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『ファースト・マン』は、感動の人間ドラマに轟音と静寂が完璧にバランスした作品だ

2/9(土) 14:11配信

WIRED.jp

映画『ファースト・マン』は稀有な映画だ。広大なモハーヴェ砂漠から月面へと舞台を移すアドヴェンチャー大作であると同時に、深い悲しみを乗り越える過程を思いやりを込めて巧みに描いた映画でもある。

【動画】『ファースト・マン』の予告編

胸を締め付けられるような場面がいくつもある。IMAXフォーマットで撮影された長回しのシーンは、できるだけ大きなスクリーンで見るのが正解だ。

こうして1本の映画にあらゆる要素が共存している例は、さほど珍しくない。だが、すべての要素を含みながら、作品そのものの核心や勢いを決して失っていないという点で、この映画はとてもユニークなのだ。

歴史学者ジェイムズ・R・ハンセンの同名小説を原作とする『ファースト・マン』は、1969年にアポロ11号で世界初の月面着陸に成功した米航空宇宙局(NASA)の宇宙飛行士、ニール・アームストロングの生涯を描いた映画だ。しかし、宇宙に向けてロケットを打ち上げるという、ハラハラドキドキの極限状態だけを強調しているわけではない。レンズが追うのは、常に目の前の仕事に真摯に取り組むアームストロングの、孤独でストイックな国民的英雄としての姿だ。

彼は銀河を駆けるスペースカウボーイのイメージとは、ほど遠い男だった。映画は紙吹雪の舞うパレードや、ヒューストンから声援を送る管制官たちだけではなく、宇宙飛行士に課せられた運命のぞっとするような側面を容赦なく見せつける。

轟音と静寂との完璧なバランス

バランス、つまり1本の線できっぱりと分けられた静けさと大迫力との均衡こそが、デイミアン・チャゼル監督が最も強く訴えたいことなのだとわかってくる。単純なラヴストーリーが、これでもかと挿入される音楽のおかげで壮大なスケール感を与えられた『ラ・ラ・ランド』もそうだった。

監督は、盛大なBGMとともに度肝を抜くようなショットを見せたすぐあとで、インディーズ映画らしい人間味のある場面を生き生きと描く腕前にかけては抜きん出ている。画面に映るのが、ロサンジェルスを見下ろすグリフィスパークで踊るカップルだろうと、ケネディ宇宙センターから打ち上げられるサターンVロケットだろうと同じことだ。

インディーズ系の映画監督たちに、ありとあらゆるジャンルのSF作品の映画化権が与えられるようになってきたが、作品の出来は実にさまざまだ。そんななかで個性派監督としての視線を失うことなく、スペクタクル作品を世に出し続ける彼の能力は、神業としか言いようがない。チャゼルの作品には轟音と静寂が完璧なバランスで同居している。

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最終更新:2/9(土) 14:11
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