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全盲のママが語るリアルな日常「私は“目が見えないだけの普通の人”」

1/12(土) 8:50配信

女子SPA!

「障害者」と聞いた時、あなたはどんなことをイメージしますか。

 社会の偏見はなくなりつつあり、自分にも偏見がないという人も多いかもしれません。でも、“かわいそうな人”、“がんばっている人”という、一方的なイメージを抱いてしまっていませんか。

 お話を聞いたのは、全盲の西田梓さん(37歳)。社会福祉法人日本盲人職能開発センターで非常勤講師として働くかたわら、2018年6月には活躍が期待される視覚障害の女性に贈られるサフラン賞を受賞し、企業や学校での講演やワークショップの依頼もあとを絶ちません。

◆特別なんかじゃない日常

 また全盲夫婦で子育てをしており、母親としての顔も持っています。障害がありながらも、順風満帆な人生を送っているように見える西田さん。どのようにして乗り越え、自分の人生を生きられるようになったのか、取材しました。

 917グラムで生まれ、未熟児網膜症により全盲となった西田さんですが、自分のことを「目の見えない普通の人」だと言います。

「なるべく自分のことは自分でできるように、母からしつけられてきました。そのおかげもあって、ほとんどのことは自分でできます。インターネットやメールなどは読み上げ機能で問題なく使えますし、料理、洗濯、掃除も自分でやっています。最近の家電はしゃべったり、音で知らせてくれるものがほとんどですから、不自由はあまりありませんね。自宅にはGoogle HomeとAmazon Echoがあって、時間も天気も知らせてくれる家族のような存在です」

 自宅から職場にも、一人で出勤しています。

「最初は歩行訓練というものを行い、付き添ってもらって道を覚えるのですが、そのあとは基本的に白杖を持って一人で行動します。ただ紙などに書かれたものは読むことができないのと、掃除の仕上がり具合はわからないので、週に2回ヘルパーさんにきてもらい、手助けをしてもらっています」

 プライベートの過ごし方も、目が見える人とほとんど差がありません。

「仕事と家事、子どもの世話もあるので、なかなか忙しいですが、空いた時間はYouTubeを見たり、テレビを見たりしています。音声だけを聞く形になりますが、面白いですよ。あとはコブクロが好きなので音楽を聞いたりして過ごしていますね」

◆浴びせられる言葉に傷ついたことも

 小学校から高校までは盲学校に通い、その後は地元の女子大に進みます。しかし、多感な時期に「心ない言葉をかけてくる人も多かった」と言います。

「私はかなり人に恵まれた人生で、周りに友人も理解してくれる人もいましたが、昔は障害者に対する偏見が今より強かったですから、歩いていてぶつかっただけで『何ぶつかってんねん! ああ、めくらか』なんて言われたり。そんな暴言は一度や二度じゃありません。若かったので、そういうことを言われると心の中でめちゃくちゃキレてましたよ(笑)」

 一方で「かわいそう」と言われることがとても多く、そこにも違和感を覚えていたとも。

「かわいそうってその人の存在を否定する言葉ですよね。あとは『あなたの健康と幸せのために、祈らせてください』なんて言われることもありました。『私は健康だし幸せなんで大丈夫です!』って言い返しましたけど(笑)」

 偏見はだんだんと減ってきてはいますが、いまだに理解のない対応をされることも。

「妊娠前に初めて訪れた産婦人科では、『目が見えないのに妊娠してどうするんですか? 妊娠してもうちには来ないでください』と言われました。あれは忘れられない一言ですね。

 あとは子どもが生まれてからしばらく通った保育園で、命綱ともいえる白杖を『使わないでほしい』と言われたり。子どもの安全確保のためとのことでしたが、白杖がないと近くに何があるか探れないわけですから、そっちのほうが危ないんですよ。そのくせ、廊下に段ボールが積み上げてあったりするんですよね(笑)。

 どこに行っても『危ない、危ない』と言われることが多いんです」

◆道を歩いているだけで「がんばっているね」

 偏見は、「障害者について知らないから生まれていることが多い」と西田さんは言います。

「子どもが生まれたあとは特に称賛されることが増えました。子どもを連れているだけで『目が見える私たちでも子育ては大変なのに、えらいわねえ』なんて言われたり。一見、寄り添ってくれている言葉のように感じられるかもしれませんが、『目が見える私たちでも』というのは明らかに私たちを下に見ているんですよね。そういう言葉には傷つきます」

 障害者が頑張る姿を見せて一方的に感動するというのは、「24時間テレビの影響が大きいのではないか」と西田さんは指摘しています。

「24時間テレビ、昔は本当に嫌いで。障害者ががんばっている姿を見て感動して涙するというのは、そこにやっぱり見下す感覚があるのだと思ってしまうんです。今はそこまでは思っていなくて、世の中の人が知らないいろんな障害について知る、いい機会ではあると思うようになりました。

 ただ、できないことに挑戦する姿を流すのではなくて、障害者にもできることがあることを流すほうが有益のような気がします。たとえば私が料理をしているところを流せば、子どもが視覚障害をもっている方や、中途失明の方に希望を与えられると思うんですよね」

 しかし偏見があってもそこで立ち止まらなかったのは、自分はかわいそうな人間じゃないという思いがあったからだと言います。

「たくさんの人に恵まれ、大変なこともありますが幸せな毎日を送っていますから、心の中で反論することができたんです。でも言葉通りに受け取って、社会に出られなくなるような人もなかにはいます。障害者に危険がないか見張るような社会ではなく、見守るような社会になれば、障害者ももっと活躍できるようになるはずです。

 最近、偏見はないというような意味合いで『みんな一緒』というようなことを言う人が多いですが、私はまだそこまで一緒だと思えないんです。私も含めてですが、よりよい社会になるようにできることはもっとあるだと思っています」

◆夫の一言「今のままでいいの?」で専業主婦から再び社会に

 今は多方面で活躍の幅を広げる西田さんですが、結婚して子育てが始まってからしばらくは専業主婦だったそう。専業主婦も大変な仕事ですが、再び社会に出たいと感じていた西田さんが決意した動機を聞いてみました。

「きっかけは夫の一言でした。いつか社会に出たいと言いつつも、専業主婦でいる私に対して、『これからの人生、今のままでいいの?』と言ったんです。そのときは、子育てしていましたから、私だってがんばっていると怒っていたんですが、『確かに、いつかっていつだろう?』と、だんだんと自分の人生について考えるようになって。

 キャリアカウンセリングを受け、今までの人生を棚卸ししていくうちに、社会に対して視覚障害のことを知ってもらいたいと考えるようになり、再び社会に出る決意をしました」

 母として、妻としての仕事に加えて、様々な活動がそこから始まります。

「面白いもので、決意をするといろいろな話をいただけるようになるんですよね。講演会やワークショップに呼んでいただいたり、取材も受けるようになりました。そこからたくさんの出会いがあったんです。SNSでお子さんに視覚障害のある方と出会って、そういう方の助けになればと『Mothers’ Cafe』を立ち上げ、私の母の育児記録やコラムをアップするようになったりしました」

 また視覚障害の生活を知ってもらう動画を制作してYouTubeにチャンネルを作ってもいます。

「編集ができないのでTwitterで『誰か編集できる人いませんか?』で呼びかけたら、ストーリークリエイターのHARUさん(@harumizuki423)が快く引き受けてくださって。私がどういう思いで、誰にその動画を見てもらいたいと思っているかまでの意図をくんで、一緒に作ってくれています」

 YouTubeチャンネルにアップされている動画の中には、34万回再生されているものも。それが、当時大学生だった林原あずささんの作った「特別なんかじゃないんだよ-全盲ママの子育て-」です。

◆可能性を教えてくれたママ友からのプレゼント

「いろいろとお話しましたが、ひとつお伝えしたいのは、私が障害者の代表者ではないということです。どのような思いで生きているか、どう接してほしいかは障害者によって違いますから。一番うれしいのは聞いてくれることなんです」

 マニュアルを読んだり、インターネットで情報を調べるより、まず相手に聞いてみることが一番なのです。

「とあるママ友が、Facebookにアップした私の娘の絵を見て、とても上手に描かれていることに感動してくれて、翌日にどうしても渡したいものがあると、あるものを持ってきてくれたんです。それは娘の絵をプリントアウトして、その線をボンドでなぞり、乾燥させて凹凸をつけたものでした。私が触って絵の輪郭がわかるようにしてくれたんです」

 カラーでプリントアウトすれば、娘さんが喜ぶと思ったそうで、わざわざカラーにしてくれました。その絵はクレヨン画だったので、線の太いところや細いところを綿棒やようじを使い分けて丁寧に塗ってくれたそうです。

「彼女は福祉関係者でもなんでもないけれど、自分にも何かできることはないかと考え、誰に聞くでもなくその方法を思いついたんだそうです。難しく考えなくても相手を思う気持ちがあればいいんだと、教えてくれました。今でもその絵は大事に飾ってあります」

 今後はワークショップ、講演会の企画を自ら行ったり、出版もしたいと語る西田さん。

 誰もが輝ける未来のため、その挑戦は続いていきます。

<取材・文/上野郁美>

【西田梓】

兵庫県西宮市出身、37歳。社会福祉法人日本盲人職能開発センター、非常勤職員。視覚障害を知ってもらうための講演やオリジナルワークショップ、有名企業でのセミナー、エッセイの執筆を精力的に行っている。視覚障害児を持つお母さんの子育てを応援し、視覚障害への理解を目的としたインターネットサイト「Mothers’ Cafe」「 Mothers’ Cafe YouTubeチャンネル」を運営中

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最終更新:1/12(土) 8:50
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