたほうがいいと思っているくらいなんです。なにせ、一触即発の状況から一転、講和が結ばれ、戦争が回避される。世界史に照らしてみても、極めて稀な出来事です。

 歴史を決めたのは、実質たった2日間の会談。幕府側の責任者だった勝と、対する官軍の代表だった西郷隆盛の交渉はどのようなものだったのか。

 交渉は薩摩藩邸の密室で行われたため、実際の様子を知る人は僅かですし、国家機密だから残された史料、文献も少ない。断片的な情報から、痺れるものだったに違いない二人の「密室劇」を紡いでいきました。

 ―勝が「西郷さん、ここで立場を入れ替えてみないかい」と一席ぶったり、西郷の微かな目の動きから官軍の事情を察し、情報網を駆使して切り札を掴むなど、手に汗握る駆け引きが堪りません。

 しかし、勝や西郷という傑物がいなかったら交渉が決裂していたかと思うと背筋が凍ります。

 もし決裂していたら、東京以北は日本人同士の内戦で荒涼とし、貧富の格差がより大きくなっていたでしょうね。混乱に乗じた欧州列強に統治され、植民地になっていたかもしれません。

 これほどの日本史の転換点にもかかわらず、歴史の教科書では勝と西郷の会談の絵画が1枚掲載されて、簡単な説明が添えられているのみ。

 あの大河ドラマ『西郷どん』の原作小説でさえ、2ページで終わっている。素晴らしい作品でしたが、そこだけは、林真理子先生に異議を唱えたい(笑)。

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最終更新:1/12(土) 15:00
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