ここから本文です

格ゲー『鉄拳』Pが語る「日本でeスポーツを流行らせる方法」

1/16(水) 7:02配信

FRIDAY

ソフト以外でもようやく稼げるようになってきたeスポーツ

2018年、流行語大賞のトップテンに入るほど大きな注目を集めたeスポーツ。日本国内でも、数々のイベントが開催され、競技人口も右肩上がりだ。その熱狂のど真ん中、eスポーツの「現場」にいる当事者たちはこの盛り上がりをどう感じているのか。

第3回目は、バンダイナムコエンターテインメントで、格闘ゲーム『鉄拳』シリーズのチーフプロデューサーを務める原田勝弘氏。『鉄拳』シリーズは、国内外で人気が高く、累計販売本数は4700万本を超える。eスポーツ競技としても、「鉄拳ワールドツアー」という名の大会が世界各国で開催されている。競技タイトルそのものを作る立場である原田氏に日本eスポーツの現状を訊いた。

――2018年は世間的にもeスポーツが話題となりましたが、このムーブメントを原田さんとしてはどう受け取っていますか。

原田勝弘プロデューサー(以下原田):一般的にeスポーツブームというのは、昨年、あるいはここ数年で突然始まったように感じると思います。しかし、鉄拳というコンテンツを持つIPホルダー(ゲームの著作権をもつ企業や組織)の立場からいうと、ずっとやってきた活動がようやく認知されてきたという印象です。ゲーム大会やイベントは、メーカー主導であれ、コミュニティ主導であれ、長年やってきてたことです。鉄拳シリーズだけでも、かれこれ24年続いている作品なんですよ。

――それだけ長くやっていたはずなのに、なぜ今になって注目を浴びたのでしょうか。

原田:ひとつにeスポーツに関わることで収益を出す人が現れはじめたということがあるでしょうね。それ以前、IPホルダーはゲームのプロモーションの一環としてイベントを開催していました。収益が出なくても、イベントを開くことでゲームを知ってもらい、その結果ソフトを購入してもらえばよかったので、イベントそのもので収益を出す必要はなかったわけです。

しかし、eスポーツが周知されはじめた頃から、ストリーマーやイベントの実況・解説、プロ選手など、ソフト販売以外で収益を得る人が出てきた。ビジネスが拡大してきたことで、世間でも少しずつ注目されはじめたように思います。

――なるほど、ゲームメーカーにとって、eスポーツはこれまで宣伝や広告の手段の一つだったわけですね。

原田:そうですね。メーカー主導のイベントは、すべて持ち出しで行っていましたし、コミュニティ主導の大会はファンの方々の無償の愛によって支えられてきました。そこにようやく経済が入ってきた。

――海外に比べ、日本はeスポーツに関しては遅れをとっている印象ですが、日本と海外の違いはなんでしょうか。

原田:日本はまだeスポーツに関するいろいろな整備が整っていないですね。その一つに法律の問題があります。大会を開催する時、参加するモチベーションのひとつに賞金がありますが、この賞金額、その資金の集め方が海外と日本では大きく違っているんです。

たとえば、海外ではイベントの入場料の一部を賞金にあてたり、ゲームのダウンロードコンテンツの売り上げを賞金や運営に回すことができます。つまり、ユーザーの人気を集めるゲームはそれだけ大会の賞金額を高く設定できるということ。しかし、日本だとどちらも違法になる可能性があります。

また、日本と海外ではゲームに対する世間の印象・価値観が違います。プレイヤー、クリエイター、ストリーマーなど、日本ではゲームに関わる人の社会的地位は決して高いとはいえません。しかし、アメリカだとゲームは立派なホビーとして、ヨーロッパでは文化として扱われている。場合によってはアートとして評価されることもあります。

実際、私は『鉄拳』のプロデューサーとして、2016年にスペインのバルセロナ市長から「プロフェッショナルキャリアアワード」という賞をいただいたんですよ。ゲームを作って、公的な機関から自身のキャリアを称える賞をいただけるのは海外だけです。ブラジルでも昨年「ライフタイムアチーブメント」という功労賞を頂きました。

――それはすごい! 確かに任天堂の宮本茂さんもフランス政府から勲章を授与されていますし、ゲームクリエイターの地位はだいぶ上がってきたといえるかもしれません。でも、ゲームプレイヤーはまだまだと感じませんか。

原田:そうなんです。一方で海外はすごいですよ。たとえば韓国だと、テレビCMにプロゲーム選手が登場したケースもあります。それこそ日本でスポーツ選手がテレビCMに出ているのとなんら変わらない感じで。

――海外と日本の大きな差を感じますね。お聞きしたいのですが、海外ではeスポーツイベントそのもので収益を得られているのでしょうか。

原田:2018年の鉄拳ワールドツアーのファイナルは、オランダのアムステルダムで行ったのですが、観客シートを44ドル(約4900円)で販売したところ、あっという間に売り切れてしまいました。eスポーツにかかわらず、イベントとしてはかなり高額の入場料だったのですが、それでも売り切ることができ、入場料で当日の運営費を賄えるレベルになりつつあります。

――大会の人気が出れば出るほど、ゲームメーカーとしては、一般ユーザーが楽しめるように作るのか、それともeスポーツでプレイされることを重視して開発するのか、そのバランスが難しくなってくると思います。そのあたりはどのようにお考えでしょうか。

原田:『鉄拳』は、ずっと大会をやってきたソフトなので、もちろんeスポーツ事業も視野に入れて開発しています。しかし、まずなによりそのゲームが面白いかどうかが重要です。面白くなければ、誰もプレイしてくれませんからね。

ユーザーターゲットもeスポーツを中心に考えてしまうと、コアユーザー向けになりがちです。コアユーザーは大事なのですが、新規ユーザーを取り入れないと長く続かないので、常に世代交代を見越した開発はしています。たとえば『鉄拳』シリーズでいえば、『鉄拳タッグ』と『鉄拳4』はコアユーザーに非常に評価が高いタイトルです。でも、売上的に見れば、この2つは他のシリーズに比べて特段売り上げが良かったわけではない。一般的な人気とeスポーツタイトルとしての人気は別モノなわけです。

以前は将棋のように実力がそのまま反映される普遍的なゲームを目指していましたが、今は麻雀のように、たまに初・中級者も勝てるような運要素をバランスよく入れることを大切にしています。たとえば、『鉄拳』シリーズはある程度、ボタンを適当に叩いているだけで、連続コンボが発生したり、大ダメージを与える技が出るようになっています。それをすべて防ぐことはプロでも難しい。簡単操作で一発逆転できるシステムが用意されているわけです。

――原田さんは、個人もしくはゲームプロデューサーとして、今後はどのようなことを目標に活動していくのでしょうか。

原田:ゲームメーカーが他社のゲームタイトルのeスポーツチームを運営するのも面白いかなと思っています。ある意味で競合他社のプロモーションの手伝いにもなってしまうので微妙なラインではありますが、チーム運営として独立採算で行えれば、それはそれで面白いと思うんですよね(笑)。

また選手の収入の安定の為にも、定期的なリーグ戦があると良いなと考えています。ただ、その場合はずっとゲームを出し続け、プレイし続けられる環境をメーカーが担保する必要があります。一つのメーカー、一つのタイトルでやり続けるのは結構大変だと思うので、複数のメーカーで協業して、リーグ戦を持続させられたら理想ですよね。ジャンルが同じであれば、ある程度横断的にプレイすることはできるはずなので、ゲームジャンルごととか。『鉄拳7』であれば、色んな対戦格闘ゲームと協力しあえれば良いですね。

現実的なところでいうと、これからも大会はやり続けますよ。私自身も上手い人のプレイを見るのは楽しいですし、自分が上手くなる為のお手本としても重要です。あとは、eスポーツしいてはゲームそのものの社会的地位が少しでも向上するように微力ながらお手伝いできればと思っています。

最終更新:1/16(水) 7:02
FRIDAY

あなたにおすすめの記事