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正規・非正規の格差是正と「同一労働同一賃金」vol.2

2/20(水) 8:07配信

Meiji.net

正規・非正規の格差是正と「同一労働同一賃金」vol.2

小西 康之(明治大学 法学部 教授)

最近、有期雇用の人たちが、無期雇用の人たちとの労働条件の格差の是正を求める裁判がマスコミなどでも大きく取上げられています。政府も、働き方改革関連法案を重要な政策と位置づけています。

◇不合理性の判断はケースバイケース

「日本郵便事件」は、郵便配達業務にたずさわってきた有期雇用の人が、無期雇用の正社員との間で労働条件に不合理な相違があるとしてその是正を求めた裁判です。

2017年9月、東京地裁は、年末年始勤務手当、住居手当、夏期冬期休暇、病気休暇の相違が不合理であるとした上で、損害賠償請求を一部認めました。

年末年始勤務手当については、多くの国民が休日の年末年始でありながら、職場は最も忙しい時期であるため労働に従事したことに対する対価として支払われるものであることを重視し、無期雇用の人も有期雇用の人も同じような状況にあるにもかかわらず、有期雇用の人にはまったく手当が支払われないことは合理的ではないと判断しています。

また、住居手当については、転勤などがある無期雇用の人もいましたが、有期雇用の人は転勤がないものの、会社には転勤のない新一般職といわれる無期雇用の正社員の区分も設けられていて、その区分の人にも支給されていたことから、転勤のない有期雇用の人に支払われていないのは不合理であると指摘しました。

この点は重要なポイントです。転勤のある無期雇用の人と比較すれば、転勤のない有期雇用の人に住居手当が支給されていないことは、不合理とはいえないと判断される可能性が高くなるとも考えられます。

逆に、原告の訴えがほとんど棄却されたのが、「メトロコマース事件」です。

これは地下鉄駅構内の売店で働く有期雇用の人が「基本給や賞与、手当に正社員と差があるのはおかしい」と訴えた裁判ですが、このときは、広い範囲の正社員の労働条件と比較しました。

そのことが影響してか、2017年3月、東京地裁は、無期雇用の正社員とは仕事内容や責任、異動範囲に大きな違いがあり、労働条件の違いの多くは不合理とはいえないという判断を下しました。

また、「日本郵便事件」でも、外務業務手当、早出勤務等手当、祝日給、夏期年末手当、夜間特別勤務手当、郵便外務・内務業務精通手当については、労働条件の相違の不合理性は否定されています。

さらに、不合理性が認められた年末年始勤務手当については8割、住居手当については6割について損害賠償請求が認められています。

つまり、全く支給されていないのは不合理だが、100%支給しなければ不合理性は解消されない判断しているわけではありません。

こうした裁判例を見ると、何をもって不合理といえるかを予見するのは、本当に難しいといえます。

※この記事の後、2018年2月、同じく日本郵便の有期雇用の社員が大阪地裁に訴えた裁判では、年末年始勤務手当、住居手当、扶養手当について、無期雇用の正社員と同額の支払いを命じる判決が出ています。

※取材日:2017年12月

次回:「同一労働同一賃金」は誤解を招きかねない(2月21日8時公開予定)

小西 康之(明治大学 法学部 教授)

最終更新:2/20(水) 8:07
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