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市民に報酬を与えて地図をつくる──あるスタートアップの挑戦

2/12(火) 18:11配信

WIRED.jp

マッピング業界では、グーグルが地図情報を集める手段として無償のボランティアなどを活用する一方、貢献した市民にビットコインを与えるスタートアップが現れて波紋を広げている。よい地図をつくるのは人々の善意か、それとも報酬によるモチヴェイションなのか。

求められる市民の力とは?

クリスティアナ・ティンは生粋のニューヨーカー。当然、この街を知り尽くしているつもりだった。でもある日、市内にいったいいくつの急病診療所があるのか知らないことに気づいた。あるアプリからそれらの場所を“探す”よう協力を求められなかったら、いまも知らないままだったかもしれない。

ティンはこう語る。「医療施設を探して投稿すると、ボーナスポイントをもらえるので必死に探し回りました。ほとんどすべてのブロックに診療所があったと思います。このアプリを手にしてから、職場付近にもかかわらず初めて知った建物などもありました」

ティンは2018年秋、地図情報アプリ「MapNYC」のとりこになった761人のニューヨーカーのひとりだ。マッピング(地図作成)業界で立ち上がって間もないストリートクレド(StreetCred)は1カ月にわたり、地図情報となる写真を投稿したアプリユーザーに対し、仮想通貨(暗号通貨、暗号資産)のビットコイン(BTC)をプレゼントするコンテストを主催。総額は約50,000ドル(約549万円)相当の8BTCで、そこからユーザーたちは取り分を競い合った。

それはまさに、マッピング業界における実験である。同社が抱える「マッピングデータを構築し検証するために、一般人の協力を得るにはどうしたらよいか? 」という課題を解決するためのプロジェクトだった。

昨日の地図はもう古い

地図は、一度つくって終わりという代物ではない。つまり、ある人に最寄りのファストフードチェーン「Arby’s」までの行き方を教え、ライドシェアサーヴィス「Lyft」のドライヴァーを客の自宅まで導くには、古い地図や情報の少ないマップは役に立たない。

「わたしはこのコンテストに参加するまで、マッピングなんて当たり前のものと思っていました」とティンは話す。1日に少なくとも2回はGoogleマップを使うにもかかわらずだ。「でも、ニューヨークのように日々変化する街では特に、地図の情報が間違っていたらとても不便ですよね」

一般の人たちにとって、詳細で信頼度の高い地図情報は便利でありがたい。一方で、ビジネスに携わる人にとっては、企業の業績を左右しかねない貴重な情報だ。例えば、サンドイッチショップの経営者は、いちばん近い店舗を探している顧客にいち早く見つけてもらいたいはずだ。

また、マップの表示位置や周辺環境をわかりやすく示すベースマップ(背景地図)を頼りにしている企業(Uber、ウェザー・チャンネル、カーナビを思い浮かべてもらいたい)は、最新の位置データを必要としている。ビジネスの世界では、昨日の地図は、今日はもう役立たないということもおおいにありうるわけだ。カナダのマギル大学で一般参加型のマッピングを研究する地理学者レネ・シーバーは「すべての地理データベースが抱える大きな課題のひとつは、常に最新の情報に更新できるかという点です」と話す。

ストリートクレドは、シーバーが言う地図情報の更新をビジネスチャンスとしてとらえている。「位置データをすでにもっていながら、改善する必要がある企業は多いです。名前は挙げられませんが」。ストリートクレドの最高経営責任者(CEO)ランディ・ミーチはこう語る(ミーチが以前CEOを務めていたMapzenは、2018年1月に操業を停止した。同社はサムスンのインキュベーターから資金提供を受け、オープンソースマッピングを提供していた)。

顧客は、データセットをオンライン上で閲覧したり購入したりできる。しかし、そのデータが更新されないままであれば、地図上の風景はやがて実際の街並みからどんどんかけ離れていくことになる。

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最終更新:2/12(火) 18:11
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