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悪ふざけバイトへの法的措置は妥当な策なのか

2/20(水) 16:00配信

東洋経済オンライン

■企業は、どこまで従業員に損害請求できるのか

 それでは民事手続きはどうなるだろうか。今回の従業員の行為は、不法行為が成立し、損害を受けた企業は、従業員に損害賠償を請求することができる(民法709条)。問題となるのは、どの範囲の損害まで認めるかである。

 例えば、くら寿司のケースで言えば、2月5日時点では5650円だった株価が、2月12日の終値では5220円まで下落し、時価総額にすると約90億円が失われたことになる(その後回復し、15日では5450円)。

 企業は、こうした企業価値の損失分まで、当該従業員に請求することが可能なのだろうか。これは、行為と損害の間に因果関係が認められるかどうかの問題となる。

 不法行為に基づく損害賠償の範囲は、債務不履行の条文を類推適用することとなっており、行為によって「通常生ずべき損害」については損害賠償の対象となるものの(民法416条1項)、「特別の事情によって生じた損害」については、当事者がその事情を予見し、または予見することができたときは損害賠償の対象となる(同条2項)。

 これは、不法行為を行ったとしても、「風が吹けば桶屋が儲かる」といった部分まで因果関係を認め、その行為から通常は生じないようなものまで責任を負わせてしまうと、あまりに過酷な状況となりかねず、結果的に人々の行動を過度に萎縮させかねないことから、法律がバランスをとっているためである。こうした、原因と結果のうち、ある程度は行為者に帰責させることが相当であるとされるものだけを責任の範囲とする考え方を、法律学の世界では「相当因果関係」と呼ぶ。

 なお、この特別損害については、2017年12月20日に改正されており、「当事者がその事情を予見すべきであったときは」というように文言が変わっている。改正法は2020年4月1日に施行される。

 当該従業員が、このような不適切動画を撮影・投稿する時点で、株価の下落まで予見することができたかどうか、争いのあるところではあるものの、まったく予見することができないとまでは言えないだろう。過去にはこうした従業員の不適切動画によって企業が倒産に追い込まれた事案もあり、その際は1385万円の請求額を求めた訴訟が提起されている(その後、合計約200万円で和解が成立している)。

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