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「冨安は今、試合が面白くて仕方ないと思うよ」。王道を行く20歳CBと日本のアジアカップ【宮澤ミシェルの独り言】

2/7(木) 10:10配信

フットボールチャンネル

日本代表選出経験も持つ元Jリーガーで、現役引退後は解説者として活躍中の宮澤ミシェル氏の連載企画。第25回は、AFCアジアカップ2019について。準優勝に終わったこの大会で森保ジャパンに足りなかったものとは? 一方、宮澤氏は冨安健洋の活躍を称賛した。(語り手:宮澤ミシェル)

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●「大会を通して日本はあまりいい出来とは言えなかった」

 AFCアジアカップ2019は準優勝に終わった。残念だったね。自分たちのリズムをなかなか作れず、大会を通してもそうだけど、チームとしてあまりいい出来とは言えなかった。昨年はウルグアイなどと戦って、やれた部分も見えた。ただやっぱりアジアの戦い、公式大会ということで違いが出た。

 初戦のトルクメニスタン戦から日本は苦労した。0-1にされても取り返して、勝つべくして勝ったんだけど、例えば中島(翔哉)がいたら、守田(英正)がいたらどうだろうとか、そういうのもあった。でも、代表チームでそれを言ったらお終いだからね。

 その初戦って控え選手は北川(航也)しか入れてないんだよね。一人しか代えなかった。だから僕は、2戦目でガラッとメンバーを代えると思った。初戦はこのメンバーで責任を持って戦え、という森保監督のメッセージかなと。でもオマーン戦もほぼベストメンバーだった。

 サブにいい状態の選手がそんなにいないのか、と。例えばもっと、伊東(純也)をバンバン使ったりという感じではないんだなと。決勝トーナメント進出を決めるまでは代えずに、という選択だったんだろうね。

 3試合目はガラッと代えて逆転勝ち、決勝トーナメント1回戦のサウジアラビア戦(1○0)はメンバーを戻した。僕はサウジアラビア戦であれだけ押されたのが一番ショックだった。割り切って守備を固めたというより、タジタジで行けないという風に映ったんだ。

●「ウズベキスタン戦の先発を使ってもベトナムに勝ったと思う」

 あんなに自陣で回させるんじゃなくて、自分たちでボールを持って時間を進めればいいのに、と。そもそも全然、前でボールを持てない。守りきるのはいいんだけど、どこで守りきるのか。逆襲にも出て行けず全部ボールを失っていた。

 守ればいいと思ったから前に行けないというのもおかしいし、守ればいいと思っていてもカウンターで出て行けたらその方がいいんだから。勝っているから、強いなとは思ったよ。ただ、あの辺から大丈夫かな? と心配になった。

 その次の準々決勝、僕はベトナム戦も選手を入れ替えると思った。あのゲームはちょっとみんな重たかったよ。あのゲームこそ半分くらい代えてもいいんじゃないかと思ったよ。いわゆる主力を熟成させたかったんだと思うけど、それにしても交代選手を使うのはちょっと時間がかかるなと。

 僕は大会前、日本は2チーム分を作ることはできなかったなと考えていた。でも、1.5チーム分はできて、交代選手は誰を使っても大丈夫という状態にはなったと思った。ただ実際にトーナメント戦に行くと、またこのメンツでやるの? と。

 ベトナムは強い、という判断だったんだと思う。やってみたら厳しい戦いで1-0。あのメンバーで臨んで良かったと思うんだろうね。でも僕は、もう一回ウズベキスタン戦の先発を使っても勝ったと思うよ。

 イラン戦は僕も事実上の決勝だと思っていて、そういう相手に3-0で勝ったんだけど、勝ち方を見たらラッキーな試合だ。先制点は相手がセルフジャッジで止まったし。3点目はいいコンビネーションを見せたけど、自分たちのやりたいことは1試合を通じてはできない。まだまだできない。それを作るのに時間がかかった。

●「冨安は不利な状態で競らされても相手と互角以上」

 僕は交代選手に期待していたところがあったんだよね。現状維持のための選手交代なのか、もう一段ギアを上げるためのものなのかとなった時に、今回はなかなかそれができなかった。これはポイントだと思う。例えば乾(貴士)。スペインで出ていないからなのか、本来のプレーを出せなかったように思う。伊東を使うタイミングも遅いし、FWは大迫(勇也)の代わりがいないのは誰が見てもそう思うよね。

 個人で言えば、冨安(健洋)は大会の中でも成長した選手だ。去年の親善試合では何でもアグレッシブに行くという感じだったんだけど、行くところと行かないところ、カバーに回るところを、うまく自分の中で判断できるようになってきた。

 高さがあるし、身体能力もある。イラン戦なんか不利な状態で競らされても相手と互角以上だからね。それは相手も嫌になるよ。日本が一番弱いのはフィジカルだと思っているのに。ノッている(サルダル・)アズムンが何もできないんだからね。高さもダメ、スピードでもダメ。冨安に任せたらアズムンは試合から消えたし、最後はキレていたもんね。

 三浦(弦太)や今回は呼ばれていない植田(直通)と高さのある若手CBが出てきているけど、冨安の場合は後ろにも強いね。身体能力がいいし、アジリティがあるんだよね。大柄なのに、ステップワークも問題ない。大股で歩幅が広いからそこまで速くは見えないんだけど、実際は速い。

●「日本のCBは向こう10年大丈夫だ、と思わせてくれるのが彼かもしれない」

(アビスパ)福岡でもボランチも後ろもやって、海外に行ってからもいい経験を積んで育ってきている。日本のCBは向こう10年大丈夫だ、と思わせてくれるのが彼になるかもしれない。

 あとはリーダーシップとか色々あるけど、その辺も身につけば鬼に金棒だよ。吉田(麻也)と冨安がいたら世界基準でしょう。海外の相手にも何も引けを取らない。冨安は前だけじゃなくて後ろにも意識を持てるようになっているし、今大会は彼にとって大きかったんじゃないかな。

 ベルギーでやって自信や手応えを掴んでいるんだろうね。もっと凄い奴がいるのもわかっているだろうし。ゲームをやる中で色々なことを学べて面白くてしょうがないんじゃないかな。駆け引きの面、ハードに行くところ、カバーとか。僕もそういう時期があったけど、「俺、負けてないぞ」と思いながらやっているんじゃないかな。誰と戦っても勝てるから楽しいだろうね。ワールドカップを何回も経験している先輩が周りにいるのも大きい。

 福岡時代に井原(正巳)監督の指導を受けたのも良かった。守備ってそんなに簡単にはわからないから。数的不利の時にどうするか、一対一の時にどう対応するかとか、そういうのを彼は日本で経験して井原にも習って、ベルギーでもやっている。ある面、王道を行っているよね。冨安は育つべくしてちゃんと育ってきた。何より試合に使われているのも大きいよ。

 あのポテンシャルはヨーロッパのどのリーグでもプレーできる。高さや強さを備えたCBはいっぱいいるから、冨安のどの特徴が目に留まるかだね。最初はドイツの中堅クラブに行くのか、フランスとかもいいだろうし。あとはビルドアップの時にどれくらい(ジェラール・)ピケになれるか、とかね。ピケよりスピードがある気はするけど。あのフィード力なんかももっと出てくれば、どのクラブでも普通にできる。あとは声がかかるのを待つだけ、という状況になっていくんじゃないかな。

▽語り手:宮澤ミシェル
1963年7月14日、千葉県出身。Jリーグ黎明期をプレーヤーとして戦い、94年には日本代表に選出された経験を持つ。現役引退後は解説者の道を歩み、日本が出場した過去5大会のワールドカップを現地で解説している。様々なメディアで活躍。出演番組にはNHK『Jリーグ中継』『Jリーグタイム』、WOWOW『スペインサッカー リーガ・エスパニョーラ』『リーガダイジェスト!』などがある。

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最終更新:2/7(木) 11:34
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