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アートが伝える「戦争・テロ・自然災害」の世界

1/12(土) 11:00配信

東洋経済オンライン

大地震などの自然災害から、戦争やテロ、金融危機、さらに、ごく私的ながら人生をゆるがす喪失や心傷となる出来事まで。現代社会にはさまざまなカタストロフ(大惨事)が起こり得ます。アートはこれらにどう向き合うのか?  これをテーマにした展覧会が、森美術館で開催中(~2019.1.20まで)。そこで、ジャーナリストの津田大介さんと出展アーティストのスウーンさんが、会場をめぐりながら語り合います。

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■美術は惨事をどのように描くのか

 スウーン:本展は2部構成。前半は美術が大惨事をどう描くのかがテーマなんです。

 津田:瓦礫の中に破壊と創造をめぐる言葉が書かれた大型彫刻(上写真)や、9.11のテロ現場写真をジグソーパズルにした作品(同写真奥:クリストフ・ドレーガー「世界でもっとも美しい惨事」シリーズ)など、主題も表現方法も様々。興味深いですね。

 スウーン:どちらも強い印象を残す作品で、感情的というより客観的に惨事を見つめる視点を感じます。瓦礫の彫刻は特定の事件を超えて破壊と創造をとらえ、パズルの連作は、芸術家が目撃したものを執拗ともいえる意思で表現し続ける。いずれも芸術の重要な姿勢です。

 スウーン:美しい水彩が実は核爆発を描いたものというカーンの絵や、人々の潜在意識を描くようなヘルムット・スタラーツの不穏な絵画にも引きつけられます。私は潜在意識というのが人災の原因にも、それを軽減する力にもなると思う。

■作品の感じ方は多様

 津田:見る人の過去の体験によって作品の感じ方は多様でしょうね。トーマス・デマンドが紙で作った《制御室》で僕が思い出すのは、福島やチェルノブイリの原発事故現場を訪ねて感じた、かつて未来の象徴だったものの儚さです。

 スウーン:なるほど。こうして美術を通じて話し合うことでも、発見がありますね。

 スウーン:私は、表現に用いるメディア(媒体)と、メッセージとが密につながる作品が好きです。津田さんがジャーナリストとして美術に共感する部分は? 

 津田:ジャーナリストが数万字の言葉で複雑な現実を伝えようとするとき、優れた美術はその本質を瞬間圧縮して届けてくれます。だから、報道のような速報性や支援活動のような即効性はなくても、違う意味で「美術は速い」。もちろん各々に役割がありますが、僕が美術に惹かれるのはそうした力です。

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