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妊産婦に薬の選択肢広がる 免疫抑制剤3種が使用可

2/24(日) 7:47配信

NIKKEI STYLE

妊婦や授乳中の女性が病気になっても安心して薬で治療できる環境が広がりつつある。これまで妊婦が飲んではいけない「禁忌」とされてきた3種類の免疫抑制剤が、一定の安全性を確認できたとして、医師の判断があれば使えるようになった。精神疾患を抱える妊産婦が飲める薬を処方する医師も増えてきている。「妊産婦は薬はダメなのでは」と思いがちだが、使用できる薬は意外とあるので、まずは医師と相談して自分に合った治療法を探そう。
「ずっと不安だったけれど、薬を安心して飲み続けられ、無事に子供を産めて本当に良かった」。川崎市在住のAさん(31)は2018年12月に生まれた男児を抱きあやしながら、穏やかな表情を浮かべた。
Aさんには体を守る免疫が過剰に働いて起こる自己免疫疾患「全身性エリテマトーデス(SLE)」の持病がある。治療薬「タクロリムス」を服用しながら妊娠、出産した。産後も薬を飲みながら母乳で子供を育てている。
26歳のときに発症。嘔吐(おうと)や下痢、食欲不振などで日常生活を送ることも難しくなった。当初はステロイド剤を内服したが、医師の勧めでタクロリムスを毎日欠かさず飲むようになり症状は安定した。

■子への影響配慮

結婚し妊娠を考え始めると、タクロリムスを飲み続けるかどうか迷った。薬の添付文書では、投与を禁止する対象に「妊婦又は妊娠している可能性のある婦人」とされていた。体調の良さは薬のおかげと感じながらも「赤ちゃんに影響があるなら薬を減らすか、やめなければ」と悩んだ。
たどり着いたのが、「妊娠と薬情報センター」(東京)だった。Aさんが村島温子センター長に相談すると、タクロリムスの胎児への影響は小さいとの検証結果を知らされ、「胎児への影響より母体の安定を優先して薬を飲む方が大切」との言葉を受けた。
さらに安心材料が続いた。厚生労働省は18年6月、タクロリムスと「アザチオプリン」「シクロスポリン」という3種の免疫抑制剤について、それまで禁忌としていた妊婦への投与を認めることを決めた。
通常、妊娠や授乳中の女性に薬が使えるかどうかは臨床試験(治験)のデータが乏しく確認が難しい。そのため製薬会社は多くの薬を禁忌としており、持病がある女性が出産をあきらめるなどのケースもある。
タクロリムスなどは使用実績に基づき一定の安全性が確認されたが、解禁の判断には妊娠と薬情報センターの研究が反映された。同センターは国が2005年に国立成育医療研究センター内に設置し、妊娠中に薬を使うことの女性の不安解消に役立つ情報の収集や、発信に取り組んでいる。
国内外の論文や薬の使用結果の情報を集めて安全性を確認し、全国の拠点病院を通じて寄せられる年間約1千件の相談のデータベース化も手がける。今回の3剤の解禁に貢献したのはセンター設置以来、初めてだった。
村島センター長は「医師が妊産婦への投薬のリスクにとらわれ、添付文書に縛られている」と指摘する。「母子へのメリットが危険性を上回る場合は、安全を担保したうえで薬を使ってほしい。妊娠や出産をあきらめる女性を減らしたい」

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最終更新:2/24(日) 12:15
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