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千葉小4虐待死「最悪の結末」児童相談所はなぜ誤った判断をしたのか

2/11(月) 11:00配信

現代ビジネス

繰り返される児童虐待

 千葉県野田市で小学4年生の栗原心愛(みあ)さんが、今年1月父親からの虐待で死亡したことが報じられた。この事件で、父親ばかりか母親までもが逮捕された。

 そしてこの問題は、国会でも取り上げられただけでなく、一連の虐待事件を受けて、国連子どもの権利委員会からも児童虐待対策の強化が勧告されるまでの事態に至っている。

 小さな子どもが真冬のさなかに冷水を浴びせられ、死亡に至るほどの暴行を受けたという事実だけでも言いようのない怒りと悲しみを覚えるが、毎日のように「新事実」が報道されるたびに、嫌というほど暗澹たる気持ちにされられる。

 たとえば、心愛さんが被害を訴えた「アンケート」を教育委員会が父親に見せたこと、親が虐待の様子を動画で記録していたこと、さらには肺の中から水が検出されたことなど、次から次へと痛ましい事実が明るみに出ている。

 こうした一連の「新事実」のなかで、私がとても気になっているのは、児童相談所の杜撰な対応とその判断の決定的な誤りについてである。

 児童相談所は、当初心愛さんを家族から離して一時保護をしていたが、その後措置は解除され、いったんは親族の元で暮らしていた。そして、昨年2月に父親のいる自宅へと戻されている。

 その際、児童相談所が実施した「リスクアセスメント」では、虐待のリスクが上昇していたにもかかわらず、児相は父親の元に戻す判断をしていたという。

 なぜこのような誤った判断をし、その結果、心愛さんを死に至らしめるという最悪の結末となってしまったのだろうか。

リスクアセスメントとは

 児童相談所の業務において、「リスク」のアセスメントは最も重要な専門判断の1つである。つまり、その親や家庭が子どもに虐待をする危険性(リスク)がどれくらいあるのかという判断をすることは、その後の対応や措置の重要な根拠となる。

 このような判断を下すには、主に2つの方法がある。

 1つは、専門家が養育者や子ども本人などとの面接などを通して得られた情報を基に、専門家としての判断、そして機関における会議の結果によって下される判断である。これを「臨床判断」「コンセンサスに基づく意思決定」などと呼ぶ。

 今回も、児童相談所の職員による会議の結果、父親の元に返すという判断がなされたと報じられている。ただし、会議録は杜撰なものしか残されておらず、児童福祉司の意見書も添付されていないという重大な瑕疵があった。

 一方、リスクアセスメントツールを用いて、統計的なデータに基づいた判断をする方法もある。

 これは、これまでの膨大な研究結果を基にして、虐待に関連のある要因を統計的に導き出し、それをチェックリストのようにした「ツール」を用いるものである。

 そして、当該の家庭や養育者、子どもにそれらが当てはまるかどうかを綿密にチェックしながら、リスクスコアを導き出す。

厚生労働省による「共通リスクアセスメントツール」には、「虐待の状況」「子どもの状況」「世帯の状況」「保護者の状況」「その他」の5つのカテゴリーがあり、たとえば「保護者」のカテゴリーでは「虐待の認識」(認めているかどうか、しつけであると正当化をしていないか)、「困り感・改善意欲」などを判断してチェックされる1
。 いずれも、ほぼ客観的に判断できる項目であるので、一定の訓練を受けてさえいれば、誰が実施しても正確にリスクを判断することができる。

 今回の件でも、類似のリスクアセスメントツールが用いられ、その結果以前よりもリスクスコアが上昇していたことがわかったが、先述のとおりその事実にもかかわらず、児相の会議は父親の元に返すという判断をしたということである。つまり、客観的なリスク指標よりも、「専門家の臨床判断」を優先したことになる。

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最終更新:2/11(月) 11:00
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