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07年我那覇和樹を襲った冤罪事件。「言わないと一生後悔する」

2/8(金) 17:36配信

webスポルティーバ

★日本サッカーを救った男の現在地 前編 

 カマタマーレ讃岐が使用する高松市東部運動公園サッカー場には、2月の寒風がすさぶ中でも熱心なサポーターたちが練習を見学するためにやって来る。若い広報のスタッフはそんな顔が見える度、丁寧にあいさつをする。サポーターとチームスタッフとの距離の近さと信頼が垣間見える。彼がこのチームに来たのはまだ半年前である。サッカーの仕事をしたいということで大阪から讃岐にやって来たのだ。選手との初めての顔合わせの際は緊張したが、その中で最も気さくに接してくれたのが、ベテランの我那覇和樹(38歳)だった。

 世代的に言えば、代表戦をテレビで観ていた中学生時代、我那覇にはサウジアラビア戦でゴールを決めた男として強烈な印象が今でもある。その華やかなイメージがあったのだが、スタッフやサポーターへの気遣いをいつも忘れない謙虚な態度に感銘を受けたという。

 2006年、オシムジャパン始動の年。日本代表の先発FWにはこの年、Jリーグで日本人選手最多の18ゴールを上げた我那覇がいた。特筆すべきはそのシュート決定率で、52本のシュートを打っての18点は約35%。これは、当時の得点王だったワシントン(浦和レッズ)、マグノ・アウベス(ガンバ大阪)を抑えてリーグトップだった。日本サッカー界で長く叫ばれてきた決定力不足は我那覇の登場によって解決されるのではないか。若い広報氏が鮮明に記憶している11月に行なわれたアジアカップ最終予選サウジアラビア戦で2ゴールを上げた活躍は、まさにその期待を高めるに十分なものであった。

 しかし、その広報氏にしても翌2007年に我那覇の身に起きたドーピング冤罪事件についてはほとんど詳細を知らないという。すでに12年が経過して風化しようとしているのか。

 ならば、2019年シーズン開幕を控え、すべてのサッカー人に報せておきたい。今、J3の讃岐で「年上の選手が態度で示さなければいけない」と黙々とトレーニングを続け、いつも笑みを絶やさずに周囲に気を配るこの男が何をもたらしてくれたのか。

 それは、最初はまったく馬鹿げたスポーツ紙の誤報から始まった。2007年4月24日サンケイスポーツに「我那覇に秘密兵器 にんにく注射でパワー全開」という記事が載ったのである。この報道を見たJリーグのドーピングコントロール(以下DC)委員会がこれはドーピングだと問題視したのである。

 ところが、実際に我那覇が受けたのは感冒の治療であった。脱水症状にあったために点滴を施されたにすぎなかったのである。Jリーグが事実関係を調査すればすぐにわかることであり、本来であればフェイクニュースを流したこのスポーツ紙の記者を呼んで注意して終わりである。

 そもそも、にんにく注射自体も厳密にはWADA(国際アンチドーピング機構)の規程ではドーピングではなく、JリーグのDCがこしらえたローカルの倫理規定に過ぎなかった。

 ところが、ここからDC委員長の暴走が始まる。Jリーグで行なわれた事情聴取で青木治人DC委員長(当時)は、我那覇側にまったくの反論の機会を認めず、最初から処罰ありきの前提でドーピングと宣告。我那覇に6試合の公式試合の出場停止処分と川崎フロンターレに1000万円の制裁金を課したのである。まったくの冤罪であった。

 青木委員長が後にFIFA(世界サッカー連盟)からのメールで「(たとえ、にんにく注射であっても)この件はドーピングではなく厳重注意処分でいい」という指摘を受けたときに、我那覇の無罪を主張する他のドクターに言った言葉が「いやあ、マスコミが騒いじゃったからさあ」というものであった。にわかには信じがたいほどにその程度の薄っぺらい思考で将来のあるアスリートをドーピングとして罰したのである。

 事実を確認する前にサンケイスポーツの誤報を鵜呑みにして、マスコミに向けてこれはドーピングだと騒いだのはJリーグの側であった。川淵三郎日本サッカー協会会長(当時)は事情聴取の行なわれる前に「我那覇の件はけん責処分とか6試合以下の出場停止処分か、それより重い資格停止(12か月以下)、その程度が常識的なところだろう」とスポーツニッポン紙などに語っている。処分が決められる聴取の前に一方的に私見で量刑にまで言及するとは、選手を守るべき競技団体のトップとしてはあらざる行為である。

 この裁定にJリーグの全クラブのチームドクター31人が処分の撤回に立ち上がった。無実の我那覇に不名誉極まりない一生の罪を負わせてはいけない。そしてこれをドーピングとされれば、正当な医療行為を選手たちは受けられなくなる。事態を重く見たJADA(日本アンチドーピング機構)も「我那覇はドーピングではない」と異例の声明を出した。しかし、一度下した裁定をDC委員長は何度も詭弁を弄して覆そうとしなかった。

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