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村本大輔、同調圧力に飲まれぬ生き方 「今の芸人は空気を読みすぎて、もはや空気そのもの」

2/8(金) 17:10配信

朝日新聞デジタル&[アンド]

【湯山玲子の“現代メンズ解析”】

漫才番組『THE MANZAI』(フジテレビ)で原発問題や沖縄米軍基地問題、杉田水脈議員の「生産性」発言などを取り上げ、痛烈な政治批判を展開、賛否両論を巻き起こしたり、『朝まで生テレビ』(テレビ朝日)で「日本国憲法第9条の2項なんて読んでない」と発言して出演者から袋だたきにされたり……。
 
今もっとも“空気を読まない芸人”、ウーマンラッシュアワーの村本大輔さん。その社会問題への積極的な発言と、批判や炎上を恐れぬ生き方に注目が集まっています。

【画像】湯山玲子さんと激論を交わす村本さん

今、村本さんを支える価値観とは。これからどんな生き方を目指すのか。「現代のカッコよさ」を読み解くヒントを探るべく、著述家・湯山玲子さんが、村本さんの本音に迫りました。

誰も触れたがらないテーマで漫才をするワケ

湯山玲子(以下、湯山) よもやこんな存在が、芸人の中から出て来るとは思っていなかった。それが村本さん。実力、ルックス、アタマの回転の速さなど、テレビ・メジャー向きの才能がありながらも、その出世すごろくに乗らず、今や無きものになりつつある「体制に風穴を開ける」というお笑いの本質のひとつに全開で取り組んでいる。2017年に続いて、昨年の『THE MANZAI』でも政治や社会問題に焦点を当てた漫才を披露しましたね。相変わらず大きな話題になっていました。

村本大輔(以下、村本) いろいろな意見をいただきましたし、反響はありました。ただ、今回の漫才がおもしろいと感じてもらえたかどうかわからない。というのも、僕は17年に政治的な漫才をやったことで、“そういうことを言う人間”と認識されてしまった。当然18年も同じことやるだろうと思われていたし、その中で政治的な漫才を披露したことはある種の予定調和。普段、政治的な発言をしているワイドショーのコメンテーターと同じようなものですよ。

湯山 一度レッテルを貼られてしまうと、同じことをやっても衝撃は生まれないわけか。「体制批判」ネタというほかが誰もやらない挑戦的な試みでさえも、観客の「慣れ」にさらされるという厳しさがありますね。そこに、芸人としては考えるところがあるんじゃないの?

村本 いやいや、この1年での気づきやショックを受けたことが山ほどあって、正直言い足りない気持ちのほうが強い。日本は臭いものにふたをする国だから、開けないといけないふたが無限にある。そこに誰も触れないから、ブルーオーシャンですよ。

湯山 ふたの中にあるものは、みんなが「無いこと」にしたい不都合な真実ばかりですよね。それを俎上(そじょう)に上げると、「コイツ、言っちゃったよ~」という体制に盾突く痛快さにつながる笑いにしろ、「しょうがねえな、人間ってものは」という自虐にしろ、今の時代において衝撃的な笑いになった。けど、ふたを外せばいいだけなのに、誰もそれをやる勇気はない、と。

村本 誰かがやらないと。古代ローマには「国民にはパンとサーカスを与えておけばいい」という、当時の世相を揶揄(やゆ)した言葉があります。娯楽と食料を無料で与えれば、国民は政治に無関心な愚民になると。今や芸能界がサーカスです。僕の漫才も、ローラが辺野古埋め立てに反対する署名を呼びかけたことも、皆で考えるべき問題の提示です。それなのにメディアは「ローラが~」という“サーカス”の部分を強調して報道するし、視聴者もそればかりに食いついて、問題の本質的なところはほったらかし。そうじゃない、サーカス団員が示した問題のほうに目を向けろと思う。

湯山 村本くんはいつごろからこういった社会的な問題を考えるようになったの? 学校の先生の影響とか、テレビのドキュメンタリーを見て、というよりもっと具体的な体験があったのではないかと思うのですが。

村本 高校生のとき、ある家の植木を切るバイトをしていました。それを地元の人の集まりで何げなく言ったら、「あの家は在日だから、そんな仕事せんでいい」と言われた。なんだそれは、と。学校で習わないし、勉強してもよくわからない。そういう暗黙のルールのようなものが、この社会の至る所に存在していた。それに対して違和感を覚えたのがきっかけです。

湯山 日本の組織や人間関係、モラルを考える上で、今や定番となった「空気」の問題ですよね。いじめ問題から、女性の管理職登用、日本的社風、ママ友問題など、おしなべて「空気」が絡んでくる。私もテレビに出演するようになって、それまでのどの仕事の現場とも違う独特の雰囲気を自分なりに理解するのは大変だった。この国で生きていく上での最大スキルが「空気読み」ですからね。

村本 芸人もそれに飲まれています。この数年、コメンテーターやいろんなポジションにつきだしたせいか、「これ言っちゃいけない」「あれ言っちゃいけない」って、空気を読みに読みすぎて、もはや空気そのものになってますよ。

バラエティー番組も一緒で、空気を読む団体芸なんですよね。視聴者もテレビは無料だから、なんとなく付けて出演者が笑い合っていれば面白く感じる。その構造が笑いのハードルを下げています。「なんばグランド花月」とか、僕らが主戦場としている劇場に行ってみてください。有名無名問わず数多くの芸人が日夜面白さのみを追求して研ぎ澄ましたネタを披露しています。有料だから観客の目も当然厳しい。ネタとテレビのフリートークは全然違うわけで、テレビで団体芸をやっている芸人がすべりまくってますよ。

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