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宇宙は「暗黒流体」に満ちている? 新説を巡る科学者とメディアの責任を考える

1/22(火) 12:12配信

WIRED.jp

オックスフォード大学の天体物理学者ジェイミー・ファーンズは2018年12月、天文学誌『アストロノミー・アンド・アストロフィジックス』で研究論文を発表するとともに、その自説を詳細に解説した記事を公開した。それは「宇宙の構成は負の質量をもつ『暗黒流体』(dark fluid)で説明できる可能性がある」というものだった。

宇宙の「隠れていた物質」が、ついに発見される

英語ニュースサイトの多くは、これをあたかもオックスフォードの研究者がダークマターの謎を解明したかのように報道した。しかし、実際そんなことはない。このファーンズの説は、Twitter上の天体物理学コミュニティでツイートの嵐を巻き起こした。

天文学者のなかには、論文の内容を疑問視する者もいた。しかし本当の問題は、ファーンズ論文の科学的内容というよりは、むしろ別のところにある。われわれメディアや科学者が、科学的な情報を一般の人々にどのように伝えるかだ。

見えない何かがそこにある、という仮定

今回の場合、報道関係者たちは非常に過剰宣伝だったプレスリリースに基づき(率直に言って)ミスリーディングな報道を行った。こうしたことが起こると、科学者は真っ先にメディアを名指しで非難する。だが実際のところ、メディアと同じくらい自分自信を非難すべき科学者も多い。

でもまずは、科学について考えよう。宇宙に関してはまだわからないことがたくさんある。例えば、銀河の回転の仕方は、そこに存在する目に見える物質だけでは説明しきれないと考えれられている。望遠鏡で観測可能な銀河内の恒星の質量をすべて合計しても、ニュートンの法則を使って算出される質量に比べるとはるかに小さい。

こうした不一致を説明するには、われわれには見えない何らかの奇妙な物質もそこに存在する、と仮定する必要がある(ただし、目に見えない物質による重力の影響は、遠方にある銀河の像を巨大レンズのようにゆがめる作用などによって観測できる)。これが、よく知られた暗黒物質だ。

だがこれまでのところ、科学者による最善の努力と多数の実験にもかかわらず、暗黒物質についてはその片鱗すら見えていない。また、暗黒物質だけでは宇宙をまだ完全には説明できない。

宇宙は膨張しており、この膨張は加速している。この加速膨張を科学的に説明するには、さらに輪をかけて不可解な実体に頼らざるを得ない。それが暗黒エネルギー(ダークエネルギー)だ。

暗黒物質と同様まだ観測されておらず、どのようなものであるかはまったく不明だ。だが、暗黒エネルギーは存在するはずだ、というのが一般的な科学的コンセンサスとされている。

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最終更新:1/22(火) 12:12
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