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児童の描いた絵をコンクールに出したら一等賞で賞品獲得!別のコンクールを知った児童の「今度は何がもらえるかな」に先生は「……」。

2/9(土) 8:30配信

教員養成セミナー

行動の理由が変わる ―アンダーマイニング現象

 先生の悩みの一つに、子どもたちが意欲的に課題に挑戦してくれないことがあります。どうしたら頑張ってもらえるか、すべての子どもたちに効果的なその方策がなかなか見つからないのです。これは「動機づけ」の問題です。


■ 子どもの「やる気」を引き出すには?
 小学校の低学年の頃を思い出してください。漢字の書き取りの宿題をやっていくと、先生がノートに花丸をくれました。その花丸が欲しくて一生懸命に漢字の練習をしたのではないですか。でもだんだんと花丸では満足できなくなります。すると先生は、キャラクターが「がんばったね!」などと言っているスタンプを押してくれました。シールを貼ってくれたこともあるでしょう。今から思うと幼稚なものかもしれませんが、先生はれっきとした外発的動機づけを行っていたのです。

 中学生になると、言葉での賞賛や叱責でも外発的動機づけの効果が表れます。ただ、むやみに褒めれば良いのではありません。皆さんは、褒められた方がやる気が出ますか? それとも叱られた方がやる気が出ますか? 今の時代、多くの人は褒められた方が良いと言いますが、叱られた方が良いと言う人も少なからずいるのです。褒められた方が良い人を叱ると意欲喪失になるでしょうし、叱られた方が良い人を褒めても納得しにくいです。一人ひとりの子どもがどちらのタイプかを見極めることも教師には必要です。

 中学生くらいの年齢になると、その教科が好き、学習内容に興味がある、だから勉強するということも増えてきます。これは「内発的動機づけ」です。自分から勉強に向かってくれるので、先生としては嬉しいことです。しかも子どもにとってそれが得意な領域になれば、周囲に対して自己アピールができ、自尊心の向上にもつながります。まさにマズローによる欲求の階層構造説の4段階目「自尊の欲求」の充足です。


■ 過剰な報酬で「頑張る理由」が変わってしまうことも…
ところが、内発的動機づけによっていた行為が、外発的動機づけによる行為に変わってしまうこともあります。

 例えば、絵を描くのが大好きな子どもがいたとします。周囲が何も言わないのに、図画工作の時間は積極的に作品作りに精を出していました。納得のいく絵ができると、誇らしげに見せてくれます。ある時、先生がその子が描いた絵をコンクールに出してくれました。すると、何と1等賞をもらえました。子どもも先生も喜びました。表彰式があるというので出かけたところ、1等賞と書かれた賞状のみならず、たくさんの賞品をもらいました。想定をはるかに超える賞品に子どもは大喜びでした。ところが、しばらくたってから別のコンクールがあることを知ったその子が発した言葉は、「今度は何がもらえるかな」でした…。つまり、好きで絵を描くのではなく、報酬を目当てに絵を描くようになったのです。「絵を描く」という行為が、内発的動機づけによる行為から外発的動機づけによる行為へ移行したことになります。これを「アンダーマイニング現象」と言います。

 なぜアンダーマイニング現象が生じたのでしょうか。それは過剰な報酬が原因です。適度な報酬は子どものやる気を高めるのですが、それが過剰になるとそこにばかり目が向いてしまい、生来の興味や関心が薄れてしまうのです。

 とはいえ、「がんばったね」「すごいね」などの褒め言葉はいくら掛けてもアンダーマイニング現象を起こしません。望ましい褒め方、叱り方を考えてみてください。

著・監修 古川 聡(国立音楽大学音楽学部教授)
筑波大学大学院心理学研究科博士課程単位所得満期退学。学術博士(筑波大学)。

『月刊教員養成セミナー 2019年3月号』「教育心理入門」より

最終更新:2/12(火) 11:11
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