ここから本文です

シリコンバレーの夢と「厚い壁」

1/30(水) 12:30配信

ナショナル ジオグラフィック日本版

住宅相場は1億円、そこに「乗れない層」が浮かび上がってきた

 シリコンバレーは今や移民を抜きに語れない。米国ではコンピューターや数学の分野で、労働力の60%以上を外国生まれが占めている。女性だけを見ると、外国生まれが実に78%だ。シリコンバレーのIT業界で働く人の出身はインド、中国、ベトナムを筆頭に数十カ国にのぼり、2015年にはアフリカのジンバブエ出身が42人、キューバ出身が106人いた。

ギャラリー:シリコンバレーの現在

 多国籍化が進むにつれて、「シリコンバレー・ドリーム」に乗れない層が浮かび上がってきた。大手IT企業では、アフリカ系とラテン系の従業員は合わせてもわずか12%。「オトコ社会」といわれるシリコンバレーでは、女性の存在感も薄い。グーグル、アップル、フェイスブックの女性社員は全体の30%をやっと超える程度だ。2018年9月に発表された調査では、スタートアップ企業を始めた人のうち女性は13%で、創業者株式の6%しか保有していないという。

 それでも女性は少しずつ力をもち始めている。技術分野での女性の地位向上を目指す非営利組織、AnitaB.orgが米国企業80社を対象に2018年に実施した調査では、IT系従事者の24%、役員の18.5%が女性だった。

 ただし求人サイトを運営するハイヤードは、IT職の女性の報酬が同じ役職の男性より少ない事例が6割を超すと報告する(報酬の格差は平均4%)。主要IT企業は多様化を進めたいと口をそろえるが、すぐに変えるのは難しい。

 ニューヨーク州出身のプロダクト・マネジャー、シュリヤ・ネバティアは言う。「シリコンバレーは女性に厳しいところだけど、それは覚悟のうえだと若い子たちは言っています」。ネバティアは、IT職に就いた女性とノンバイナリー(性自認が男性でも女性でもない人たち)を応援して将来的に起業を後押しする団体「バイオレット・ソサエティ」を設立した。

ホームレス保護施設に隣接する100万ドルの家

 流入者が増えているシリコンバレーでは、不動産や家賃が上昇を続けている。住居費の負担が重くのしかかり、IT業界にいない人はもちろん、業界にいても生活が苦しくなっている。

 とりわけ厳しいのは、人口約3万人のイースト・パロアルトだ。この半世紀、住民の大半はアフリカ系とラテン系だったが、最近は白人やアジア系の家族が増えてきた。不動産データベース会社「ジロー」によると、住宅の平均価格は2011年には26万ドルだったが、現在は100万ドル(約1.2億円)を優に超えた。サンフランシスコからサンノゼまでの半島全体で、そこそこの家でさえ100万ドルが相場になっている。

 昔からの住民はIT景気と無縁だ。家賃が値上がりし、マイホームも買えない人々は、通勤に何時間もかかる郊外への引っ越しや、ほかの家族や友人との共同生活を余儀なくされる。シリコンバレーを離れた人もいる。妻のシェリルとともに、イースト・パロアルトで非営利の福祉団体を運営しているポール・ベインズ牧師は「ホームレス保護施設の隣に、100万ドルの住宅が建っているんです」と語った。

※ナショナル ジオグラフィック2月号「少し大人のシリコンバレー」では数々の技術革新をもたらしてくれた米国西海岸のシリコンバレーの今に迫ります。

文=ミシェル・クイン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

ナショナル ジオグラフィック日本版の前後の記事

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事