ここから本文です

値上げに成功した宅配便と、値上げが出来ない飲食店の違い (塚崎公義 大学教授)

2/5(火) 6:31配信

シェアーズカフェ・オンライン

ヤマト運輸は、一昨年秋に値上げをしました。その結果、利益を稼いで従業員の待遇を改善にも成功。宅配便業界のライバルたちも、この動きに追随しました。皆が値上げをしたので各社とも客数の激減に見舞われず、順調に利益を稼いで従業員の待遇を改善できているわけです。

筆者は、こうした動きが遠からず他の業界にも広がると考えていましたが、現在までのところ、なかなか広がっていません。思った以上に値上げの広がりに時間がかかっている理由を考えてみました。

コスト構造の違い、ビジネスの性格の違い、競合他社の違い、といった要因に分けて考えてみましょう。

■宅配便は人件費の比率が高く、飲食店は変動費率が低い
ヤマトホールディングスの2018年3月期の連結決算を見ると、デリバリー事業の営業収益の6割弱は人件費であり、1割強の「委託費」にも実質的な人件費が相当含まれている模様です。一方で、飲食店の人件費は売上高の3割を目安とせよ、と言われています。

したがって、労働力不足による賃金上昇の影響を大きく受けるのは飲食店よりも宅配便であると言えるでしょう。これは、宅配便に比べて飲食店は賃金上昇によるコストプッシュ・インフレが起きにくいということを示唆しています。

今ひとつ、飲食店は客が減ることを大変恐れます。宅配便は客が減って収入が減ったら雇っているドライバーの数を減らしてコストを減らせば良いので、客数の減少をそれほど恐れませんが、飲食店は売り上げに占める変動費の割合が低いので、客が減って売り上げが減ってもコストがあまり減らず、利益が減りやすいのです。ちなみに飲食店の材料費(変動費)は売上の30%が目処だと言われているようです。

そうしたコスト構造の差を考えると、「宅配便が賃金上昇で値上げをしたから、飲食店も真似するはず」と考えるのは、少し気が早いかも知れませんね。もちろん「背に腹は代えられない」と考えた飲食店が遠からず値上げをせざるを得なくなるという大筋の考え方は変わりませんが。

■客を断れないという宅配便の苦しさが値上げを可能に
宅配便と飲食店の大きな違いは、宅配便は客を断れない、ということです。法律的には断れるのかも知れませんが、実際問題としては、客が持ち込んだ荷物や集荷依頼の電話に対し「忙しいから受け付けません」とは言いにくいでしょう。

したがって、労働力不足で荷物が運びきれない時には、値上げするしか選択肢が無いわけです。「来た客は断れないのだから、客に来ないでもらうしかない。値上げをして客が減るなら、有難い」というわけですね。他業種から見れば贅沢な話に聞こえますが(笑)。

1/2ページ

最終更新:2/5(火) 6:31
シェアーズカフェ・オンライン

記事提供社からのご案内(外部サイト)

シェアーズカフェ・オンライン(SCOL)

シェアーズカフェ株式会社

SCOLはマネー・ビジネス・ライフプランの
情報を専門家が発信するメディアです。
現在書き手を募集しています。特に士業や
大学教授、専門家を歓迎します。

こんな記事も読まれています

あなたにおすすめの記事