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海水淡水化、廃水は淡水の1.5倍、化学物質も含む

1/17(木) 7:11配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

従来は等倍量とされた高濃度塩水、増え続けるプラントを科学者が懸念

 中東や北アフリカなどの乾燥した地域を中心に、世界中で水不足が進行しつつある中、経済的に余裕のある国々は次々と海水(塩水)の淡水化に着手している。海水淡水化とは、大量のエネルギーを用いて、海水などから塩分を取り除く処理のことだ。世界には現在、稼働中および建設中のものをあわせて、1万6000カ所近い海水淡水化プラントが存在する。

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「海水淡水化プラントで作られるのはしかし、塩分を取り除いた水だけではありません」と語るのは、カナダにある国連大学の研究者、マンズール・カディル氏だ。「そうしたプラントからは、ブラインが発生します」

 ブラインとは、淡水化処理後に残される高濃度の塩水だ。しかし、ブラインがどれだけの量発生しているのかについて、「包括的な評価は存在しない」とカディル氏はいう。そこで氏らは、新たな評価方法を用いてその値を算出し、1月14日付けの学術誌「Science of the Total Environment」に発表した。

 カディル氏のチームは、すでに稼働を停止したものも含む約2万カ所の淡水化プラントについて、入手可能な調査報告書やデータベースを分析した。ブラインの生成については、測定する基準すら存在しない。そのため、彼らは素材となる塩水のタイプと、使われている淡水化技術などから、プラントのおおよその「回収率」、つまり、淡水と比べてどれだけのブラインが発生しているかを推定した。

日本の半分を30センチの水で覆える量

 調査報告書などでは長い間、淡水とブラインの比率は1対1と仮定されてきた。ところがカディル氏らの研究により、平均的な淡水化プラントにおいては、実際には淡水の1.5倍のブラインが発生していることがわかった。すなわち1年間で518億立方メートルになるが、これは日本の半分を深さ30センチの水で覆い尽くせる量だ。

「タイムリーかつ重要な情報です」。米ニューヨーク大学アブダビ校の生物学者ジョン・バート氏はそう語る。バート氏によると、淡水化は環境にいくつかの有害な影響を与えるおそれがあるという。

 そうした影響の中でも特によく知られているのが、大量の化石燃料を燃やす際の排出物だ。大半の淡水化プラントは、「逆浸透法」を採用している。この方法では、水と塩を分ける膜を通過させる際に、高い圧力をかける。そのために、大きなエネルギーが必要になる。

 典型的なプラントでは、1000ガロン(3785リットル)の海水を処理するのに平均で10~13キロワット時のエネルギーが使われる。このエネルギー消費が、淡水化のコストを引き上げている。カリフォルニアにある最新の淡水化プラントは10億ドルのコストをかけて建設され、今ではサンディエゴで消費される飲料水の7パーセントを供給している。こうしたコストと環境への影響の大きさから、科学者らは、より効率的な分離膜や、太陽エネルギーで動く淡水化装置の開発といった代替案を探ってきた。

 海水を取り込むときにも、魚の幼生などの微生物やサンゴを吸い込んでしまうという問題がある。しかしより大きなリスクは、淡水化プロセスの最終段階にある。それはブラインが海に戻されることだ(淡水化の大半は海のそばで行われている)。

「ブラインは通常の海水よりも塩分濃度が高く、また排出時の水温も高くなります」とバート氏は言う。こうした条件下では、ブラインの排出場所付近の海洋生物は生き延びることが難しくなる。

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