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リュック・ベッソン様、映画の舞台にどうですか?─京都府亀岡市から|イシコのセカイ・ニッポン旅行

2/12(火) 17:00配信

クーリエ・ジャポン

世界中を旅してきたイシコ氏だからこそわかるニッポンのよさ! “世界の都市の面影”を求めて訪れた地から今度は映画監督リュック・ベッソンにラブコールを送る──。

リュック・ベッソンさま

このところ映画以外のところで大変そうですが、お元気でしょうか。10年ほど前、僕が出版社に本の原稿を持ち込んでは断られていた頃、ある編集者から言われたことがあります。

「つまらないなぁ。人格や品格なんてどうでもいいんです。おもしろい作品をください!」

人生の中でショックを受けた言葉の一つです。コンビニでウイスキーの小瓶を買い、当時、借りていた倉庫代わりのトランクルームに向かいました。スマホに入っている音楽を大音量で流し、飲みながら棚の整理を始めたのです。掃除をしていると気がまぎれるんですよね。

しばらくすると「落語」(一人で物語を語る日本の伝統的話芸です)が流れ始めました。音楽の中に紛れ込んでいたのです。演目は「死神」。貧乏な男と死神を描いたグリム童話を翻案にした古典落語です。

いつしか棚の下に収納していたトランクを引っ張り出し、その上に座って聴き入っていました。今、目の前に死神でも悪魔でも現れたら魂を売るだろうなぁと思いながら。たとえ性格が悪くなっても面白い作品を書きたいと強く願ったのです。

あの日から変わったような気がします。作品がおもしろくなったかと言われれば自信はありませんが、少なくともゴシップ記事に対する見方は変わったと思います。たとえ人間性に問題があったとしても、おもしろい作品を産み出す人は、それだけで僕にとって尊敬に値する人に映るようになりました。

だから、あなたのゴシップの「真偽」や性格の「善悪」がどうであろうが、『グラン・ブルー』や『アトランティス』の海の描き方、制作や脚本を担当した『TAXI』や『トランスポーター』のカーアクションの取り入れ方など、あなたが手掛ける作品は美しく面白いことには変わりありません。


前置きが長くなりました。今回、京都を歩いている際、あなたなら、どんな作品を描くだろうと強く思った場所があり、居ても立っても居られず、筆ならぬキーボードを叩き始めたのです。

「Kyoto? Je le sais(京都?知ってるよ)」

両手を広げて首をすぼめるかもしれませんね。日本に共同出資の映画会社をお持ちのあなたなら何度も訪れたことがあるでしょう。しかし、今回、紹介したいのは京都市ではなく、西側に位置する亀岡市です。

映画『フィフスエレメント』で地球を救う4つの石が登場しましたが、この街には地球上で、ここでしか獲れない天然の仕上げ高級砥石が採れ……それはともかく、京都駅から山陰本線、通称、嵯峨野線に約20分ほど乗ってください。すると亀岡盆地に入っていきます。特に晩秋から初春の朝は霧に包まれ、幻想的な世界に入り込むことができる可能性が高い。

この盆地は太古、つまり大昔、湖だったと言われています。赤土の色が湖を染め、風が吹くと美しい丹色の波が立ったところから「丹波」という地名がついたという説が生まれてしまう程、あなたの作品に通じる世界観を、この地には感じるのです。

保津橋の上から保津川を眺めていたら、あなたの映画『アンジェラ』を思い出しました。借金の返済を迫られたアンドレがセーヌ川に飛び込もうとして天使と出会うシーンが印象に残っています。

あの映画が公開された頃、僕は手掛けたイベントが失敗続きで莫大な借金を背負っていたこともあり、アンドレに自分を同化させていたんでしょうね。鑑賞後、しばらくの間は大きな川を眺める度に、あのシーンを思い出していました。「天使現れないかなぁ」と願いながら。

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