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箱根駅伝ロスの人に読んで欲しい、帝京・中野監督の独特な『自分流』。

2/4(月) 7:01配信

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 帝京大の中野孝行監督は、とてもユニークだ。

 去年の12月、箱根駅伝参加チームの監督がすべて顔をそろえる記者会見で、こんな話をし始める。

 「青山学院大の原監督、今回は『ゴーゴーゴー大作戦』ということですが、私は55歳、出雲、全日本大学駅伝でも5位ということで、帝京大も『ゴーゴーゴー大作戦』」

 こういう話が毎年のように聞けるので、私は密かに楽しみにしている。ところが、メインストリームのメディアには紙面や放送時間の関係なのだろう、この絶妙のトークはなかなか取り上げられない。

 そんなことを思っていたら、中野監督初の著書、『自分流』が出版された。

強化現場の話がストレートに。

 私は帝京大を担当したことがないので、中野監督の人となりをほとんど知らない。だからこそ、この本から多くの発見があった。

 まず、中野監督は国士舘大学を卒業してから雪印乳業で現役生活を送ったあと、指導者になってから二度の廃部を経験しているのには驚いた。

 先般、日清食品グループの活動縮小が発表されたが、いかに陸上界が危うい土台の上に成り立っているかが分かる。

 しかし中野監督はへこたれない。一度目のリストラの後には、新聞の求人広告で特別支援学級の職員募集に目を止め、そこで働き出した経験が書かれており、とても興味深い。「苦労人」という印象を抱いていたのだが、その感覚は間違っていなかった。

 縁あって2005年11月に帝京大の駅伝競走部監督に就任するのだが、本書にはこれまでの箱根駅伝関連本とは毛色の違う、強化現場の話がストレートに書かれている部分があり、大いに参考になる。

 特に私が興味をひかれたのは、次の2つの事柄だ。

 ・高校生を勧誘するリクルーティング(本書内では「スカウト」という言葉が使われている)
・区間配置の発想

「スカウトはうまくいかないのが当たり前」

 まず、高校生の勧誘については、就任当初はかなり苦労をしたようだ。シード権の常連になった今も変わりはないようだ。

 「スカウトが大変だとは思わない。もちろん、楽しいとか面白いとか思うわけでもないのだが。うまくいかないことが当たり前なのかなと考えると、苦労だと思わずに済むし、縁があって帝京大に来てくれた選手は大切にしたいと、そう思うことができる」

 中野監督のリクルーティング戦略は、「ニッチを探す」というもので、重視される5000mの記録に関しては「地域格差」があり、鵜呑みにしない。それよりも、惜しいところで負けていたり、ウォームアップ、ダウンの様子を観察して選手に帝京大を、ある意味でセールスする。

 自分の目を信じ、出会いを必然のものだったとするために、4年間かけて選手を育成する。このスタンスは潔い。

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最終更新:2/4(月) 10:11
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