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漫画『乙嫁語り』、超美麗描画による19世紀中央アジアの生活・結婚・戦い

2/10(日) 6:02配信

ダイヤモンド・オンライン

 中央アジア=トルキスタンはテュルク語を話すテュルク語諸族が定住し、あるいは遊牧している広大な地域である。テュルクとトルコは語源が同じだ。トルキスタンは中国の西部にまで及ぶが、『乙嫁語り』の舞台に中国は入らず、西トルキスタン地域である。

 オスマン帝国の支配が弱くなった19世紀に入ると、ロシア帝国は黒海沿岸のクリミア半島へ南下し、対岸のオスマン帝国と対峙することになる。やはり中東やバルカンに進出しているイギリス、フランス、サルデーニャ(イタリア)などはオスマン帝国を支援し、ついにロシアと戦火を交えることになった。これがクリミア戦争(1853~56年)である。

 ロシアはクリミア戦争に敗北し、黒海北部やバルカンへの進出はかなわなくなった。そこで黒海より東方の西トルキスタンに進出するようになる。ここでもイギリスとロシアの覇権争いが激化するが、ロシアが先に支配権を確立し、西トルキスタンはロシアの支配下に入る。『乙嫁語り』の時代背景は、おそらくロシアが支配する直前のあたりだろう。

 現実の西トルキスタン(中央アジア)は1991年のソ連崩壊後に各地で独立していった。現在のトルクメニスタン、ウズベキスタン、キルギス、カザフスタン、タジキスタンのことである。

 トルコ、トルクメニスタン、トルキスタンは混同しやすい国名であり、地名だ。地政学や世界史を知るためにも『乙嫁語り』を読んで理解を深めよう。

 なお、西トルキスタンに対して東トルキスタンとは、ときおり混乱した動静が伝えられる中国の新疆ウイグル自治区のことである。ウイグル族はテュルク語族のひとつだ。また、クリミア半島はソ連崩壊後にウクライナに編入されたが、2014年にロシアが一方的に併合し、国際社会がロシアに経済制裁を課している。

 作者の森薫は『乙嫁語り』の前に『エマ』(全10巻、kindle版、KADOKAWA)でデビューしている。『エマ』の時代背景も19世紀のビクトリア朝イギリスで、主人公のエマは貴族のメイドである。ハイソサエティと下層階級の接点を描いたこの作品も実に魅力的だ。折を見て別途紹介することにしたい。

 (ダイヤモンド社論説委員 坪井賢一)

坪井賢一

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