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フカヒレ販売禁止に賛否両論、本当にサメを守れるのか

1/27(日) 8:20配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

残虐なフカヒレ漁と乱獲を防ぐために米12州が実施

 ロサンゼルスにいれば、気が向いたときにチャイナ・ゲート・レストランにフカヒレスープの出前を注文できる。値段は16.95ドル(約1900円)だ。

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 けれどもその行為は州法に違反している。米国では、2000年から領海内でのフカヒレ漁(生きているサメからヒレだけを取る漁)が禁止されているが、カリフォルニアをはじめとする12の州では、フカヒレの販売も現在は禁止されている。サメの個体数がこれ以上減少するのを阻止し、フカヒレ漁も防ぐためだ。スープ用のフカヒレの需要が最も高いのはアジアの国々だが、米国でもかなりの需要がある。

 なお、チャイナ・ゲート・レストランのオーナーの兄弟という人物は、ネットに公開されているメニューには間違いがあり、フカヒレスープは提供していないと主張している。

 フカヒレ漁では、サメを捕獲して生きたままヒレを切り取り、傷ついたサメを船外に投げ捨てる。サメはそのまま海底に沈んでゆく。泳げなくなったサメはエラ呼吸ができず、窒息死したり、失血死したり、ほかの動物に食べられたりする。

「私がこれまで見てきた中で最悪の動物虐待行為」と、カリスマシェフのゴードン・ラムゼイ氏はドキュメンタリー番組の中でフカヒレ漁を評している。

 ワシントンD.C.の非営利団体、動物福祉研究所はフカヒレの販売禁止を支持しており、毎年、フカヒレスープを提供するレストランのリストを発表し、規制当局に通報している。

 しかし同研究所によると、フカヒレの販売を禁止する12の州のうち少なくとも10の州では、レストランでのフカヒレの提供が続いているという。

規制で闇取引が増加

 米国議会の上院と下院では、この2年間にフカヒレの取引に関する法案が5本以上提出されている。だが、いずれも成立せず、米国のサメの運命を不確かなものにしている。

 野生生物を使った製品の消費を減らすために活動している環境保護団体「WildAid」のピーター・ナイツCEOは、フカヒレ漁が規制されていない国が多いと言う。つまり、サメを捕獲してヒレだけ切り取る国々から、米国人がフカヒレを買っている可能性があるのだ。

 フカヒレへの需要と乱獲のせいで、世界のサメ、エイ、ギンザメの4分の1以上の種が絶滅の危機に瀕している。2012年の研究では、全米のレストランのフカヒレスープから、8種のサメのDNAが検出された。その中には、絶滅危惧種のアカシュモクザメのほか、危急種のアオザメやアブラツノザメも含まれていた。

 アジア諸国、特に中国では、フカヒレが昔から高級食材として珍重されてきた。宋の皇帝が富と権力を誇示するために考案したフカヒレスープは、今日でも結婚式などのごちそうとしてふるまわれている。

 この高級感が、米国の規制当局の頭痛の種になっている。フカヒレの取引を禁止している州では、フカヒレが違法薬物のように地下で取引されるようになってしまったからだ。さらに、州法に違反してフカヒレを販売した者に科される刑罰は総じて軽く、抑止効果がほとんどない。

 米モート海洋研究所サメ研究センターのロバート・ヒューター所長は、1988年に初めてフカヒレ漁の問題を指摘した。現在もサメを守るために精力的に活動しているが、全米でのフカヒレの販売禁止には反対だと言う。

「米国でフカヒレの取引を禁止すれば、全世界のサメを救えるというのでしょうか。そんな単純な話ではないのです。もちろん私はフカヒレ漁には反対ですが、合法的に捕獲された死んだサメのヒレを取ることは残虐な行為ではありません」。むしろ、フカヒレの販売を禁止すれば、サメのヒレを無駄にすることになるというのが彼の主張だ。

「サメのヒレを廃棄することは、水産物の完全な活用という私たちの主義に反しています。獲ってしまった魚は余すところなく利用しなければいけません」

 カナダ、サイモンフレーザー大学の海洋保全生物学者のデビッド・シフマン氏も、アオザメのステーキを食べる人がフカヒレスープを食べる人を批判するのはおかしいと言う。

 ヒューター氏は2018年に、全米でのフカヒレ販売の禁止への代案として、持続可能なサメ漁と取引に関する法案の作成に協力した。法案は、フカヒレ漁を禁止し、サメの保全活動を進めている国からのみフカヒレの輸入を許可するというもので、フロリダ州選出の共和党議員ダニエル・ウェブスター氏は、この会期中に再提出することを計画している。

 しかし、動物福祉研究所の海洋動物プログラムのディレクター、スーザン・ミルウォード氏は、やはり包括的な禁止が最良の策だと言う。

「持続可能なフカヒレ取引の仕組みを作っても、フカヒレ漁によって集められたフカヒレを締め出すことはできないからです」

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