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私たちはなぜ「科学の迷信」をあっさり信じてしまうのか?

1/27(日) 12:21配信

Wedge

 あたかも科学的であるかのような言説を弄して人びとに嘘を信じ込ませるやり口は、昔から後を絶たない。「疑似科学」とか「似非科学」と呼ばれるもので、学界やジャーナリストが間違いを正す試みを繰り返しているものの、いったん広がった火は容易には消えないようだ。本書のタイトルにあるように、「科学の迷信」として信者を失わないまま、長く生き続ける。

一蹴できる”常識”も、迷ってしまうテーマも

 本書は、「現在および過去に信じられていたが、科学者らにより事実ではないと一般的に認められているものや、事実であるとの証明がなされていないもの」をとりあげ、その真相に迫る。もちろん、将来新たな事実が判明する可能性もあるにはあるが。

 ナショナルジオグラフィック別冊らしく、100のテーマをそれぞれ写真や図版付き、見開きで簡潔に解説しており、ビジュアルを楽しみながら関心のあるテーマを拾い読みできる。

 物理と化学の迷信、古代の迷信、人体の迷信、生物の迷信、地球の迷信、宇宙の迷信の6章仕立て。明らかに「それは嘘でしょう」と一蹴できる”常識”もあれば、「えっ、本当はどうなの?」と迷ってしまうテーマもある。

 陰謀説を支持する人はどこの国にもいるものだが、「アポロの月面着陸は捏造だった」とか、飛行機雲は「国全体に毒をまこうとするどこかの政府のたくらみだ」などという迷信には、開いた口がふさがらなかった。

 とはいえ、恥ずかしながら、本書で初めて真偽がわかったテーマが結構ある。「剃ると毛は濃くなる」とか「カエルはゆっくり沸くお湯から飛び出さない」とか、ミステリーサークルとか。

「北半球と南半球では渦の向きが逆になる」の真相

 たとえば、「トイレを流すと、北半球と南半球とでは渦の向きが逆になる」。この話、バスタブの湯を抜くとき、渦の向きが北半球と南半球では逆になると聞いたことがあるような、ないような。

 本書によると、真相はこうだ。北極点の上に立って、自転する地球を見下ろすと、地球は反時計回りをしているように見える。南極点では逆に、時計回りに見える。回転座標系の中で物体に力がどう働くかは、「コリオリ効果」で説明できる。つまり、地球の自転と同じ方向に巻き込まれて渦を作るはずである。

 事実、サイクロンや台風の渦の向きは北半球と南半球とでは正反対になるし、風速や海流、気象パターンも関係して、コリオリ効果の影響は飛行機やミサイルにも波及する。

 ところが、これは作用する範囲が十分に大きいからで、トイレの排水口やキッチンの流し台ではあまりにも小さすぎて、理屈通りにいかない。排水口の形や、その前にトイレを流したときの水の揺れなどのほうが、コリオリ効果より大きな影響を与えるのだという。ふーむ、なるほど。

 ただし、トイレのサイズをサッカー場ほどの大きさにすれば、コリオリ効果を確認できるかもしれない。「それはそれでまた、新たな迷信がちまたに流れるだろう」と、落ちもおもしろい。

 「落ちてきたコインで人が死ぬ」という迷信も、ちょっと興味深い。「超高層ビルのてっぺんからペニー硬貨(米国の通貨で一番軽いコイン)を落とすと、頭に当たった人が死ぬかもしれない、と数世代にわたって子どもたちの間で言い伝えられてきた」というのだ。

 これは、「終端速度」の理論を使って数字で説明している。結論をいえば、ペニーが落ちてくる状況を心配する必要はない。ただし、ボールペンがダーツのようにまっすぐ落ちてきたら、「空気抵抗が働いても時速322キロまで速度が上がり」、危険な凶器になるという(決してまねをしないでください)。

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最終更新:1/27(日) 12:21
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