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根深い米中の経済対立、米中貿易戦争の行方

2/17(日) 12:16配信

Wedge

 昨年12月のブエノスアイレスにおける米中首脳会談で、トランプ大統領と習近平国家主席は、両国間の貿易紛争につき、90日間の期限を設けて交渉することで合意し、現在は「休戦状態」にある。米側は、期限内に妥結できなければ2000億ドル相当の中国製品に対する関税率を10%から25%に引き上げるとしている。その期限が3月1日に切れるのを前に、1月末に中国の劉鶴副首相率いる交渉団が訪米し、閣僚級交渉、トランプ大統領との会談を行い、米中首脳の再会談の可能性が出てきている。ホワイトハウスが劉鶴氏の訪米に関して出した声明は、要旨、次の通り。

 交渉は、以下を含む広範な問題を取り扱った。(1)米企業に対する中国企業への技術移転の圧力、(2)中国における知的財産権の保護と執行の強化の必要性、(3)米国が中国において直面する多くの関税および非関税障壁、(4)中国の米企業に対するサイバー窃取がもたらす悪影響、(5)補助金と国営企業を含む、市場を歪める力が如何に過剰生産をもたらしているか、(6)米国の製造業産品、サービス、農産物の中国への販売を制約している市場障壁および関税を除去する必要性、(7)米中通商関係において通貨が果たす役割。両者は、莫大な額の増大を続ける米国の対中赤字を削減する必要についても議論した。中国による、米国の農産物、畜産物、工業製品の購入が、交渉の枢要な部分を占めている。

 両者は、全ての主要な問題に関与していくこと、相違を解決するための生産的で技術的な議論をしていくことなどにつき、有益な意思を示した。米国は、構造的問題と赤字削減に特に焦点を当てている。

 前進はあったが、やるべきことはまだ多い。トランプ大統領は、ブエノスアイレスで合意した90日の期限は厳格な期限であり、3月1日までに満足できる結果が得られなければ米国は関税を引き上げる旨、繰り返した。米国は、これらの重要な問題を中国とさらに交渉することを楽しみにしている。

出典:‘Statement of the United States Regarding China Talks’(White House, January 31, 2019)

 上記声明からは、米国は、中国による知的財産権の侵害、補助金や国営企業、米国企業への技術移転の強制、中国による関税および非関税障壁、貿易赤字といった点を問題視する、従来の姿勢を維持しているように見える。すなわち、中国に対して構造的な改革と対米貿易黒字の削減を求めていくということである。

 中国側が提示した譲歩は、米国のエネルギーや農産物など12分野での輸入拡大、米国の対中投資受け入れ拡大などにとどまるようである。米国との隔たりは大きい。上記声明も「前進はあったが、やるべきことはまだ多い」と明言している。1月29日付けワシントン・ポスト紙の社説‘Trump sparked a crisis with China. Now he should make the most of it.’は、中国が得意とする買い物攻勢に幻惑されてはならず、協議は中国経済の構造改革に糸口を付けるものでなければならないことを主張している。当然そうあるべきである。

 しかし、中国側は米中首脳会談を提案し、トランプもこれに前向きのようである。中国側は経済が急失速しており、トランプの方は2020年の大統領選挙を控え貿易面で何らかの得点を挙げたいと考えているものと思われる。中国から何らかの具体的譲歩を引き出し、それをトランプの駆け引きの勝利と宣伝し、米中の冷戦の一時的休止がもたらされる可能性は否定できない。

 ただ、仮に首脳会談が開かれ短期的に妥協が成立したとしても、長期的には米中の経済競争が終わることはないであろう。中国との対決は貿易から始まり、今や先端技術における覇権争いをはじめ、全面対決の様相を示している。米中の対決が先端技術にまで及んでいるのは、米国が、中国の挑戦は米国の卓越した地位を脅かしているとの危機感を抱いているからである。例えば、中国は、通信速度が現行の4G携帯電話の100倍となる、次世代の社会基盤となると見込まれる5G技術で、米国に引けを取らない開発をしていると言われる。

 そういうわけで、米国は先端技術における中国の台頭の「封じ込め」にかかっており、中国が先端技術の開発を国策として推進する「中国製造2025」を非難するとともに、中国の先端技術製品の調達を禁止し、同盟国に対しても同様の措置を取るよう要請している。米中の経済対立は、構造的に非常に根深いものである。

岡崎研究所

最終更新:2/17(日) 12:16
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