苦戦にも種類がある。
たとえば、引いて守りを固める相手を崩せないパターン。今回のアジアカップでもトルクメニスタン戦の、とくに前半がそうだったが、日本はアジア勢との戦いのなかで、これに陥りやすい。W杯ロシア大会の予選では、シンガポール相手にホームでスコアレスドローに終わった苦い経験もある。
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だが、言い換えれば、これはアジアでの戦いに特有のものだ。日本がワールドカップでベスト8を目指す――グループリーグを突破し、決勝トーナメント1回戦を勝ち上がる――なかでは、基本的には起こりえない。なぜなら、日本が同格以上の相手としか対戦しないワールドカップで、徹底した守備的戦術を採られることなど、まずないからである。
だとすれば、この種の苦戦については、多少は大目に見てもいいのだろう。
しかし、その一方で、見過ごすのが難しい種類の苦戦もある。アジアカップ決勝トーナメント1回戦。日本がサウジアラビアに1-0で勝利した試合が、それだった。
どんなに強いチームでも、常に調子がよく、いつでも快勝できるわけではない。出来が悪いなりにも勝てる。それは、勝ち続けるチームにとって不可欠な要素だ。
劣勢のなかで、セットプレーから奪った虎の子の1点を守り切る。そんな泥臭い勝利が、トーナメントを勝ち上がるなかでは、ひとつくらいあってもいい。
だが、それにしても、日本は攻められ過ぎた。「(サウジアラビアの選手が)うまいのはわかっていたが、あそこまで完全に支配され、押し込まれるとは、僕はイメージしてなかった」とは、DF冨安健洋(シント・トロイデン)の述懐だ。
苦戦のなかには、引いた相手を崩せないのとは対照的に、まったく攻めることができないパターンもある。「何もさせてもらえない」という表現があるが、相手の攻撃をはね返すのが精一杯で、攻めに転じることができなくなるケースだ。
このパターンが前者と異なるのは、相手の実力がかなり上のチームとの対戦において、起こりやすいということ。つまり、日本がワールドカップのベスト8を目指すならば、克服しなければならない種類の苦戦である。日本は過去にブラジルやフランスを相手に、この種の試合を強いられた経験があるが、サウジアラビア相手にこれではマズい。
公式記録によれば、この試合のサウジアラビアのボールポゼッション率は76.3%。後半だけなら80%を超えている。これほどの”異常値”を見てしまうと、相手にボールを持たせて、うまく守ったという表現をしようにも、いささか説得力に欠ける。
試合を見ていて、失点しそうな気配を感じなかったのは確かだが、それは相手の拙攻に助けられた感が強い。ブラジルやフランスにここまでボールを保持され、攻め続けられたら、まず持ちこたえられまい。
最終更新:1/22(火) 17:20
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