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【月刊『WiLL』(3月号)より】いまはアベノミクスのアクセルを踏み込むとき

2/13(水) 15:28配信

WiLL

参院選勝利へのカード

田中 七月に参院選が控えています。衆参ダブル選挙になるかもしれませんが、結果によっては安倍首相の進退が問われかねない。
岩田 二〇一三年の当選組が改選を迎えます。前回は、出足好調なアベノミクスの勢いそのままに自公が圧勝を収めた。このまま参議院選挙に突入すれば、与党が現有議席から減らすことはほぼ確実で、どれだけ持ちこたえられるかが勝負でしょう。
田中 野党が結集するようなことがあれば、安倍政権は大敗を喫してしまう可能性もあります。
岩田 二〇〇七年、第一次安倍政権は参院選で負けて退陣を余儀なくされた。参院選は本来、政権選択選挙ではないと言われます。ですが、安倍首相は参院選の重要性を誰よりもわかっているはずです。景気次第では、消費増税延期のカードを切る可能性も十分にあり得る。
田中 あとは北方領土問題と拉致問題の進展次第で、外交の成果をアピールできるかどうか。
 ポスト安倍として名前の挙がるメンツがどうしようもないから、安倍政権にはなんとか参院選を乗り切ってほしい。その意味で、消費増税凍結は日本経済にとって、そして安倍政権の存続にとって必要不可欠な決断です。
岩田 アベノミクスが始まって六年。田中先生は、安倍政権の経済政策をどう評価していますか。
田中 大規模な金融緩和を核とするアベノミクスで、日本経済は高速道路を時速八十キロで走り始めた。目的地は、二%のインフレです。
岩田 それまでは、高速道路にすら乗っていなかったということですね。
田中 その通り。ところが、二〇一四年に実施された八%への消費税引き上げは強烈な向かい風を生じさせた。さらに新興国の経済停滞やギリシャ危機で世界経済の逆風が吹き、時速五十キロに減速してしまった。スピードを維持するために、今こそ機動的な金融緩和と財政出動を講じてアクセルを踏み込まなければならない状況です。
岩田 予定通り消費増税に踏み切れば、さらなる逆風が吹きますね。
田中 時速三十キロに減速してしまい、目的地までさらに時間がかかってしまいます。
岩田 そのあたり、『増税亡者を名指しで糺す』(悟空出版)にわかりやすく書かれていますね。
田中 世界経済は、相変わらず不安材料を抱えています。自国の経済を犠牲にしてまで徹底的に中国を追い詰める姿勢を崩さないトランプ政権下で、米中貿易戦争は「米中戦争」になりかねない。日本経済に飛び火する可能性もあるなか、安倍政権に代わる受け皿がない状況こそ、日本が抱える最大のリスクです。
岩田 元日、マティス国防長官が辞任しました。マティスは日本をはじめとする同盟国を尊重することがアメリカの国益に適うと考えていましたが、トランプにはそれが最後まで理解できなかった。長期的戦略なきトランプ政権は「感情」と近視眼的な「勘定」、つまり目先のカネで動いてしまいます。そんななか、トランプ大統領と個人的な信頼関係を築いている安倍首相の存在は大きい。
田中 安倍首相は、危機の時代に求められるリーダーです。リーマンショック、東日本大震災、ギリシャ危機、そして米中貿易戦争……ここ十年、日本経済は試練続きですが、この状況下でも巧みに立ち回ることができる「危機対応型」リーダーは安倍首相のほかにいない。
 九〇年代に相次いだ、一年だけお試しで総理を務めて満足する「平時型」リーダーでは通用しない世界です。ポスト安倍候補の一人でもある岸田文雄さんは「一強からの脱却を」なんて言っていますが、呑気なものです。彼も典型的な「平時型」でしょう。
岩田 「一強多弱」という議論自体、今の選挙制度の本質をとらえていません。派閥が持ち回りで総裁を輩出していた中選挙区制の時代から、総裁が幹事長を抑えて党全体を牛耳る時代になった。小選挙区制の仕組みを熟知しているところに、安倍首相の強さがあるわけです。「自民党の政治家がだらしない」「昔の自民党は云々」という方がいらっしゃいますが、これは政治の仕組みを理解できていない懐古趣味でしかありません。
田中 でも残念ながら、いつか安倍政権にも終わりが来てしまう。ここ数年、ポスト安倍についての議論がなされていますが、いまだに答えは見つからない。強いて言うなら、アベノミクスを継承できる菅官房長官か、少なくとも邪魔はしない麻生副総理に何期かつないでもらって、いずれ安倍首相に再々登板してもらうのがベストでしょう(笑)。
岩田 結局、そうなりますね(笑)。
 本来の政治システムから考えれば、自民党内にのみポスト安倍を求めること自体が問題です。小選挙区制においては、常に野党が現職総理大臣に代わるリーダーを用意して、いつでも政権交代ができるようにしておくべきだからです。しかし現在、野党を眺めてみても総理に相応しいといえる政治家がいません。

《続きは本誌にて》

田中秀臣(経済学者)、岩田温(政治学者)

最終更新:2/13(水) 15:28
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