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良くないと分かっているが......という人に「ハームリダクション的」な商品を

2/26(火) 11:24配信

ニューズウィーク日本版

<デカフェのコーヒーや、低カロリーのスイーツ。これらが人気を博す背景には「ハームリダクション」あるいは「ギルトフリー」と呼ばれる考え方がある>

「サードウェーブ(第三の波)」とされる近年のコーヒーブーム。スペシャルティコーヒーなる希少な豆の存在や、浅煎りで豆本来の特徴を際立たせた焙煎方法など、ブームを牽引する要因はいくつかあるが、そのひとつが、カフェインを含まないコーヒー「デカフェ」の人気である。

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デカフェといえば、以前は妊婦などカフェインを摂取できない一部の人だけが飲んでいたものだった。しかし、昨今のブームでデカフェコーヒー豆の輸入量は激増。全日本コーヒー協会によれば、2000年は約59万キロだったのに対し2017年は約302万キロと、実に5倍以上に増えている。

巷のカフェや喫茶店のメニューで見かけるようになったのはもちろんのこと、スーパーでもデカフェやカフェインレスと表記されたインスタントコーヒーを目にすることが多くなった。なぜ、ここまでデカフェが人気なのか。

その背景には、どうやら「ハームリダクション」という概念の広がりも関係しているようだ。

ハームリダクションとは、主に薬物やアルコールなどの健康被害をもたらす行動習慣をただちにやめられない場合、その代替となる製品や施策を用いることで、可能な限り健康被害を低減しようという試み・プログラムのこと。

実例としては、薬物依存症患者に衛生的な注射器を配ったり、違法ドラッグの代わりに麻薬を処方したり。依存対象がアルコールの場合は節酒プログラムを提供するなどで、ヨーロッパがその発祥となる。

しかし、最近になってその対象はドラッグやアルコールのみならず、各方面へ波及している。冒頭で紹介したように、「カフェインを摂ることができない(摂りたくない)けれどコーヒーは楽しみたい」というニーズを取り込んだデカフェなど、食品業界において特に顕著なようだ。

「食べたいけれど、カロリーは摂りたくない」に応える

考えてみれば、食品こそ誰もが「食べたいけれど、カロリーは摂りたくない」という、矛盾と葛藤に満ちたジャンルだ。デカフェ以外にも、とんこつラーメンに対するはるさめヌードルのような、「ハームリダクション的」な代替商品が人気であることもうなずける。

そんな食品業界において今、ハームリダクションと重なり合う言葉が注目を集めている。「ギルトフリー」だ。「ギルト:罪」で「フリー:ない」、つまり「罪悪感のない」を意味し、カロリーや糖質を抑えた、食べても罪悪感を抱かないスイーツや料理が人気を博しているのだ。

「完全に断つことができないから、デメリットの少ない代替品で欲求を満たすという意味では、ハームリダクションの概念に似ていますよね」とは、代表的なギルトフリー・スイーツの1つ、オーストラリア発祥の「ブリスボール」を、オリジナルレシピで開発・販売するフードジュエリー(東京・豊島区)の創業者兼CEOである坪井玲奈さんだ。

「私を含め、多くの女性がスイーツを食べることに罪悪感を抱いています。でも、それって身体的、精神的にも健康じゃない。ならば、罪悪感を抱かないスイーツを作れないかといろいろ調べていた過程でブリスボールと出合い、すぐに本場のオーストラリアへと飛んだのです」

ブリスボールとは、ドライフルーツとナッツから作られ、砂糖、グルテン、添加物を一切含まないスイーツ。ヨガ愛好家などの補食として広まり、現地では健康食品的な存在であった。「でも、日本人にはサイズが大きいし、なによりパサついた食感が想像とは違っていた。私が食べたかった、よりスイーツっぽいブリスボールを作ろうと、帰国後にゼロから開発を始めました」

数カ月間の開発期間を経て完成させた坪井さんのブリスボールは、1個12グラムと日本人女性に合ったひと口サイズ。砂糖、グルテン、添加物に加え、はちみつなどの甘味料も使わず、100%自然の素材のみで作られながらも、しっかりした甘みとしっとりした食感を持つ。カロリーはわずか50キロカロリー以内だ。

坪井さんがフードジュエリーを立ち上げ、ブリスボールのオンライン販売を始めたのが2016年のこと(現在は渋谷ヒカリエでの店舗販売も)。この頃から、日本の食品業界でもギルトフリーという言葉が多く用いられるようになった。

「なかでも驚いたのが、日清食品さんの『カップヌードルナイス』です。こってり濃厚なのに、脂質や糖質を大幅にカットし、低カロリーという商品で、そのキャッチフレーズが『罪悪感ないス!』。これ、まさにギルトフリーだって(笑)」と、坪井さんは言う。

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最終更新:2/26(火) 12:43
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