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松本山雅はJ1残留を果たせるか?「J2降格候補筆頭」を覆せ。開幕戦で見えた3つのカギ

2/26(火) 10:12配信

フットボールチャンネル

 4年ぶりJ1復帰を果たした松本山雅FCは23日、開幕戦でジュビロ磐田と対戦して1-1の引き分け。敵地で勝ち点1を手に入れた。開幕前の下馬評では「J2降格候補筆」と位置付けられており、開幕戦の結果は決して悪いものではない。それでもJ1の難しさを感じる場面もあった。熟練記者が見たJ1残留への改善すべきポイントとは?(取材・文:元川悦子)

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●「地味な補強」が低評価につながったか

 2019年J1開幕前に最も下馬評の低いチームと位置付けられたのが松本山雅だった。大方の順位予想は最下位か17位。戦力判定もA~E5段階のE評価をされるなど、「J2降格候補筆頭」という見方が大勢を占めた。

 それは今季開幕前の戦力補強によるところが大だったのではないか。今季に向けて山雅が獲得した新戦力は、ジェフ千葉と徳島ヴォルティスでそれぞれエースナンバー10をつけていた町田也真人と杉本太郎、湘南ベルマーレで杉岡大暉の控えに甘んじた高橋諒、J1プレー経験のない服部康平(前栃木)など、J1で目立った実績のない選手が多かったからだ。

 柏レイソル時代にレギュラーを張っていたエドゥアルド(前川崎)や大型ブラジル人助っ人FWレアンドロ・ペレイラは期待値が高かったものの、一般的には地味なイメージが強かったのかもしれない。

 しかし、就任8年目の知将・反町康治監督が自らこの補強に関わったのは事実。「隠れた逸材」と位置付け、チームに加えた新戦力を指揮官がどう使いながら勝てる集団を作り上げていくのか。そこは大いに注目される点だった。2月9日の大宮アルディージャとのテストマッチではいいところなしに終わり、不安要素が大きかっただけに、前評判の低さを覆すことが、23日の開幕・ジュビロ磐田戦での至上命題だと目された。

 実際に磐田戦と今季初戦を戦った山雅の印象は決して悪くなかった。レアンドロ・ペレイラの負傷欠場によって1トップに起用された永井龍、2シャドウの前田大然とセルジーニョの凄まじいハイプレスは相手の攻撃を寸断するだけの十分な迫力があった。

●定位置を失った昨季の主力。チームの一体感を高められるか

 今節J1スプリント回数トップの45回を数えた韋駄天・前田の守備には、名手・中村俊輔も面食らったのか、ボールを失う場面が目についた。その勢いで開始8分には岩上祐三の直接FKが決まって先制に成功。J2の山雅であれば、虎の子の1点を守り切って勝てるはずだった。

 しかしながら、後半に入って磐田が川又堅碁を投入してからは徐々にリズムを持っていかれた。後半26分の同点弾のシーンも山田大記の左クロスと川又の打点の高いヘッドに山雅守備陣の対応が遅れてしまった。

 名波浩監督は「川又の特長と山田のクロスの精度の高さが結びついたゴール」と語ったが、そのクオリティこそJ1基準。これから上位陣と対戦すれば、個の力で決めきれるジョー(名古屋)やレアンドロ・ダミアン(川崎)のようなタレントがゾロゾロいるだけに、守備組織の強化は必要不可欠なテーマだろう。

 山雅が2018年にJ2制覇を果たせたのも、34というリーグ最少失点を記録したから。その水準をJ1で維持するのは難しいだろうが、昨年最終節で残留を決めたサガン鳥栖の29得点34失点という例もある。貪欲にこのレベルを目指していくことが、堅守をウリにする山雅のターゲットとなる。

 そのためにも、前線からのハードワークができる人材を増やし、守備陣も新戦力のエドゥアルドや服部を含めて連係を強化していく必要がある。反町監督はキャンプから開幕までほぼメンバーを固めてチーム作りをしてきたという。コンビネーションを熟成させていく狙いがあったのだろうが、精度をさらに高めてほしい。

 ただ、限られた主力だけでは戦えないのがJ1というリーグでもある。もちろんケガで離脱中のレアンドロ・ペレイラや杉本太郎や他の新戦力を組み込んでいくことも大事だが、昨季までチームの軸を担っていた村山智彦、飯田真輝や今井智基、田中隼磨、高崎寛之といった経験豊富な面々を有効活用していくことも、先々の試合を乗り越えていくうえで重要なのではないか。

「僕らは山雅をJ1に上げたという強い自負がある。それを今出てる選手がきちんと理解して戦わないといけない。僕らピッチに立てていない選手は悔しいし、ポジションを取り返したいという強い気持ちがある」と田中隼磨は山雅をここまで引き上げてきた人間たちの思いを代弁する。そこを指揮官がうまくコントロールしなければ、チームの一体感が損なわれる恐れも否定できない。

●勝ち点1を生かすも殺すも自分たち次第

「試合に出ている選手と出ていない選手のモチベーションが違ってくると、チームとしてバラバラになってしまう。今年はルヴァンカップもあるけど、ルヴァンはおろか、残留もできないという最悪の結果になることもあり得る。それだけは気を付けなければいけない」と1年でJ2降格を経験した時の守護神である村山も語気を強めていた。

 彼らのような開幕戦に出られなかったメンバーも含めて選手層を向上していくことが、苦境を乗り越えるための絶対条件だ。

 J1残留へのもう1つのポイントは、ズバリ、得点力アップだろう。磐田戦では岩上の直接FKから1点を奪ったものの、流れの中からの得点は取れなかった。

 前田が快足を生かしてゴール前に詰め寄ったり、永井が自ら奪ったボールを持ち込む決定機があったものの、「あれだけ前から守備してると攻撃に行くところで失速してしまう。ボール取ったら自分のところにパッとボールが来るんできついなと思う」と永井が苦笑いしたように、FW陣へのフィジカル的負担が大きいのも、流れの中からのゴールが生まれにくい要因と言っていい。

 それでも得点数を伸ばしていかなければ、残留は叶わない。2015年J1でも山雅は年間通算30点しか取れず、年間16位にとどまった。昨季J2でもシーズン通算54点というのはやはり少なかった。この数字をいかにして改善していくのか。

 決め手を持つレアンドロ・ペレイラの復帰が待たれるところだが、欲を言えば、彼と永井、前田、セルジーニョで合計30点くらいまで持っていってほしい。残留には年間35点以上、安全圏に達したければ40点を目指す必要があることを肝に銘じるべきだ。同時に、武器であるリスタートを研ぎ澄ませることにも取り組んでもらいたい。

 J1での実績の少ないプロヴィンチャのチームの残留はハードルが高いものの、クラブは3シーズンJ1に残って土台を固めたいと考えている。その大目標に向けて、山雅の戦いはここからが本番だ。磐田から手にした勝ち点1を生かすも殺すも自分たち次第。初戦ドローという結果に満足することだけは許されない。

(取材・文:元川悦子)

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最終更新:2/27(水) 17:51
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